殿は今夜もご乱心

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手抜き料理

2018年05月03日 08時18分55秒 | 手抜き料理
ゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしょうか?

私は例年通り、家やその周辺でタラタラ。

そこへ同級生の友人ユリちゃんとLINEで交わす

料理談義が加わりました。



ユリちゃんはお寺の嫁。

行事の多い宗派なので、その打ち合わせや準備のため

月のうち半分は檀家さんが集まっている。

その人たちに食事を出すことも頻繁だ。

こんな時、以前は賄いを買って出る有志がいたが

病気や死亡で減少し、今年からユリちゃんの仕事になってしまった。


ユリちゃんは困っていた。

だって彼女は料理が苦手。

この子のお母さんは料理教室を開くほどの腕前だったが

親がそんなだと、子供は案外やらない。


そのまま結婚したユリちゃんを待っていたのは

料理をしなくていい環境。

毎日のように誰かが来て何か作ってくれるし

旦那のモクネンは多忙かつ夜遊び好きのため

家で食事をすることはほとんど無く

子供がいないので、わざわざ作って食べさせる必要も無い。

料理以外の仕事を人一倍頑張ることで

何ら問題なく30年余りを過ごしていたのが

ここにきて、料理が彼女の前に立ちはだかったのだ。


当初は買った物を並べたり、身内に頼んでいたが

さすがに毎回というわけにはいかない。

ユリちゃんの悩みは切実である。


その切実は、苦手なことをする辛さだけではない。

彼女には、お寺の奥さんとしての矜持がある。

お寺の奥さんには、カリスマ性が必要。

「奥さんが頑張っていらっしゃるから、私たちも付いて行こう‥」

檀家にそう思ってもらわなければ、頻繁な行事はこなせない。

妙な物を出して、笑い者になるわけにはいかないのだ。


だからといって出前や、準備の簡単な焼肉というわけにはいかない。

予算の都合があるし、お寺は質素がモットー。

出前持ちがたびたび出入りすると目立つ‥

ニンニクぷんぷんも困る‥

贅沢をしていると思われたら、お寺の求心力に支障が‥

コンビニ弁当は誠意が伝わらずサツバツ‥

というわけで手作りが無難、手作りしか無い。


「私のような初心者でも作れる料理を教えてくれない?」

思い余った彼女は、窮状を私に打ち明けた。

“安くて早くて簡単で格好がつき、おいしければなおいい”

それがユリちゃんの望みである。


これを高望みとは思わない。

お寺とは、それほど大変な所なのだ。

「食べなきゃいい、寝なきゃいいのよ」

これはユリちゃんの名言。

人と同じように座って食べたり

横になって寝ようとするから忙しいのであって

食べない、寝ないと決めたら

時間的に不可能なことでも何とかやれるというのだ。

この言葉の壮絶に、大いなる感銘を受けて以来

自分の暮らしにも適用しているが、気が楽になってなかなかいい。


そんな中で食べられたり寝られたりすると、幸運を感じる。

幸運を感じると同時に、ユリちゃんの壮絶へと思いを馳せる私の方は

彼女の望む『安くて早くて簡単な料理』を毎日大量に作っている。

格好がついておいしいかどうかは疑問だが、それが仕事のようなものだ。


ついでに私はウグイスとして、選挙事務所の食事を知っている。

ユリちゃんが望む数々の条件は、選挙事務所のそれと全く同じ。

その経験が手助けになるとしたら、これほど嬉しいことはない。

ユリちゃんの申し出を快諾した私だった。

近くなら飛んで行って作るけど、遠いのがもどかしいところよ。


いっそ大人数の時は人手があるし、カレーやおでんで乗り切れるが

彼女が最も困っているのは、6〜7人程度の分会で出す料理だという。

最初はユリちゃんの自称する苦手が、どのランクなのかを把握するため

『鶏ササミの塩胡椒焼き』を提案した。

ササミをそのまんま焼きながら、裏表に塩胡椒するだけ。


が、ユリちゃん、早くも難色を示した。

「ササミって、スジを取らないといけないよね‥苦手‥」

そこからかい!

