一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

沢木耕太郎『檀』

2020-10-28 13:15:44 | 読書

       もう一つ 例をあげよう。 
       沢木耕太郎に『檀』(だん)という著書がある。

       いわずと知れた『火宅の人』で有名な檀一雄の
       ことで、こう始まる。

       「夫の13回忌も過ぎた頃、妻である私のもとを
        訪ねる人がいた」

       つまり、
       一雄の妻・ヨソ子さんの視点で書かれた小説なのである。
       (ヨソ子さんは 女優・檀ふみさんのお母さん)

       これを書くにあたって、
       沢木は一年間、檀家に通い續けて、 
       ヨソ子さんの信頼を得て、
       (浮気された妻の)心情を語ったものである。

       それによると、
       ヨソ子さんは 取材を受けてから はじめて
       『火宅の人』を読み、
       「それは違います。(あなたは)そんなことを
        思っていたのですか」
       と、亡き夫に向かって叫んだという。

       暗くてじめじめした内容かと思いきや、
       カラッとして 爽快感すら感じる作品である。

       現在、福岡県柳川には 檀家の菩提寺とお墓があり、
       取材の際、現地の人に案内されて お参りしてきました。

       廃寺と思われるような お寺さんで、
       古いお墓が多いなか、
       檀家のそれは いちばん立派。
       「檀 一雄 と ヨソ子」の名前が
       並んで記されていました。
       
       
       
        

最新の画像もっと見る

コメントを投稿