殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

記念日

2010年06月13日 10時31分45秒 | みりこんぐらし
最近、すっかりご無沙汰のバンド活動。

しばらく参加しないでいるうちに、一人減り、二人減り

存続の危機すら危ぶまれる状態になっていた。


ちょうど、我々の生まれた町の公民館活動で

社会人によるブラスバンドが結成される運びとなった。

町内初の試みであるらしい。

「消滅する前に、指導者のもとで基礎からやり直そう」という話になり

結成にあたっての説明会があるというので

今いるメンバーで、行ってみることに決まる。


私は夫に頼んだ。

「その日は、15分ほど早めに帰って来てくれる?」

思えば、夜の単独外出は2ヶ月ぶりである。

夫はこういうことに寛大なので、当然快諾してくれると思っていた。


ところが…ダメと言うんじゃ。

言い方が悪かったらしい。

行くのがダメなんではない。

15分と、細かい指示をされたのが、気に入らない。


いつもどおり夫の実家に集まって

全員の夕食を少し早めに終わらせ、後片付けもすませて

何の心残りも無いままゴー!をもくろんだのが失敗だった。

そうそう…夫は、人の都合でペースを乱されるのが、大嫌いだったわい。

ちなみに、逆は、いい。


男も年を取ると、年々気むずかしさが増す。

お出かけが減ったら、そこらへんの勘が鈍ってしまうわ。


私は公民館でブラスバンド…という話に、本当は乗り気ではなかった。

会場は、メインの公民館ではなく、町外れの古い分館だ。

道がすっごく狭い。

民家だったところを改築しているので、車で集まるように出来ていないのだ。


駐車場なんて無いもんで、ずいぶん手前で路駐して

暗く、細い道を歩かなければ、たどり着けない。

今回は勢いでどうにかなるにしても、毎週通うとなると、実は自信が無い。

どうしても行きたい場合は、夫が何と言おうと気にせず出かけるが

そこまでの情熱が無いもんだから、あっさり引き下がった。


しかし、当日になって、争いは勃発した。

「こないだ言ってたバンド、行ってもいいぞ。

 オレ、早く帰るから」

    「いいよ。もう断ったから」

「行けよ、せっかくだからさ」

    「気にしないで」

「オレが困るんだよ!明日、同窓会の飲み会が決まったんだ。

 お前を出さずにオレが出かけたら、出にくいじゃん」


なんじゃ…その言い草。

さすがにムッとする。

    「主人の機嫌が悪いから、出してもらえないって言った~。

     いまさら機嫌が直ったからって、のこのこ行けないわ~」

「そんなこと言ったのかっ!」

    「うん」

「いい加減なこと、人に言うな!」

    「事実じゃん!」

「うるさい!」

    「あんたのほうがうるさい!」

ものすごく怒る夫。

ひひひ…言うわけないじゃんけ。


相当腹が立ったらしく、夫はしばらく口をきかなかった。

おじんのふくれっ面って、醜いったらありゃしない。


そのうち私は、はたとあることに気がついた。

    「ちょっと、ちょっと~

     私ら夫婦、女関係と嫁しゅうと以外で喧嘩したの、お初じゃない?」

「そうだっけ…」

内心、話しかけられるのを待っていた夫は、パ~ッと顔を輝かせる。


     「記念日じゃん」

「うん、記念日じゃ」

この男のことだから、謝りはしない。

ただ、急にあれこれ話し始める。

「オフクロのやつ、おまえが庭に水まいてる間、のんきに散歩しやがって。

 散歩が出来るんなら、水もまけるだろうに…けしからんやっちゃ。

 あいつら、どこまでも増長するんだから、ほどほどにしとけよ」


だったらオマエが水まけや!と言いたいのは、やまやまであるが

私は優しい微笑みを浮かべ、いいのよ…ありがとう…と言う。

昨日、玄関前の植木鉢に引っかけたままだった

夫の姉カンジワ・ルイーゼの日傘…

うっかり水がジョボジョボ~ッと入ってしまい

そのまま放置したことなど、言いはしない。


まあ、どう転んだって、私の亭主…ここまで気がつけば、上出来さ。

おじんのザンゲは、いつも人知れず、ひそかに行われる。

一応記念日ということで、カルピスで乾杯した。
コメント (30)
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