


戦況の一進一退が繰り返し流されている日本(西側陣営)のウクライナ報道で、真相が究明されないままになっている問題が少なくとも5件あります。停戦・和平の動きをつくるためにも、ウヤムヤにすることはできません。
①クリミア橋の爆破は「ウクライナ政府の関与」ではないのか?
8日に起こったクリミア橋の爆発(写真左)。「複数のウクライナ・メディアは、ウクライナの治安機関が工作を仕掛け、爆発させたと伝えている」(8日付朝日新聞デジタル)、米紙ニューヨーク・タイムズもウクライナ政府高官の話として「ウクライナ情報機関が橋を走っていたトラックに積まれた爆弾を使って計画」と報じました(9日のNHKニュース)。
しかし、ウクライナ政府はいまだに正式に認めていません。今後の情勢に大きな影響を及ぼす事件であり、真相の確定が必要です。
②天然ガスパイプラインの破壊は「アメリカのテロ」か?
ロシアと欧州をつなぐ天然ガスの海底パイプライン「ノルドストリーム」が欧州北部のバルト海でガス漏れを起こした問題(写真中)。
ロシアはアメリカによる「国際テロ」だと批判。バイデン大統領は9月30日、「意図的な破壊工作だ」と逆にロシアを非難し、NATO諸国もそれに同調しています。
30日、ロシアの要請で国連安保理の緊急会合が開かれましたが、その後の調査状況は伝えられていません。
③ウクライナの穀物はどこに輸出されているのか?
食糧難に苦しむ途上国への穀物輸出の再開が、国連とトルコの仲介で合意されました(再開第1弾は8月1日)。しかし、プーチン氏は再三、途上国へは3~5%くらいしか送られておらず、大半は欧州へ横流しされていると批判。仲介したトルコもロシアの指摘を認めました。しかし、ゼレンスキー大統領は事実無根だとしています。
この真相も不明です。食糧事情を含め、ウクライナ戦争が途上国にどのような影響を及ぼしているか報道される必要があります。
④「ロシア思想家娘の暗殺」は「ウクライナ政府の関与」か?
ロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘でジャーナリストのダリヤ氏がモスクワ郊外で爆殺された事件(8月20日)。
ニューヨーク・タイムズは今月5日、「ウクライナ政府関係者が関与していたと米情報機関が判断した」と報じました。事件直後ウクライナ政府は関与を否定しましたが、この報道についてはコメントしていません。
⑤ウクライナによる「人間の盾」の真相は?
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは8月4日に公表した報告書で、ウクライナ軍が、国際法に違反する形で学校や病院を含む民間人居住地域に軍事拠点を構築し、市民の命を危険にさらしていると批判しました。「人間の盾」です。
国連人権高等弁務官も7月に公表した「報告書」(写真右)で、ウクライナ軍が「国際人道法を守らなかった可能性がある」と指摘しました。
こうした相次ぐ指摘にもかかわらず、ウクライナの「人間の盾」による人道法・国際法違反は報道されていません。
ウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」がノーベル平和賞を受賞しましたが、同団体はウクライナ軍・政府による「人間の盾」について調査したのでしょうか。調査したのなら、その結果を公表すべきです。調査していないとすれば、それはけっして公正な態度とはいえないでしょう。
繰り返しますが、最も重要かつ必要なことは、1日も早く戦闘を止めることです。軍事侵攻や戦争犯罪の追及、「領土問題」は停戦後の国際的な外交で議論されるべきです。
そのためには、ウクライナで起こっている事態を公平・公正に分析、評価する必要があります。ロシアを悪魔視して一方的に非難することは、アメリカはじめNATOの軍事支援を煽り戦争を泥沼化させるだけで、停戦・和平に逆行します。