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祖父母と同居する子供について・3

2023年09月16日 10時39分08秒 | みりこん流
ハルさん、ミツさんという“ある意味プロ”の気働きによって

祖父の悪口大会から救済された私。

父にも笑顔が増えたようで、それが一番嬉しかった。

女の力量で、家の中はこうも変わるのだ。

恐るべし、後妻業者。


そのうち、あれほど苦しんだ矛盾の渦はどこかへ消えてしまった。

お祖父ちゃんという名の巨大な存在だと思っていた祖父が

女の手のひらでいとも簡単に転がされるのを見て

彼もただの人間だと認識したことも大きい。

同じ人間なんだから、矛盾が生じるのは仕方がない…

孤独な老人であればなおさらよ…

この結論は私に余裕をもたらした。

祖父と話していて悪口へ移行しそうな時は、別の話を振って気をそらせる技も習得し

うまくやり過ごすようになった。


やがて私は大人になって結婚。

ハルさん、ミツさん直伝の男あしらいで、うまくやっていく自信は持っていた。

が、相手の男にも家族がいるのを忘れていたのは痛恨のミス。

義父は、祖父より何倍も手強かった。

それなのに数年後、同居。

バカじゃ。


彼が私に言う意地悪は、祖父が父に言っていた内容と全く同じだった。

立ち居振る舞い、能力、働きぶり、姿かたちに嫁入り道具…

口をきわめ、顔を歪め、事細かな描写をくどくどと羅列。

なさぬ仲の相手に悪意を持って何か言う時は皆、同じパターンらしい。


とはいえ自分が言われるのは、祖父に父のことを言われるより楽だった。

私は自己犠牲を尊ぶようなタマではないが、舅に当たられることで

何だか父に近づけたような気がしたことは、まんざらでもない。

父は、血の結束の中で他人が何を言っても無駄とわかっていたのだ。

不抵抗、不服従のガンジー方式さながらに、敵の繰り出す身勝手な命令に従わず

ただ黙ってポーカーフェイスを通すことが、矜持を保つ手段だったのだ。


よって私も義父には、ガンジー方式。

暴君にはこれが最善であり、また、この方法しか無いのである。

泣いて謝り、改めると約束しない私に、義父はじれてますますきつい言葉を吐いたが

これも祖父と同じ。

パターンがわかっていれば、恐怖は無い。


祖父に言われっぱなしの父を、子供心に不甲斐なく思ったこともあったが

自分が同じ目に遭って初めて父の気持ちがわかり

何かと縁の薄かった父と人生の一部を共有できた気がした。

同時に、祖父が父について言っていたのと同じ言葉を私自身が受けることで

無実の父に辛く当たった祖父の罪が軽減されたような気もした。

我ながら、おめでたい。



やがて年月が経ち、長寿の祖父が死の床についた。

実質的な看護は、祖父と二人で暮らしていた当時のカノジョが行っていたが

病院への送迎や男手の必要な用事は、父が数年に渡って淡々とこなしていた。

最後には、いじめ抜いた相手の世話になる…

このパターン、どこかで見たような?フフ。


祖父にはたくさんの愛情をもらったが、父の件に関しては迷惑千万だった。

人のせいにはしたくないけど、悪口をたくさん聞くと

私のように自己肯定感が低く

疑り深くてひねくれた子供になってしまうのは確かだ。

こうなると、周りと同調できないことが多くなって

生きるのがしんどくなる。


しかし、何もかも平和で順調な人生なんてありはしない。

お陰で今は、押しも押されもせぬオバちゃんになった。

両親の離婚に怯え、クヨクヨと悩むだけで

何も行動しなかった自分の弱さ、不甲斐なさを戒めとして持ち続けているからだ。


離婚を恐れるも何も、どうせ片方は近いうちに他界する運命だったんだから

私は遅かれ早かれ片親になっていた。

だから、怯えることはなかったのだ。

初孫の言うことなら祖父は聞いてくれたかもしれないし

たとえ返り討ちになったとしても、父の心は癒されたはずだ。

現状にとらわれるばかりで、たった一歩先を見ようとしなかった当時のザンネン…

あれを繰り返したくない思いが、現在の私の行動を決めている。

時々失敗もするが、厚かましいオバちゃんだからすぐ忘れる。



ところで我が家にも、祖父母と生活した男子が二人いる。

炎上家庭で育った、うちの子供たちはどうなのか…

ということになるわけだが、元々塩の効いた子らではなかったからか

いたってのんびりしており、これといった異変は見受けられない。

ハタから見ればそうではないのかもしれないが

私の見る限りでは能天気でだらしなく、たまに優しい…

つまり、どこにでもいるボンクラ息子にとどまっていて

自身のように複雑な歪みは感じてない。


これについては、幸運だった。

というのも義父は浮気とゴルフに忙しく、家に居ることが少なかったので

孫はあんまり眼中に無かった。

母親の悪口をつらつらと吹き込むような暇は、無かったのだ。


そして義父は、祖父に比べると語彙が少なかった。

だから孫に聞かせる内容も、「お前らのオカンはバカ」

あるいはブス、デブ、クソ…これらの短文にとどまる。

小さい男の子はそういう言葉を面白がるので、息子たちはキャッキャと笑っていた。


そのやたらハイテンションな笑いの中には

母親を悪く言われた悲しみが、わずかに含まれているような気もしたが

祖父母と暮らすからには完全無菌状態にするなんて不可能だ。

これくらいのことであれば、多大な情報の中で矛盾の淵に突き落とされ

苦しむ状況までには至らないと思い、そのままにした。

悪口を言う方と言われる方が最後にどうなるかは、彼らが見届ければいいことである。


そしてご存知の通り、家には息子たちの祖父母だけでなく

夫の姉とその子供がほぼ常駐体制。

人数の多さから、例の情報量や矛盾が気になるところだが

これも心配はなかった。