私は一瞬ひるんだものの、すぐに気を取り直す。

「大丈夫!生協宅配の国産若鶏スジなしササミがある!」

彼女も私と同じく生協の宅配を利用しているのだ。

ササミは好評だったそうで

私は手抜き料理の指南役として、すっかり信用を得た形になった。


最近のヒットは麻婆豆腐。

麻婆豆腐の素を使えば、あっという間にできる。

「丸美屋の中辛が安くておいしい」

「大量の刻みネギ投入で手作り感を粉飾」

などと伝える。


禅寺と豆腐は相性がいい。

案の定、中華にすると珍しがられ、喜ばれたそうだ。

信仰厚き檀家さんたちの語らいは

豆腐のルーツである中国四千年の歴史に及んで盛り上がったという。

ユリちゃんの方は麻婆豆腐より、粉飾の仕方が気に入った模様。


『旭松のこうや豆腐』も初心者の味方。

近年は水で戻す手間がいらず

味付けの粉末が付いているものが発売されている。

鍋に水と粉末と、固いままのこうや豆腐をぶち込んで煮詰めたら

自動的にこうや豆腐の煮しめができる寸法。


禅寺とこうや豆腐の縁も深い。

含蓄のある食材選びでイメージアップ‥

味付けをたずねられたら「母の秘伝」とうそぶくのじゃ‥

と添える。


季節柄、味噌汁にはお寺の庭にある山椒の葉を一枚ずつ入れて

ありがたみを演出‥

ミツバや大葉を多用したら、デキる女と思われる‥

サラダと汁の充実で、メインのおざなりを隠蔽‥

近頃は、手抜きをごまかす粉飾に重点が置かれつつある。

料理というより詐欺に近い。

しかしユリちゃんには、この方が覚えやすい様子。

いたずらをしている気分で、楽しいと言う。


少し上達してきたので、次は粉飾寿司でも教えようかと思っている。

みりこん命名の粉飾寿司は、ちらし寿司の仲間。

寿司飯の中に何も入れないのが特徴である。

そもそも寿司飯の中に、甘辛く煮た具を混ぜ込むから大変になるのだ。


その点、粉飾寿司は早い。

白い寿司飯を大皿に薄く敷き、その上に買ったゆで海老

買った干し椎茸の佃煮、買った卵焼きを置いて

仕上げにミツバの葉っぱと、ほんの少しイクラを散りばめる。

作るというより飾るだけ。

それでも皆の目はイクラに集中し、細かいことは感じなくなる。


実はこれ、ひと回り年上の友人ヤエさんの十八番。

彼女は私の住む町で、ユリちゃんと同じ宗派のお寺の総代をしている。

料理好きの彼女は、お寺の集まりでこの寿司を提供しているため

掟破りではないはず。


料理上手というヤエさんの評判、寿司というネームバリュー、美しい色彩

そして燦然と輝くイクラに、私も当初は錯覚したクチよ。

が、たびたびお相伴にあずかるうち

トッピング形式だと量が少しで済むため

意外に手間と経費がかからないことを発見するに至った。

だからヤエさんは、作品を惜しみなくバンバン配れるのだ。


ヤエさんはトッピングの材料を一つ一つ手作りするけど

それらはスーパーでも売られている。

買い集め、切って載せればいいのでユリちゃんでも大丈夫。


この寿司をふるまう時、ヤエさんはいつもきっぱりと言う。

「私、寿司飯にゴチャゴチャ混ぜるのは好きじゃないの」

それは食べる側の「?」を瞬時に解消する説得力があった。

この手で行くつもり。

しかし何回もやったら、あんまりおいしくないことがバレてしまう。

そこが難点である。

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4 コメント

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Unknown (モモ)
2018-05-05 07:22:03
料理…それは手抜き無しでは作れない、30分勝負の事。
小学校から帰った小さな怪獣が、「お腹が空いた~⤵……」と、サイレンを鳴らします。
それを何とか宥めて、お風呂に入って貰う間に急いで主菜、副菜を作る。

時間があれば、朝の30分で下ごしらえ。
夕方、焼く、和える、盛る。

しかし、圧倒的にレパートリーが少ない のが、気になるところ(^-^;

私の窮状を解っているかのような記事に感謝します!

是非、参考にさせて頂きま~す❤
返信する
嬉しい‼︎ (みりこん〜モモさんへ)
2018-05-05 21:28:31
手抜き料理がモモさんのお役に立てたなんて!

お嬢ちゃん、もう小学生だもんね〜!
早いものです。
手抜き料理、まだあるんですけど続編を書きましょうか?
好みや料理する人の都合は各家庭で違うので
そのまま実行できるかどうかはわかりませんが
イメージが広がって取り組みやすくなることって
あると思います。
料理の話、大好き。
返信する
Unknown (モモ)
2018-05-05 22:09:05
是非、お願いします!!

ご面倒でなければ、カテゴリー作って下さって、気持ちが向いた時に記事にして頂けたら…

図々しいお願いですが(^-^;
返信する
了解! (みりこん〜モモさんへ)
2018-05-06 07:42:09
全然、面倒じゃありませんよ。
さっそく作ります。
返信する

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