殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

天のカラクリ

2024年02月19日 15時18分05秒 | 前向き論
決して悪い人ではないのだが、私を昔から馬鹿にする年上の女性がいる。

何を馬鹿にするかというと、仕事。

その人は誰もがうらやむ、安定かつ高給の仕事に就いていたので

当時、病院の厨房でパート勤めをしていた私を見下げていたのだ。

そんな人と会わなきゃいいんだけど、たまに会ってしまう機会があった。


「ちゃんとした仕事に就いてないと、少ない給料でこき使われて大変ね」

「私は老後も安心、誰にも迷惑をかけないで済む」

彼女は会うたびに仕事の話を持ち出し、得意顔でそのようなことを言った。

その一方、私は私で思っていた。

「あんたは両親に子守りをしてもらってたじゃん。

あんたと私の違いは、子守りのある無しだけじゃ」


現にそうなのだ。

昔は就職先がたくさんあった。

お役所、銀行、電報電話局に郵便局、近隣の大企業…

働く女性が少ない時代は、たいていの所に紹介で入れた。

しかし、どんなに良い所へ就職したって子守り…

しかも健康でしっかりした子守りがいなければ続けられない。

仕事を続けるには根性も不可欠なので

子守りさえいればオールOKというわけではないが

彼女に親への感謝は皆無。

自分だけが頑張った口ぶりで、武勇伝を語るのだった。


そして月日は経ち、彼女は定年退職。

さんざん子守りをさせた親は、とうに他界している。

来る日も来る日もハードワークと責任感の必要な子守りを続けると

くたびれて早めにいなくなることが多いものだ。

子供たちも独立しているし、年金は十分。

彼女を待っているのは悠々自適な老後…のはずだった。


やがて70代になり、運転免許を返納。

早めの返納に驚いたが、ご主人が運転するので困らないという話だった。

しかし、それからほどなくご主人が他界。

「私より給料が低い」と、さんざん馬鹿にしていたご主人である。


一人暮らしになった彼女、買い物やドライブに行くことはできなくなったが

強気は変わらなかった。

「車が無くても、買い物は町内でこと足りる。

お金さえあれば、人に迷惑をかけることは無い。

歯を食いしばって一つの仕事を続けてきて、本当に良かった」


彼女の暮らす町は、小さい。

小さいからこそ、たいていの所は徒歩圏内だ。

しかし小さい町の抱える問題といえば、人口減少。

年々過疎化が進み、店主の高齢化も相まって

食料品や日用雑貨を売る店は次々に閉店し

常連だった小さな惣菜店も無くなった。

かろうじてコンビニが一軒あるものの、年がら年中コンビニ弁当では飽きる。

彼女は三度の食事に困るようになった。


そうよ、この人はずっと働いてきたので、あまり料理をしたことがない。

若い頃から、食生活の大半をその惣菜店でまかなっていた。

ご主人も子供たちも、そこの惣菜で生きていたようなものだが

その現実に気づいていなかったらしい。


彼女は私だけでなく、他の女性たちのことも馬鹿にしていた。

パートで働く人を見下し、専業主婦には

「税金も納めずに、旦那の稼ぎでのうのうと生きるなんて」

と嫌悪感をあらわにした。

そのうち、私が仕事を辞めて親の面倒を見るようになると

ますます勝ち誇って言いたい放題。


人間性を置いてけぼりにして、気位だけがパワーアップの一途を辿る人…

つまり、あからさまに人を馬鹿にする人には

貧しかった生い立ちが見え隠れするものだ。

もっとも戦後の日本は貧しかっただろうから、彼女だけがそうなのではない。

社会に出て現金を握ったために

自分だけが偉くなったような勢いの人は数多く存在する。


聞かされる側の私は、その吐き捨てるような言葉の陰に

「自分の人生はこれで良かったのか?」

そんな疑問を払拭したい願望を感じていた。

県外で生活している子供たちは、知らん顔を通しているという。

ご主人が存命の時には気にならなかったが、こうして一人になると

そこにいるかとも言われず放置された身の上がこたえるらしい。

「自分の手で育ててないから、私に冷たいところがある」

強気な口調の端々に、本音が見え隠れするのだった。


それにしても何とまあ、勝手な言い草。

子守りをしてくれた親にも、祖父母に育てられた子供にも失礼だ。

だけど人を馬鹿にする人って、何でも自分の都合のいいように解釈するので

こんな寝言みたいなことを平気で言う。

私に言わせると、きついから子供たちが寄りつかないんじゃないのか。

そうでなければ、彼女の冷たい心を受け継いだに過ぎない。


ともあれ親切!な私は、困っていると言う彼女に生協の宅配を勧めた。

でも、年を取ってから急にカタログショッピングを始めるのには

向き不向きがあるらしい。

カタログを見て、細かい文字や数字の並ぶ注文表に

番号を書き込む作業は無理だった。

惣菜店に駆け込んでその日の夕食を買う習慣を

何十年もやってきた人が、あらかじめ一週間の献立を決めて

必要な物を計画的に注文するなんて至難のワザなのだ。


切った食材と調味料が届くヨシケイなどの宅配サービスも

一応は勧めてみたが、そもそも煮炊きが嫌いなんだから

案の定、これも無理。

最後の手段として宅配弁当もあるけど、お気に召すとは思えない。


もっと親しい人なら、たまには何か作って持って行くかもしれず

彼女にもう少し可愛げがあれば

専業主婦の底力を見せつけてやりたいところ。

が、さんざん馬鹿にされてきたので、その気は無い。

親切ごかしに差し入れをしても

こういう人はマズいだの何だのと絶対に文句を言うものだ。

関わらないに限る。

周囲の人たちも、同じ気持ちなのかも。


あ、そうか…

だから皆、彼女の周りには近づかなかったのだ。

それなのに私ときたら、一人で座る彼女に呼ばれては近づいて

馬鹿にされ放題だったわけか。

彼女は人を馬鹿にすることで、自身のストレスを解消していたのかもしれない。

何十年も経ってやっと気づく、このカラクリ。


カラクリといえば、「お金はあるのに店が無い」という

彼女の置かれた状況はどうだ。

まさか、お金はそのままに買う店を無くすとは。

なるほど、そう来たか…と思わずにはいられない。

「天はいつも、想像の先を行く」

面白いので、そう考えるのだ。

となるとこの先、私にはどんなカラクリが摘要されるのだろうか。

何だか怖いので、とりあえず口を慎もうかのぅ。

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4 コメント

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Unknown (ぎんど)
2024-02-21 19:49:44
その方 お金があるなら利便性の良い所へ引越しするしか無いような気がしますがどうなんでしょう?

私は娘の同級生の母親に貧乏人とバカにされました。
その辺の雑草や石ころですよ。
彼女自身はセレブ好きで金持ちでは無く自分がセレブだと思う人にすり寄っていくんですね。
私はどこが金持ちなのかよくわかりませんでしたが鼻が利いたんでしょうか?
因みに彼女がセレブ認定している人達から貧乏人という態度をとられたことはないです。
セレブのご主人が医療関係者やベンツに乗っているともう目がなくって本当に嬉しそうにすり寄ってました。
とにかく幼稚園時代 小学校の習い事 中学校では同じ役員になってしまいました。
またかと思ったらセレブしか目に入らず私が普通に
セレブと話をしてたら、この人は私が唾つけてるのよ!っといわんばかりの態度を取られたりで距離をおきました。
傲慢な人でした。
自分が見下す人間には気をつかわないんでしょうね。
結構腹を立てましたが子供が学校を卒業したら関係なくなってホッとしてます。

みりこんさん お体をたいせつに ヒロシさんも膝が良くなられるといいですね。
返信する
Unknown (みりこん〜ぎんどさんへ)
2024-02-22 12:54:36
利便性が良い所へ引っ越す!
その手があったか!笑

人を見下す人って、誰も自分を知らない新しい場所へ行くと
チュンタローなことが多いので
長く住んだ土地に固執しがち。
彼女はどっちなんでしょ。
今度言ってみます。

子供の同級生の親、面倒くさい人いますよね。
私もそういう人、苦手です。
だけど、どの子がどの学校行っても絶対いるのよ。

子供デビューと言うのか、子供に乗じて
過去の自分を消し、新しく生まれ変わって
理想の自分を演じようとする。
母親の方が子供より子供だから
すぐに馬脚をあらわすんだけど。
ぎんどさん、ウザかったですね。

ありがとうございます。
体に気をつけます。
ぎんどさんもね。
暖かくなってきたので、夫は膝がずいぶん楽そうです。
治ったらバドミントンへ行くと言っていますが
無理だと思います。
返信する
Unknown (まえこ)
2024-02-28 14:25:23
何だかにたような相談をさせて頂いた思い出があります。

そうそう、ジジババが
子守りと
小遣いと
習い事送迎(習い事の月謝と用品ももちろんジジババ負担)の
援護射撃してたりね。

そのくせ子ども会とかPTAの役員は上手いこと言って逃げるんですよね。

みりこんさんの記事に出てくるタイプの方、いますよ。
どこにでもいるんですね。やっぱり。
別に働くのは結構だけど、それでデカイツラすんなよって話ですよね。

うっざ。
返信する
Unknown (みりこん〜まえこさんへ)
2024-02-28 20:59:17
そうだそうだ〜!
働くのは自由だが、デカいツラはいらないぞ〜!

ジジババの援護射撃(笑)
本人にとっては子守りに含まれたサービスの一環なので
当たり前過ぎて考えもしないのだと思います。
どこにでもいるんですね。
働ける幸せに気づかない人。
もったいないことです。
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