彼女はワンパクでうるさいうちの子を嫌って、あまり近寄らせなかった。

幸運であった。


やがて息子たちが大きくなると、家族は母親について滅多なことを言えなくなる。

機嫌を損ねた場合、身長や力で負けるからだ。

女の子と違う点は、ここかもしれない。


ともあれ昔と違って、今のお祖父ちゃんやお祖母ちゃんは若いので

同居したからといって、私の家のようになる可能性は低いと思われる。

近代の教育を受け、近代の職場で働いてきたので

年長者だから何を言ってもいいというおごりが無いからだ。

そして情報の重要性や危険性をちゃんと知っており

娯楽も豊富で楽しみが多いため、忙しい。

サロンパスの香る座敷へ孫を呼びつけ

嫁や婿の悪口を延々と聞かせるような祖父母は、もはや絶滅危惧種だ。


孫のほうもネットやゲームの情報を浴びるのに忙しく

親の悪口という、いらない情報はシャットアウトする。

だから私のように歪む心配は少ないはずだ。

良かった!日本!



というわけで、さらさんのコメントで思い出した昔話を

長々とお話ししてしまった。

とりあえずは、さらさんや私のように

家族の言動で小さな胸を傷める子供が絶滅することを願う。

《完》

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6 コメント

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Unknown (みりこん〜さらさんへ)
2023-09-16 20:26:43
こちらこそ、お話ししてくださって
ありがとうございました。
さらさんのお話に感動しました。
あ〜、私だけじゃないんだ〜って。 
さらさんも、そう思われたと思っています。
抱えていらっしゃったものが少しでも軽くなれば
嬉しいです。

さらさんもうちの息子たちがおおらかと?
お二人が言ってくださったので、そうなんだと
思うことにします。
ありがとうございます。

さらさんが同居を免れて、本当に良かったと思っています。
穏やかに暮らせるのが何より。
私は無責任なこと言ってただけで、決断したのは
さらさんです。
過去にこのようなことがあったのも
良い方へ働きましたね。

そうそ、施設も入ったら、時々面会に行ってりゃ
いいってものでもないんですってね。
通院や必要な物を届けたり、不安定になったりで
何につけ施設から呼び出しがあるとか。
これ、けっこう大変だと思いますよ。
小さいお子さんがいらっしゃるとなおさら。

さらさんのご苦労をしのぶことしかできませんが
応援しています。
返信する
Unknown (みりこん〜しおやさんへ)
2023-09-16 19:53:13
息子、おおらかですか?
良かった…ありがとうございます。

逆バージョンもありますよね。
特に中途だと、同居した理由によって
立場や役目もが変わります。
お祖父様とお祖母様はクッションの役割だったんですね。

だけど子供が一番好きなのは母親です。
しおやさんは大好きなお母様が孤立しないように
一生懸命気を配ってこられたと思います。
だけど子供がそれをやると、すごく疲弊するんです。
そんなに器用じゃないので、親か祖父母の
どちらか一本に絞らなければやってられませんよ。
健やかに育つための自然な成り行きです。

「ご先祖様って呼んでいいのは一部やろ!」
すっごく笑わせていただきました。
返信する
Unknown (みりこん〜田舎爺Sさんへ)
2023-09-16 19:35:04
子供が大人になった時に親の生き方がわかる…
本当にそうだと思います。

自分が子供の時は、わかっているようでも断片的。
親を見送る年齢になってやっと、親の人生が
流れとしてとらえられるようになり
気持ちがわかるのだと思います。
私も落第しないように精進したいです。
返信する
Unknown (さら)
2023-09-16 16:34:38
深い深いお話ありがとうございました。
誰にも話せなかった心の痛みが癒やされ、長年の
数々の疑問も払拭されました。
みりこんさんの知性の高さ、多面的な物事への捉え方に毎回驚愕いたします!
息子さん達はおおらかに育っていらっしゃる。文面から伝わって参ります。良かった良かった。
我が家はみりこんのおかげで同居を免れ、色々ありますが、穏やかに有り難く暮らしております。
時々施設に入った義母から色々な理由で、連絡が入りますが、離れているからこそ、多少の事は目を瞑り、優しく出来ます。
これからも更新楽しみにしています。
返信する
Unknown (しおや)
2023-09-16 14:30:08
みりこんさんの息子さん達は大らかに育ってらっしゃいますよね。日々の記事から感じます。

みりこんさんとうちは、逆かなあ。うちは同居した祖父母が
母よりはるかに大らかな人たちだったんです。それに気づかなかった。
同居した初めての日に、私が手を滑らせて味噌汁の椀を床に落としました。そしたらいつものように「何やってるん!」と母に頭を叩かれました。それを見た父方の祖母が「わざとやったんじゃないのに何で叩くんか」とびっくりしていました。私は小学生でしたが「そういう考え方があるのか」とびっくりしました。
祖父母は相当母に遠慮していたと思います。
なのに母が一番好きだったので、母の影響を受けて(悪口は言いませんでしたが伝わる。)田舎はいや、祖父母は不潔と思いこんでいました。今後悔で一杯です。

最近、「ご先祖様」って呼んでいいのは一部やろ?!とまで思いだしましたww
返信する
Unknown (田舎爺S)
2023-09-16 14:29:01
自分がどのように生きてきたかの答えは、
子供が大人になった時に分かるようですね。
私も何とか落第はしないですんだようです。
返信する

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