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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「隠される内部被曝」ー矢ケ崎克馬さん怒りの告発

2016年03月19日 | 東日本大震災・東電福島原発事故

  

 琉球新報(3月16、17、18日)に矢ケ崎克馬さん(琉球大名誉教授、写真)の「隠される内部被曝―福島原発事故の実相」が掲載されました。たいへん重要な内容なので、ポイントを紹介します。

事実を歪曲する日本政府・・・①政府はモニタリングポストの値を正式汚染データとしているが、確認測定を行った結果(2011年秋)、発表データは実際の汚染の平均54%しか示していないことが明らかになった(写真中)。
 ②土壌の汚染は空間線量で示すべきだが、政府は臓器ごとに被曝線量を分割する「実効線量」(架空の線量)に置き換えるなどして実際の3割程度にしている。この背景には国際原子力産業集団の意図が働いている。
 ③悲しいことにすでに福島県の小児甲状腺がんは163人に広がっている。科学的見地からは紛れもなく放射線が起因と証明されているが、福島県健康調査検討委員会は「関連性は確認されていない」と言い続けている。

チェルノブイリ原発事故(1986年、以下チ)対応との多くの違い・・・①放射能放出量は福島の方が2倍から4倍多い。チが100万kw1基の爆発に対し、福は4基、合計281万kwが関与。
 ②チは事故の7カ月後に石棺を構築して一切の放射性物質の漏えいを防止したが、福島は5年たつ今も空中・水中に放出し続けている
 ③チは5年後に住民保護法ができ、年間5㍉シーベルト以上の区域では住居も生産も禁止された。健康対策、子どもの保養など、膨大な予算を国家が支出して住民を保護している。日本は年間20㍉シーベルト基準で住民帰還を強力に促している。チが居住を禁止している年間5㍉シーベルト以上の汚染域には100万人規模が生活を続けている。
 ④チでは汚染地に汚染のない食べ物を現物支給したが、福島では「食べて応援」の大合唱とともに、行政が子どもたちの給食に「地産地消」を断行させた

★「風評被害」と農家の人権・・・「風評被害」とは、放射線被害を心の問題にはぐらかす手段の用語だ。「精神的ストレスが病気を生む」論理は、核時代を貫く犠牲隠しの手段である。
 安全な食べ物を供給することが農業生産の使命である。健康を害する可能性のある放射能汚染された食べ物を、自らの意に反して生産させられるほど酷な人権侵害はない

★「放射能公害」と認識し、全市民対象の早急な施策を・・・深刻な放射線公害が意図的に無視されている。日本市民は放射能公害として事態を認識すべきである。放射能公害から市民を守り、被害者を政府・行政の責任において速やかに保護する必要がある。
 避難者だけでなく全市民を対象にした次の行政施策を提起する。①避難・移住の権利を認め国が保障する②健康被害の全国調査の速やかな実施③放射能に弱い人々を保護する予防医学的防護の実施④甲状腺検診の全国実施⑤放射性物資の移入移出を防止する⑥加害企業としての東電の社会的責任を明確にする

★<エピソード>内部被曝を隠すNHK・・・2011年7月2日のNHK「週刊ニュース深読み」に出演依頼があった。私(矢ケ崎氏)は日本の小児がんの死亡率が1945年の原爆投下後5年で3倍に跳ね上がっていることを示すデータをフリップにしてもらった。内部被曝の被害を世界で初めて明らかにしたデータである。
 ところが当日スタジオに入ると私の足元にあるはずのフリップがない。近くの職員に「すぐ持ってきてください」と頼んだが、渡せないという返事。開始30秒前であり、私はそのまま番組に出演するしかなかった。後日、経緯を文書で説明するよう求めたが、応じてもらえなかった。

 内部被曝と「風評被害」「食べて応援」と農家の「人権侵害」・・・たいへん考えさせられる問題です。
 矢ケ崎さんは別のところでこうも言っています。

 「肝心なことは政府や東電の規準に従順に従うとき、農民は基本的人権が破壊されることです。『食べて応援』と全国の消費者を内部被曝させる汚染拡大の道に引き込みます。被曝を受け入れて支援しようとすることは権力支配の下で犠牲を共有することとなります命を大切にすることが共通の合言葉となった時、初めて汚染地内外で、全人格を貫く連帯が生まれます」(沖縄県民間教育研究所機関誌「共育者」2016年2月号)

 「基地問題」にも通じる言葉として、かみしめたいと思います。

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