殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

推し

2024年07月09日 16時35分39秒 | みりこんぐらし

思い返せば少女の頃から

郷ひろみ、西条秀樹、野口五郎の新御三家にも心は動かず

アイドルの話で盛り上がるクラスメイトを眺めていた…

そんな私が64才にして、今流行りの『推し』ができた。

石丸伸二さん、41才…

言わずと知れた、先の東京都知事選に立候補した方である。

 

彼を知ったのは、広島県安芸高田市の市長になった時だ。

4年前、政治家の河井夫妻による贈収賄事件が発端。

妻の立候補に先駆け、夫の河井衆議院議員から

数十万円を受け取った前市長が早々に辞任したため

急きょ市長選が行われることになったのだ。

 

この選挙にまず立候補したのが

賄賂を受け取った前市長の腹心だった、当時の副市長。

あくまで噂だが、収賄罪で公民権を失った前市長の繋ぎとして

副市長が後任を引き継ぎ、公民権が復活する5年後には

再び前市長がカムバックする図が描かれていたという。

そもそも人口の少ない田舎において

政治をやろうかと考える人間はさらに少ない。

少数が権力を握り続けるために

このような道筋が引かれるのは珍しいことではない。

 

そこへ待ったをかけたのが、石丸さん。

この道筋を絶つべく

市長の給料よりずっと高給だったメガバンクを急きょ退職し

故郷の安芸高田市へ戻って市長選に立候補。

見事、当選をはたした。

 

ところが、それを快く思わない市会議員もいる。

高学歴、申し分ない前職、整った容貌、切れ味鋭い弁舌

そして30代という若さ…

彼らに無いものが、石丸さんにはあった。

それだけではなく、彼らなりの利権やしがらみもあったと思われるが

とにかく彼らは、若き新市長を認めるわけにはいかなかった。

しかも議会の様子をYouTubeで発信されるようになり

議会でおちおち居眠りもできなくなったのだ。

居心地が悪いではないか。

 

ともあれ時期は覚えてないが、石丸市長の名が

私の住む沿岸部にまで聞こえ始めたのは

彼が副市長を公募した頃である。

応募は全国からそこそこあり

選考を経て副市長の候補がほどなく決まった。

 

副市長の決定には、議会の承認が必要になる。

しかし問題は、この副市長候補が若い美人であること。

反市長派の議員は、徹底的に反対した。

完全無関係の私とて、その美人を何かで見た時は

「公費でお嫁さん候補を雇うつもり?」

と、かすかな疑いの目を持ったぐらいなので

石丸憎しの議員たちが、それを理由に反対しないわけがない。

 

炎上したあげく、美人副市長の話は流れたのだが

事情通に言わせると、渦中の美人は非常に優秀で

申し分ない経歴と能力をお持ちなのだそう。

つまるところ女石丸みたいな人で、色恋のレベルでは無いというのだ。

皆が皆、自分の旦那のようなのではない…

この優秀な2人がタッグを組むところを見たかった…

などと後でこっそり思う、卑怯な私である。

 

そんな贖罪の意味を込め、私は石丸さんを気にかけるようになった。

そうなると、知れば知るほど思うところがある。

まず、彼はうちの息子たちとほぼ同年代。

ああ、あの頃に生まれて、あのおもちゃで遊んで

ゲーム全盛期の中で育ったんだよな…

などと、うちのボンクラ息子と重ねてしまうのだ。

 

そして何より、知れば知るほど

私が4年に1回、ウグイスをやっている市議Y君と似ている。

年はY君の方が少し上で、もちろん顔も声も違うけど

どちらも国立大の経済学部卒だし、独身だし

礼儀正しくキビキビとした立ち居振る舞いが重なる。

他にも筋の通った弁が立つところ、孤独を恐れないところ

常に落ち着いているところ、親しくても馴れ合いにならず

誰に対しても同じ態度で接する紳士的なところ…

頭のいい子供がうまく育った成功例みたいなところが

よく似ているのだ。

 

都知事選でのウグイスを聞いていたら、それがよくわかる。

ウグイスが伸び伸びと、良い仕事をしている。

あの仕事ぶりは本人の実力も素晴らしいが

同じ車中にいる候補者が、明るい雰囲気を保つ紳士だからだ。

裏表のある、きつい候補者であれば

素人にはわからないだろうけど、わずかでも声が萎縮して

しゃべり出しに緊張感が出るはず。

実力が無いながらも伸び伸びやらせてもらっている私には

そう感じられる。

見たわけではないけど、その点も石丸さんとY君は似ているように思うのだ。

 

ただし、似ているから推しているわけではない。

Y君もそうだけど、頭のいい子は時として損をすることがある。

私は頭が良くなったことが無いので、えらそうなことは言えないし

頭のいい人は頭が悪くなったことが無いので、わからないだろうが

頭のいい人は冷淡だと誤解されやすく

その印象を避けるための努力すら無駄だと思っているので

アンチが生まれやすい。

 

実際、石丸さんがまだ安芸高田市長だった昨年10月

彼は趣味であるトライアスロンの大会に参加するため

休日を利用して私的に千葉県へと出向いた。

大会には出場したものの、その日は広島県に大きめの台風が接近していた。

 

「台風が近づいているというのに、趣味で地元を留守にした」

反石丸派の議員たちは、ここぞとばかりに追求。

しかし彼は、涼しい顔で言った。

「台風が上陸した時には、帰って来ていた」

 

それでは納得しない議員たちがなおも追求するので

彼は本心を述べた。

「トライアスロンには、富裕層の参加が多い。

そういう場所に行って富裕層の知り合いを増やすことで

地元のためになれば、という思いがある」

そう言われたら、何も言えないわね。

脳無しは、台風がまだ来ていないにもかかわらず

留守をしたと騒ぎ立てて恥をかき

脳ある鷹はその先を見ているので意に介さない…

両者のスタンスの違いを表す良い例だと思うが

Y君にもそんな所がある。

それを小気味良く思いつつも、向こうはいらないだろうが

こっちはつい手を差し伸べたくなる…

石丸さんにもY君にも、そんな親心みたいなものを感じる私なのである。

 

さて、今回の東京都知事選で、石丸さんは健闘された。

投票日まで、本当にワクワクと楽しませてもらった。

若い世代の関心を政治や選挙に向けさせたのは、大きな功績だ。

 

一方、意図的に石丸さんを報じないテレビだけを見て

SNSやらYouTubeを見ない年配層には浸透しにくかった。

ちゃんと選挙に行くのは、圧倒的に年寄りが多いのだ。

しかし多くの老人が石丸さんを知ったところで

得票には結びつかなかったかも。

若年層が対象の“教育“や、年配者の苦手な“改革”を訴えたからだ。

 

老人が聞きたいのは「高齢者は功労者」、「お年寄りが輝く都市作り」

などのリップサービス。

実行は伴わなくていいのだから、政治屋の得意とするところである。

なまじっか実行されて、老人施設なんかバンバン作られて

ジャンジャン放り込まれたら、困るのは老人だ。

 

石丸さんは石丸さんのまま、前進してもらいたい。

次は何をするのか、どこに立候補するのか、楽しみだ。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする