

「米騒動」が続いています。「米不足」を招いた歴代自民党政権の責任を棚上げし、米の販売価格だけに事実上焦点が当てられている現代の「米騒動」。そんな現状の問題点を指摘する2つの論稿が注目されました。
1つは、「令和の米騒動」と題した弁護士・尾藤廣喜氏(京都市)のコラム(16日付京都新聞「暖流」、以下抜粋)。
<小泉進次郎大臣は備蓄米を随意契約で売り渡すことを言明し、(それが)「価格破壊」の特効薬であるかのごとく報道されている。しかし、このような方法には、根本的な疑問がある。
随意契約という方法だ。売買契約等を国が行う際には、公正性を図るために、会計法29条の3によって、一定の要件に当たる場合以外は、競争入札によらなければならないとされている。今回の随意契約が、この例外要件に該当するかどうかに疑問がある。現に、今回の随意契約は、全ての小売業者に平等に機会が与えられたものではなく、しかも、一部のネット販売業者に予め協力を求め、販売後には、一部量販店やコンビニを視察するなど、特定の販売店の宣伝に等しい行動すらとっている。
元々、今回の騒動は、政府の実質的減反政策に大きな原因がある。政府は、農家が安心してコメ作りに励めるように農業の所得補償を行い、増産政策への転換を図るべきである。>
もう1つは、「政治家の本質を見抜く―「親しみやすさ」のわな」と題したフォトジャーナリスト・安田菜津紀氏の定期コラム「心のお陽さま」(16日付沖縄タイムス、以下抜粋)です。
<大相撲で優勝した横綱に「感動した」と総理大臣杯を渡す小泉純一郎首相の姿は当時、繰り返しテレビに映し出された。自身の写真集まで出した。政治家の「固いイメージ」を一新するような「親しみやすさ」を、中学生だった私は、無邪気にうのみにした。
(しかし)小泉政権は米国のイラク侵攻を支持し、自衛隊派遣もしたが、詳細な検証はなされていない。
今、世襲議員である進次郎氏は農水大臣だ。当時と酷似した構造が浮かび上がって見える。進次郎氏の姿は連日メディアの注目を集め、パフォーマンスが繰り返し報じられた。
「米のために奔走している」姿が連日報じられているが、彼がかつて、生活保護費削減を打ち出した自民党のプロジェクトチームのメンバーだったことはあまり知られていない。実際に12年末の衆院選で、自民党は保護費の1割削減を公約に掲げ、大幅な保護基準引き下げが行われていった。
米価以前の問題として、そもそも健康で文化的な最低限度の生活の基盤を壊したのは誰だったのか。「親しみやすさ」のわなにはまり、本質を見間違えてはならない。>
「随意契約」の問題性を捨象して小泉農水相のパフォーマンスに率先して手を貸し、虚飾の「親しみやすさ」を振りまいているメディアの責任は大きい。
そうした報道を繰り返しておいて、世論調査で「小泉農水相のコメ問題への取り組みを評価しますか。評価しませんか」と質問する(16日付朝日新聞。「評価する」が68%)。まさに小泉・自民党の思惑通りです。
目先の損得(販売米価)に惑わされることなく、「政治家」、政党の「本質を見抜く」英知が、市民に求められています。