


参政党は5月に「憲法を一から創り直す」として、「新日本憲法構想案」(改憲草案)を発表しました(写真右、同党HP)。綱領の第1の柱で「天皇を中心に一つにまとまる国」を掲げている同党の改憲草案は、その皇国史観の露骨な具体化です。世論調査で同党の支持率は急伸しており、荒唐無稽な改憲案と見過ごすことはできません。
参政党の改憲草案の特徴的な条項を抜粋します(旧字体は草案のまま)。
<前文>
天皇は、いにしえより国をしらす(同党によれば「日本を治める意味の古語」)こと悠久であり…国民もまた天皇を敬慕し、国全体が家族のように助け合って暮らす。…これが今も続く日本の國體である。
<第一章 天皇>
天皇は…神聖な存在として侵してはならない。(第1条)
皇位は、三種の神器をもって、男系男子の皇嗣が継承する。(第2条)
天皇は、詔勅を発する。(第3条)
天皇は、元首として国を代表(する)。(同)
<第二章 国家>
暦および元号は、天皇がこれを定める。(第4条)
公文書では必ず元号及び国語を用いなければならない。(同)
国民は、日本をまもる義務を負う。(第5条)
<第三章 国民の生活>
教育勅語など歴代の詔勅は、教育において尊重しなければならない。(第9条)
<第四章 国まもり>
報道機関は、偏ることなく、国の政策につき、公正に報道する義務を負う。(第16条)
外国人の参政権は、これを認めない。(第19条)
国は、自衛のための軍隊を保持する。(第20条)
<第五章 統治組織>
政党の要件は法律で定める。(第23条)
<第七章 重大事態>
国際機関の決定や勧告は、憲法または日本固有の慣習に反する場合、効力を有しない。(第32条)
まるで1889年(大日本帝国憲法)にタイムスリップしたようで。憲法学者からは当然酷評されています。
「参政党の「創憲案」には、憲法学の専門家も懸念を示す。慶応大学の駒村圭吾教授は「法の下の平等や個別の権利が書かれていないので、人権が大きな問題になる」と、現行憲法で重視されてきた価値観が大きく変容する可能性を指摘。「従来の改憲論とは完全に一線を画している」と話す。
また、東京大学の石川健治教授は「自分とは異質な『他者』の存在を想定しておらず、他者との共存、権力への警戒、といった立憲主義の本質を欠いている」とし、「憲法学の観点から言えば、憲法の体をなしていない」と批判する」(1日付朝日新聞デジタル)
しかし、参政党の改憲草案が自民党の改憲草案(2012年4月27日発表)や日本会議など旧来の皇国史観右翼と違うのは、露骨な皇国史観を、「食糧の完全な自給自足」「医薬品、食料添加物の安全性」など市民の生活不安に応えるような政策と混在させていることです。そしてそれをSNSという巨大な“武器”で発信していることです。
共同通信が7日付で発表した参院選トレンド調査では、比例代表投票先で参政党は8・1%、自民党(18・2%)に次いで第2位です(国民民主6・8%、立憲民主6・6%、公明5・0%、れいわ3・7%、維新3・4%、共産2・5%)。
「日本人ファースト」を掲げ、外国人に対する差別・排外主義などトランプ大統領とも多くの共通点を持ち、それを皇国史観と合体させた新たな極右政党・参政党の動向は決して軽視することができません。