
「高校無償化」に毎年4千億円の公費が投じられていますが、今年2月の自民、公明、維新3党の合意で私立高校向け加算の年収制限をなくしたことで来年度からそれが8千億円になります。
その影響を報じたものですが、取り上げているのは、公立校から私立校への流れが加速するか? 所得による教育格差が拡大するか? という問題です。
京都新聞も同じく10日付の「参院選 問われるもの」シリーズで、「高校授業料無償化拡充」を取り上げました(共同配信)。この記事でも、「私立の上乗せ分の所得制限が撤廃されることで、私立人気が高まりそうだ」など、視点は朝日新聞とほぼ同じです。
朝日新聞も共同通信も「高校無償化」をテーマにしながら、肝心な問題には一言も触れていません。それは「高校無償化」制度から朝鮮学校が排除されている問題です。
メディアだけではありません、両記事には早稲田大、千葉工業大、名古屋大の専門家のコメントが紹介されていますが、これらの学者も(記事の限りでは)朝鮮学校排除問題にはまったく言及していません。
そもそも、今回の参院選で、多くの党が「高校無償化」を政策に上げていますが、朝鮮学校排除を改めると主張している政党は1つもありません(たとえば共産党は「国の責任で、高校授業料を無償化します」としていますが朝鮮学校にはまったく触れていません)。
「高校無償化」を口にしながら、すべての政党が、メディア、学者が朝鮮学校排除には触れず現状を追認・固定化している。きわめて異常な状況と言わねばなりません。
「高校無償化」は2010年、民主党政権の下で法律が成立・施行されましたが、同政権によって朝鮮学校への適用が保留されました。そして12年12月に発足した第2次安倍晋三政権によって排除が確定したのです。
それは安倍晋三政権の朝鮮民主主義人民共和国敵視・在日朝鮮人差別の典型的な表れでした。その根底には安倍晋三の歴史改ざん主義、植民地支配の加害責任棚上げがあります。
板垣竜太・同志社大教授はこう指摘します。
「朝鮮学校の歴史性は日本の植民地主義への抵抗の産物であり、朝鮮学校を排除しない枠組みを作ることは植民地主義の克服と植民地支配責任の追及になる」(月刊「イオ」6月号)
「高校無償化」から朝鮮学校が排除・差別されている実態の是正・解消を主張する政党、メディア、学者が皆無であることは、安倍晋三が敷いたレイシズム・植民地支配責任棚上げのレールの上を日本全体が走っていること、日本がいまだ植民地主義を克服できていないことを示しています。