殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

撃ち返し・1

2024年09月03日 10時47分06秒 | みりこん流

前回の記事、“始まりは4年前”のコメント欄で

しおやさんからお題をいただいた。

『このシリーズではじめてみりこんさんが

テンポよくぽんぽん言い返す技を使ってらっしゃるのに気づきました。

この技はほかに旦那さん息子さん義母さんすべてに

使われてるのでしょうか?

〜中略〜

旦那さん、息子さん、義母さん、お友達への

「撃ち返し」の使い分けなどありましたらいつかまたご教授ください』

 

お題をいただくって、ありがたいものなのよ。

「撃ち返し」って、いい言葉よね。

だからホイホイと引き受けたものの、皆さんご存知の通り

実は私、そんなに頭が良くないのよねん。

お教えするほどの技術も無いんだけど

おこがましくも、お話ししてみようと思います。

 

まず、私のコンセプトはこれ。

「自分の言ったことがテープレコーダーに録音されたとして

後から聞いて恥ずかしくないかどうかを考えて話す」。

 

これは父の教え。

自分の父親を立派げに持ち上げるつもりはないが

事実、彼は感情に任せて不用意な発言をしない男だった。

早い話が無口ってことよ。

無口なら、録音しようにもなかなかできんじゃないの。

 

無口なもんで、何を考えているかもわからないから

継母の仕打ちに耐える我々姉妹に、彼が気づいていたのかどうか

それもわからん。

そして我々姉妹は、大好きな父が悲しまないよう全力で耐えた。

男って、あてにならん…

妹は知らないけど、私はそう思って成長した。

 

ともあれ“録音あと聞き”の教えは、聞いていてよかったと思っている。

ただでさえ、きつい性格だ。

知らなければ、ちょっと気に入らないことがあると

罵詈雑言で周囲を苦しめただろうから、その歯止めになっている。

この教えが無かったら、仕事にも就けなかったと思う。

 

とはいえ夫の浮気が発覚して、めっちゃ腹が立った時は

ガンガン言った。

薄汚い嘘やアリバイ工作の大根劇に

私まで引っ張り出されて悪役を演じさせられる、この無念!

何年も後で聞いたら倒れそうな酷い言葉を言いまくった。

 

ナンボ言うても言うても、言い足りなかった。

足りないどころか、ますます言いたいことが出てきて止まらん。

人は家族から傷つけられた時、受けた傷そのものよりも

自分の発した言葉が自分自身を傷つけると知った。

 

で、夫の方は何を言っても馬耳東風。

改めたり反省するどころか、ますます悪事にのめり込んだ。

私の渾身の怒りは、女房のヒステリーという

もっともらしい言い訳を与えてしまうだけだった。

「自分の毒に自分が当たってちゃ、自滅じゃ」

そう思ってやめた。

疲れるし。

 

以後は短文勝負に路線変更。

そうよ、短ければ毒も薄いんじゃないの?…

録音したとしても、恥ずかしいのが早く終わるじゃん…

これに気づいた私は、短い言葉でいかに相手にダメージを与えるかを

考えるようになった。

 

しかし、努力も研鑽もいらんかった。

男の子を育てていると、自動的に言葉が簡潔になるからだ。

長々と話したって、男の子は聞いちゃくれないもん。

「いいじゃん!」、「やるね〜!」、「さすが!」

これだけ言ってれば、たいていはどうにかなるもんよ。

むしろ男は、これを聞くために生きているようなものかも。

 

「オカンと接触したら、長くなるからな〜」

という印象を普段から持たせないようにするのが

いざという時に話を聞いてもらえるコツ。

よって、滅多なことでは電話もLINEもしない。

そうしておかないと、アレらは肝心な時に話を聞かない。

もちろん彼らが助言を求めたり、彼らが話したい時は

いくらでも会話する。

 

あ、そうそう、夫とはLINE交換してない。

メール時代の経験上、相手を間違えて

愛の言葉を送られたら気持ち悪いから。

 

横着な私は、やがて夫もまとめて同じ扱いをするようになった。

するとじきに彼の行動について、何か言うのがかったるくなり

放置を決め込んだ。

しかし、息子たちと違う扱いが一つ。

「子供らに恥かかしたら、◯す」

これは言う。

このひと言で、こちらの気持ちも夫が今置かれている状況も

十分伝わる。

彼がそれをどう受け取るかは、自由だ。

最初は「あんたのやっとることは知っとる。

子供らに恥かかしたら…」だったけど、そのうち端折った。

 

子供にかこつけて、釘を刺しているのではない。

息子たちが大きくなってくると、本当にそれだけになるのだ。

私はどうでもいい。

こういう修羅暮らしも長くなると慣れちゃって

笑われようが何を言われようが構わなくなる。

しかし何の罪も無い息子たちが

「あの浮気者の子供」と言われるのは

実際に言われて嫌だったので、そうしたまでだ。

 

「長いはNG」

だから私は、そう認識して生活するようになった。

え?その割にあんたの文章は長ったらしいよねって?

反動ということにしてちょ。

 

ご質問では

『この技はほかに旦那さん息子さん義母さんすべてに

使われてるのでしょうか?

旦那さん、息子さん、義母さん、お友達への

「撃ち返し」の使い分けなどありましたら

いつかまたご教授ください』

ということなので、まず夫と息子のことをお話しして

次は義母についてだが、これは明らかに夫や息子とは使い分けている。

使い分けの理由は一つ。

自分の身を守るためである。

 

同居する義母ヨシコと、実家の母…私には二人の母がいるが

どっちも90才前後の高齢。

老婆は急にとんでもない用事を思いついては

他者にやらせようとする特徴を持つ。

アレらは自分が得や楽をしたり、ええカッコするためなら

他者がどうなろうとかまわないので始末が悪い。

 

できることならやるし、疲れも大変も諦めるが

うっかりイエスと言って行動したばっかりにトラブルになったり

成果が気に入らなくて文句を言われることも多々ある。

敵が本当は何を求め、どのような結果を期待しているか…

相手の発する最初のひと言で推理し

間髪入れず撃ち返さなければ、アレらの罠にはまり放題だ。

 

沈黙したり、言い訳を考えてグズグズしたら押し切られるので

確かにテンポは大事。

テンポよくポンポンと撃ち返しながら、だんだん話題をそらして行き

スピードに付いて来られなくなったアレらの神経が

別の方向へ向いたら、ようやく解放される。

 

このように神経を使わせるから、老人は嫌われるのだ。

夫と息子はリラックスできる相手なのでポンポン言わないが

油断ならん相手にはポンポンするのが、私の流儀である。

《続く》

コメント (2)
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