
「大阪・関西万博で、海外パビリオンの建設を請け負った業者に、発注元から工事費用の一部が支払われていない事例が相次いでいる。万博協会や大阪府は「民間同士の契約」として関与に及び腰。業者からは悲鳴が上がり「被害者の会」をつくる動きまで表面化した」(10日付京都新聞=共同)
記事によると、「欧州のある国のパビリオン建設を請け負った関西地方の業者」は、もともと中堅ゼネコンが辞退したため依頼された工事だったとし、「大手がリスクを回避し、中堅がさじを投げた工事が中小に回ってきた」と嘆いています。
「別の欧州海外館の1次下請け業者」も、「だまされた気分だ」と訴えています。
アンゴラ館を巡っては、4次下請け業者の男性が5月30日に府庁で記者会見し、4千万円超が未払いだとして、協力会社と「被害者の会」を設立したと明らかにしました。開幕に間に合わせるため昼夜問わず働いたといい、男性は「民間同士の問題だと突き放されると胸が痛い」と涙ぐみ、府や万博協会に救済を求めました。
建設費の未払いに関する報道はその後も続いています。
「ヨーロッパ・マルタのパビリオン工事に携わった関西の建設会社が13日、大阪市内で会見し、工事代金が未払いのままになっているとして、工事を発注した業者に約1億2千万円の支払いを求めて5日付で東京地裁に提訴したことを明らかにした。
社長は会見で「私たち以外にも本当にこの未払い問題で苦しんでいる会社はたくさんある」と主張。「民間同士の問題として片付けるのではなく、今後の対策を考えていただきたい」と述べ、万博協会などに紛争解決に向けた積極的な関与を求めた。
また、会見には中国館の工事に携わったという神戸市の電気設備会社の社長も同席。業者間で代金のやり取りが滞っており、受け取れていないと説明。「国家プロジェクトの工事をまさか未払いをするような会社が受注できないだろうと思っていた」と話した。
万博をめぐっては、工事代金の未払いを訴える声が複数の業者から上がっており、5月に「被害者の会」が発足。会の代表を務める別の建設会社の男性は会見で「国家プロジェクトと信じてやってきたが何の支援策もなくずっと放置された状態だ」と語った」(13日付朝日新聞デジタル<抜粋>、写真はマルタパビリオン)
こうした報道から浮かび上がってくるのは、大阪府、万博協会さらにその後ろにいる自民党政権が、何としても予定通り万博を開会するため、遅れていた海外パビリオンの建設を急がせ、そのしわ寄せが中小の下請け業者に及び、「被害者の会」をつくらなければならないほど苦しめられているという、万博の隠された実態です。
にもかかわらず、大阪府、万博協会、政府は「民間同士の契約」だといって突き放している。二重の加害責任と言わねばなりません。
多くの反対を押し切り、予算を大幅に超過しながら、「国策」として強行された大阪・関西万博。未払いに苦しんでいる下請け業者はまさにその「国策」の犠牲者です。
万博に興味がある人もない人も、万博に行った人はとくに、表面上華やかな「国策行事」の裏で、その犠牲になって苦しんでいる人びとがいることから目を逸らすことはできません。