殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

撃ち返し・2

2024年09月04日 15時47分49秒 | みりこん流

夫と息子、そして義母の次は

友だちのことをお話しするつもりだが

その前にここでもお馴染み、お寺の嫁のユリちゃんを挙げよう。

隙あらば我々同級生に労働をさせようと画策する危険人物は

もはや友だちとは呼べないため、対応は老婆と同じだ。

 

彼女も電話やLINEで思わせぶりに謎かけをしたあげく

結局やらせたいのは料理。

思いもよらぬ導入から、うっかり暇な日を特定されて砂を噛む

バカな私よ。

 

が、やられてばかりはいられない。

ここしばらくは、手のかかり始めた実家の母サチコを口実に

料理の要請を何度か回避できたが

6月末に入院させて以来、また危険な誘いが増えてきた。

 

「消防点検の業者さんを知らない?

昔からお世話になってる業者さんに電話したら

もう廃業されていたの」

先日も、そう言って電話してきた。

お寺は人が集まる場所なので、消防設備の点検義務があるのだ。

 

夫と知り合いの業者を教えて終了かと思えば

例のごとく旦那の愚痴、姑や弟夫婦の愚痴へと続く。

私はこんなに可哀想なんですアピール

可哀想なんだから、少しは手伝ってくれていいでしょアピールだ。

突然、別件から入り、面白くもない話でジワジワと攻めて

目的の達成を目論む…

闇討ちのようなこの行為は、老婆そのものじゃないか。

 

サチコの世話から解放され

今の穏やかな生活を守りたい気持ちが強くなっていた私は

これを撃ち返した。

「あら、結婚って、相手の一族からバカにされることなんよ」

「え…」

「バカにされるのが結婚のスタンダードじゃけん

これで正しいんよ」

「そんな…」

「私もバカにされながら頑張っとるよ。

一緒に頑張ろ。

今日はユリちゃんと話せて楽しかった。

じゃあまたね!」

 

これで寺の労働は回避できたが、問題はサチコじゃ。

急きょ、今月末の退院が決まった。

ガ〜ン!!

鬱病は劇的に回復、ものすごく元気になっとるんじゃ。

あんなに元気になったら、退院するしかないそうじゃ。

恐るべし、サチコ!

今、相談員と、退院後の生活設計を話し合っているところ。

私の未来は暗黒よ。

さあ、笑ってくれ!楽しんでくれ!

 

 

…友だちに対する撃ち返しに、話を戻そう。

わたしゃ口だけは達者なので、言葉は機関銃のように出るけど

言っていいことと悪いことの区別については、はなはだ疑問が残る。

しかし今のところ支障は無いので、私は気にしない。

相手のこと?

もちろん考えない。

短くて済むんだから、我慢してもらう。

これでモメるような人物とは遊ばないので、友だちは少ない。

友だちは数じゃないので、十分だ。

 

ついでに行きずりの人に対する撃ち返しも、話しておきたいと思う。

以前、記事かコメント欄で話した記憶があるが

私史上、最高傑作だと自分では思っているので、また話したい。

 

30数年前のこと、仕事の一環で講習を受けることになった。

午前の講習が終わると、昼食のために一旦外へ出て

午後は別の会場に移動しての実技講習だ。

 

たまたま顔見知りの女性が講習に来ていたので

その人と二人で部屋を出ようとしたら

同じ講習を受けていた中年男性に声をかけられた。

「みりこんさん、お昼をご一緒しませんか?

それから午後の会場へ、一緒に連れて行ってください」

彼が私の名前を知っていたのは、講師が出欠を取ったからだと思う。

 

スラリとした長身に、着慣れた風のスーツ姿。

頭は少し薄めだが、見た目は決して悪くない。

が、女性ばかりの講習に男性一人の参加は浮いていたし

「お送りしますから、お昼をご一緒に」

ならわかるけど、車が無いのに見知らぬ女子を昼飯に誘い

その上、午後の会場へ連れて行けなんて

交通網が発展してないゆえに車社会の田舎では、普通じゃない。

いきなり名前を呼ばれたのも、ねっとりした話し方も気持ち悪い。

 

こいつは危ない…私のカンはささやいた。

知らない男の車に乗るのも危ないけど

知らない男を車に乗せるのも危ないはず。

だから、間髪入れず言った。

「あ、私の車、二人乗りなんですよ〜!」

 

ポカンと立ちすくむ男性をその場に残し

女性の手を引っ張って、ヘラヘラと笑いながら立ち去った私。

「二人乗りの車って、何?!軽トラ?!トロッコ?!」

後で、その女性と腹がよじれるほど笑い転げたものだ。

午後の実習に、その男性がいたかどうかは覚えてないが

相手を傷つけず、自分も傷つかず

その後、長く笑えるという意味において

30年以上を経た今でも、我ながら秀逸だったと思っている。

 

それから、これは近年の話だけど、実家の母がしばらくの間

“お菓子を配りたい病”に取り憑かれた。

これも認知症の一端なのかどうかは知らないけど

お気に入りの菓子屋(すごく遠い)へやたらと行きたがり

1個1,500円ぐらいのお気に入りの菓子(あんまり美味しくない)

をたくさん買い込んで、コーラスを始め趣味のお仲間や

ちょっとしたことでお世話になったという地元の人々に

配り回る行為を繰り返す。

もちろん全部、私の車で移動する前提だ。

お世話なら、私が一番していると思うんだけど

それはカウントされない模様。

いや、いらないよ、あのお菓子は。

 

行く家々の中には、私が地元を出た後で嫁いで来た人や

年取ってから故郷に帰って来た人など

我々の関係を知らない人もけっこういる。

だから母に付き添っている私を見て

「あら!この方が、ご自慢のお嬢さん?」

そう言われることがよくあった。

母の娘自慢は、地元じゃ知れ渡っているのだ。

 

「あ、自慢じゃない方の娘です〜」

だから、そう言ってやる。

「えっ?……」

母の娘が一人だと思い込んでいる相手は、そりゃ驚く。

目を見張って愕然とするレベル。

「ま!何を言うの、この子は…」

慌てる母。

うしし…こうして地味に溜飲を下げるんじゃ。

 

 

そういうわけで、華麗なる技なんて無くて

何の参考にもならないだろうけど

とりあえず“短い”を基本精神に据えていただけたら

短文勝負の技術がだんだん身についてくる。

そしたら頭の方が短い言葉に慣れて

言いたいことや言うべきことが、素早く簡潔に言えるようになる。

それが、“ポンポンと撃ち返す”ということだ。

ポンポンができれば、その都度、言い返せるので

ストレスは溜まらない。

 

かく言う私も未だに日々、訓練中。

つい長くなったり、口は達者なのに肝心なことを言わなかったり

反省することもあるわけよ。

話は短く、寿命は長く…そんな老婆を目指して頑張ります。

《完》

コメント (8)
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