アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「ウクライナ報道」NHK・ETV特集の見識を問う

2022年11月07日 | 国家と戦争
   

 5日のNHK・ETV特集は「ブラッドが見つめた戦争 あるウクライナ市民兵の8年」でした。ウクライナ市民兵(のち正規兵)のブラッド氏(写真中)が撮影した映像をNHKのNディレクターが入手し、ナレーションを交えながら流したものです。優れた番組が多いETV特集ですが、今回は大きな疑問を禁じ得ません。

 第1の問題は、戦争当事国の一方の側からの映像を、ジャーナリズムとしての検証もないままにそのまま、感情移入しながら、流したことです。

 Nディレクターの「(ブラッド氏の)ロシアに対する怒りの深さをただ受け止めるしかありませんでした」というコメントは、そのことを示しています。

 第2の問題は、放送された映像はウクライナ軍の検閲を通ったものだということです。

 番組終盤で、ブラッド氏はウクライナ軍の正規軍の軍曹となり、それまでに撮影してNHKに渡した映像について軍から点検を受けたことが明かされました。今回放映された映像はその点検後、すなわちウクライナ軍の検閲を受けて問題なしとされたものです。

 第3の問題は、したがって放送された内容は、ウクライナ軍にとって都合の悪いものは含まれていない偏ったものだということです。

 それが顕著に表れていたのは、8年前(2014年2月)の「マイダン革命(クーデター)」です。
 ブラッド氏はこの時から「反ロシア」の闘争に参加しています。そのブラッド氏が撮影した映像による「マイダン革命」は、「親ロシア」のヤヌコーヴィチ政権が市民を弾圧したものとして描かれていました。

 しかし、それはあまりにも一方的な見方です。特徴的なのは、「オデッサ労働組合会館放火事件」(「オデッサの虐殺」)など「マイダン革命」で重要な役割を果たした極右ネオナチ集団について一言も触れていないことです。

 極右ネオナチ集団はのちにアゾフ大隊となりますが、同大隊については日本の公安調査庁も「国際テロリズム要覧2021」で、「ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した」と明記していました。公安調査庁は今回のロシアの軍事侵攻後に、この記述を削除しました(4月20日のブログ参照)。

 また、「マイダン革命」の背後にはアメリカ政府がいたことが知られていますが(3月28日、5月14日、7月28日のブログ参照)、そのことについても番組は一言も触れませんでした。

 「マイダンクーデター」は今回のロシアの軍事侵攻と密接な関係にあります。それについてウクライナ(軍)側からの一方的な報道に終始したことは、明らかな偏向であり、今日の事態の正確な理解を妨げるものと言わねばなりません。

 以上のように、たいへん問題がある番組でしたが、改めて明らかになったこともあります。それは、市民の命と生活を破壊する戦争は一刻も早く止めなければならないということです。
 今求められているのは、「領土奪還」ではなく「即時停戦」です。
 「領土(国境線)問題」は停戦の後に、国際的監視(国連などの仲介)の下で、外交協議で解決すべきです。

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