
共同通信の衆院選トレンド調査(14日付)では、比例代表の投票先で参政党を挙げた人は1・3%にのぼり、社民党(0・3%)を大きく超え、れいわ新選組(1・4%)に迫っています(政党支持率は0・8%)。
同党は2022年7月の参議院選挙の比例区で約176万票(得票率3・3%)を得て神谷氏が議員になりました。今回の衆院選挙では、小選挙区に85人、比例区に9人を擁立しています。
15日の衆院選告示日。神谷氏の「第一声」(大阪)をユーチューブで見ました。
「今回の選挙の争点は、日本がどう生き残るかだ」とし、自民党、立憲民主、そしてメディアを批判。「自民の裏金問題より国民のお金を増やすこと」と「裏金問題」を後景におしやりながら、「減税」「消費税廃止」「若者重視」「軍事産業批判」「コロナワクチン批判」を強調しました。
その中で「夫婦別姓反対」「日米同盟を対等な同盟に」「安倍派が排除されている」「参政党が10~15議席あれば自公が過半数割れした時に必ず交渉する(自民政権補完)」などの本音を挿入。巧みな話術と迫力。参院選の時も街頭演説で多くの聴衆を集めたと報じられましたが、なるほどと思いました。
神谷氏は、2007年から大阪府吹田市議を務め、2期目の途中で辞めて12年の衆院選に大阪13区から自民党公認で立候補し、落選しました。
市議時代に立ち上げた超党派の政策提言集団で、自民党衆院議員(当時)の杉田水脈らとつながりました(2022年11月6日付朝日新聞デジタル)。
そして2020年4月に参政党を結成。当時党代表だった松田学氏は衆院議員時代に、石原慎太郎らが立ち上げた右翼政党「次世代の党」に所属していました(同朝日新聞デジタル)。
熱弁をふるった神谷氏の「第一声」でしたが、参政党についての肝心なことにはまったく触れませんでした。
参政党の綱領の柱は3本。その第1の柱でこううたっています。
「先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」
「5つの約束」の4番目は「皇室は男系男子で継承を維持」です。(同党HPより)
参政党の本質は、天皇中心主義の右翼政党です。現体制を批判しながら右から「天皇中心の国家」を支える。神谷氏は演説では「天皇・皇室」については一言も触れませんでしたが、氏の後ろでははためいていた「日の丸」がその実体を示していました(写真)。
国家体制を批判しながら右から国家権力を支える。その手法はけっして新しくはありません。しかし、「高い党費」(神谷氏)を払っている党員は22年時点で「およそ10万人」にのぼり、「1回の演説動画が10万回前後再生されたことも」あります(22年11月6日付朝日新聞デジタル)。
参政党の支持層には女性と若者が多いのが特徴といわれています。参院選全体の得票率は3・3%でしたが、共同通信の出口調査では「18、19歳の6・8%が参政党に投票した」(22年7月13日付琉球新報)といいます。
同党の「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」というキャッチフレーズが、「支持政党なし」層に浸透する可能性は小さくないでしょう。
神谷氏の演説を聴いた女性からは、「日本の歴史のすごさ、天皇の素晴らしさに感銘を受けた」という感想が聞かれました(22年7月13日付朝日新聞デジタル)。
参政党が国会で一定の議席を占めれば、新しい衣をつけた天皇主義が国会・社会に広がる現実的な危険性が強まるでしょう。
同党の自民党政治批判、既成政党批判はけっして的外れではありません(だからこそ共感をよぶのでしょう)。同党の伸長は、彼らが批判する政治の現実を、彼らとは逆の立場・方向からどう打開するのか、という課題を突き付けていると言えるでしょう。