殿は今夜もご乱心

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5年越しの戦い

2024年02月22日 15時20分59秒 | みりこんぐらし
昨年12月は、5年ぶりに運転免許の更新だった。

ゴールド免許を自慢しているわけではない。

遠くや知らない所へ行かない、できるだけ運転しない…

この精神で無事故無違反を継続しているだけなのはともかく

免許証の写真を撮ったのも5年ぶり。


5年前、証明写真のボックスで写真を撮った時は

ちょっと値段の高い「美肌モード」を選んだ。

その時、顔はまあまあに写ったけど、髪の方が今ひとつ。

美肌用の強いライトのせいだろう、髪が光によって飛んでしまい

ペチャンコに見えて不満だった。

そこで、今回はどうしようかなぁ…と思いつつ、ボックスの中の人となる。


が、5年の月日は私に冷たかった。

この近辺も外国人が増えて、証明写真のボックスは

複数の外国語の自動音声が内蔵されていたのだ。

どこでボタンを押し間違えたのか、説明が中国語になっちまったじゃないか。


日本語に変えようにも、自動音声の女は早口でまくし立てるばかりで

何を言うとるのかわからん。

ヒ〜!もはや美肌モードどころじゃない!

焦った私は一刻も早くここを出るために当てずっぽうで選択ボタンを押し続け

何とか写真は撮れた。


が、美肌モードでなく通常モードで撮った私は傷んだお婆さんでしかない。

髪はちゃんと残っているけど、何だか色黒で小ジワとたるみがバッチリよ。

5年前に撮って免許証に載っている写真と比べたら

「この5年で何があった?!」のレベル。

まあ、色々あったのは確かだけど、ここまで老けるとはね。

髪の写りなんかどうでもいいから、次の更新は絶対に美肌モードで撮ると誓う。

その前に、中国語のボタンをうっかり押さんことじゃな。

いや、また間違えたら恐ろしいので、写真屋さんへ行こう。



5年前といえば…いや、もう6年前になりそうだけど

2018年7月の西日本豪雨。

あれは私の住む町にも、大きな影響をもたらした。

我が家は庭や前の道路が浸水した程度で済んだものの

多くの家々が浸水や土砂崩れで被害に遭い、犠牲者まで出て

そりゃもう大変な騒ぎだった。


あれから約5年と8ヶ月…一部の山を除いて町はほとんど復興したが

我々一家は豪雨の後遺症とでも言うべき、ある問題を抱えることになった。

その問題とは、クマネズミ。

目の前にある川が豪雨で増水したため、生態系が変わったらしい…

それまで我が家に何十年も常駐していた小さな家ネズミがいなくなって

10センチ超の大きなクマネズミ数匹が棲みついてしまったのだ。


自然豊かな田舎のこと、小動物との共存は致し方ないと諦めているが

小柄で上品な家ネズミと違い、クマネズミ戦闘的で悪辣。

丸くて小さい可愛らしい耳をしているから

クマネズミと呼ばれるのかどうかは知らないが

可愛いのは耳だけで、身体は大きいし意地も悪い。

ヤツらのやらかす悪さは家ネズミの比ではなく

壁や柱をガリガリとかじり、夜中には天井裏でドタバタと大運動会。

家もメチャクチャになるが、サツマイモ大のアレらは体重が重たいので

うるさいんじゃ。


我々とて、手をこまねいて我慢ばかりしていたわけではない。

手始めに、ドブネズミ用の大きな粘着シートを仕掛けた。

すると一発で、最初の一匹がかかった。

クマネズミには違いないけど、ずいぶん小さい子供だ。

おぼこいので、罠にかかるというヘマをやったらしい。


これに気を良くした我々は、粘着シートを買い足してあちこちに仕掛ける。

犬がいるので滅多な所には置けず、場所を考えながら設置に励んだが

二度とかからなかった。


ちなみにペットが粘着シートにくっついてしまった時は

ペットに小麦粉をまぶすといいそうだ。

獣医さんから聞いた。


粘着シートがダメとなると、夫家に伝わるネズミ獲りのカゴの出番。

そのカゴは私が嫁いだ頃、すでにあった。

長方形の金属製のオリで、オリの奥にエサを引っかける針金がぶら下がっている。

ネズミがエサに誘われて、ぶら下がったエサを食べ

針金が動くとオリの入り口がガシャン!と閉まって生捕りになる手はず。


その後はどうするのかって?

カゴごと水に沈めて他界していただく。

ぐったりしたその子をオリから出して廃棄するのはキツい作業だが

家庭だけでなく、食品を扱う店などでも使われる古典的な罠。

この装置最大の長所は、薬品を使用しないので安全なところである。

我が家もこの装置で、これまで多くのネズミが処刑されてきた。


ともあれ誘うエサの手を変え品を変え、カゴを仕掛けて数日後。

少し大きいのが、かかった。

その時のエサは、ウインナーだったと思う。

しばらく裏の納屋へ置いていたが、そこを通るたびに

カゴの中からシャーッ!と喧嘩腰の態度。

やがて帰って来た夫が水の中へ沈め、さようなら。


一度かかった罠には二度とかからないのか、その後は何ヶ月も不作が続いた。

そこで今度は毒物。

古典的な赤いお米みたいなのやスプレー式などを色々試し

行き着いたのがこれ。



イカリ印の殺鼠剤、メリーネコ。

パッケージのイラストが可愛いので買ってみた。

写真は野ネズミ用だが、家ネズミ用もある。

私はクマネズミが野ネズミか家ネズミがわからなかったので、両方を買った。

中身は3センチ四方ぐらいの紙パックがたくさん。

その紙パックの中に、ネズミに良くない粒状の毒が入っていて

ネズミが食すると屋外で絶命するそうだ。


これは効いた。

家のあちこちに置いたら次々に3匹、庭の植木鉢や花壇の隅で息絶えていた。


気をよくしてメリーネコを買い足し、またあちこちにばらまく。

が、それっきり成果は無かった。

やっぱり同じ手には引っかからないみたい。

クマネズミは数々の危険を学習したらしく

我が家には、最も頭のいいラスボスが残った。


「一匹、賢くて大きいヤツがいる」

彼?を目撃したり被害を受けたりするうち

我々はそいつを『クマよし』という名前で呼ぶようになった。

クマよしはその後、何年にも渡って我々を苦しめるのだった。


もちろん、プロに退治してもらう方法もある。

事実、同級生のマミちゃんは自宅に野生動物が棲みつき

天井裏でおしっこをしたり、壁や柱に足跡をつけたりと悪さをするので

プロに駆除を依頼した。


捕獲された動物は、テンという生き物だった。

料金は50万円で、5年間の保証付き。

向こう5年の間に再びテンが棲みついたら、無料で駆除をしてくれるそうだ。

だけど5年なんて、あっという間よ。

マミちゃんの家は日本建築の豪邸なので、動物に傷められるのは困るだろうが

うちは古いボロ家。

値打ちが無いので、ネズミのために大金を払うのは惜しい。


粘着シート、ネズミ捕りのカゴ、そしてメリーネコ…

この3点セットで捕獲を試みる日々は続いた。

が、敵もさるもの、一向に引っかかる気配は無い。


そのうちクマよしはさらに賢くなって、あからさまな悪事をはたらくようになった。

インコに与えた小松菜を鳥かごから引っ張り出したり

義母ヨシコが隠しているお菓子をかじったり

チューブのハンドクリームに穴を開けていたこともあった。

ヤツは天井裏や壁の中というマイナーな箇所だけでなく

人間のテリトリーに踏み入ってきたのだ。

我が家での暮らしにも慣れ、調子に乗ってきたらしい。

が、人間だろうとネズミだろうと、調子に乗ると落とし穴に落ちやすいもの。

私はその瞬間を気長に待った。


そして先日、ついにその瞬間が訪れる。

まだ夜明け前の早朝、長男が台所へ行くとガサガサと音がしたという。

あんまりうるさいので音源を探すと

台所のフキン掛けにぶら下げたスーパーのポリ袋の中で

出られなくなったクマよしがもがいていたそうだ。


クマよしほどの“手だれ”なら、ポリ袋を噛み破って外へ出られたはずだが

大容量のホットケーキミックスが邪魔をして、逃走に時間がかかったらしい。

食べ物に手を出し始めたクマよしを危険視した私は

少し前からホットケーキミックスやお菓子類をポリ袋に入れて

高い所へぶら下げるようになっていたのだ。


長男は急いで袋の口を縛り、クマよしを車で会社へ連行。

ホットケーキミックスもろとも、焼却炉へ投入した。

長男の話によるとクマよしはかなり大きく、コロコロに太っていたそうだ。

あれから数日、我が家は静かな夜を過ごしている。

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