殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

お勝手相談室・他人の就職

2023年07月07日 10時36分09秒 | みりこんおばちゃんのお勝手相談室
先日、用があって、知り合いの久子ちゃんがうちに来た。

私より10才ぐらい年下の、50代の女性だ。


彼女は私と違って、心の美しい人である。

15年前ぐらいに相次いで亡くなった

お舅さんとお姑さんが大好きだったそうで

今でも義父母のことを話す時は涙声になるという珍種だ。


県外在住の義理親とは別居のままだったので

お互いに良い所しか見えてなかったのもあろうし

彼女の親友が、先にご主人の弟と結婚していて

義理親をあからさまに敬遠するので、兄嫁としての意地があった…

私はそう踏んでいる。

しかし彼女の美しい心の中では、実の親より好きだった…

ということになっているのだ。

いずれにしろ早めにいなくなると、こうしていつまでも慕われるらしい。


さて彼女は用が済むと、息子の話を聞いて欲しいと言った。

今、そのことで非常に辛い思いをしているという。


彼女の息子、A君は25才。

東京にある大学を卒業すると、そのまま東京で就職した。

勤務先はベンチャー企業。

職種も聞いたのだが、忘れてしまった。


A君は、やり手と評判の若い社長に心酔し、一生懸命働いた。

都会的な社長は、田舎育ちのA君にとって

素晴らしい人に見えたという。


将来は全国展開を予定している…

君を幹部にして、その管理を任せたい…

社長に言われたA君は、ますます一生懸命働いた。

早出残業代もボーナスも無く

仕事の合間には社長の運転手をさせられるなど

労働条件は良くなかったが、幹部への昇進を励みに寝る間も惜しんで働いた。


が、そのうち激務に耐えられなくなって退職。

半年前、失意のうちに帰郷した。

大学時代から一人暮らしに慣れているので、今さら親と住みたくない…

A君はそう言って地元にアパートを借り、仕事を探していた。

すると友だちが自分の勤務先を紹介してくれて、ほどなく再就職をはたす。


A君は3ヶ月の試用期間を経て、このほど正社員になった。

この会社は地元の企業だそうで

息子が近くに居てくれる心強さに、久子ちゃんはとても喜んだ。


しかしそれも束の間、新しく入った会社の東京支店に配属が決定。

せっかく近くへ帰って来たというのに

また東京へ行ってしまうとなると残念で仕方がなく

久子ちゃんはどうにも自分の気持ちに折り合いをつけられずに

悩んでいるのだった。


同じ東京なら、前の会社に居た方がよかったではないか…

前の会社の社長は有名な芸人やタレントと友だちのビッグな人…

運転手を務める時の息子は、それら芸能人と社長を車に乗せて

銀座や六本木へ行くこともよくあった…

だからあのまま社長の元で頑張っていれば

息子にも輝かしい未来が拓けたのではないか…

いそいそと上京の準備をするA君と、サバサバしたご主人を横目に

久子ちゃんはそんな思いにかられて、毎日苦しいのだという。


心美しき人は、悩みが多いものである。

心が美しい=経験値が低い…ということかもしれない。

涙を溜めて苦しみを吐露する久子ちゃんを

気の毒なような羨ましいような気持ちで眺めつつ、私は言った。

「芸能人とチャラチャラする社長に、ロクなのおらんよ」


「えっ?そうなんですか?」

驚く久子ちゃん。

「電波芸者は飲み食いさしてくれて、小遣いくれる人の所に集まるわいね。

そんなことするより、きちんと残業代払うたり

専属の運転手を雇うのが先じゃが。

お金の使い方を間違う人の会社は続かん。

辛抱しても倒産したら、責任押し付けられるよ」


「ええ〜?!」

呆然とする久子ちゃん。

「じゃあ…息子は…辞めて良かったんですか?」

「当たり前じゃん」

「そう言えば、息子が言ってました。

会社が恵比寿にあったけど、家賃がすごく高いって。

別に恵比寿じゃなくても仕事ができるんだから

そんな大金があったら残業代欲しいって、ボヤいたことがあります」

「地代の高い所に会社が無いと信用されんけん、無理をするんよ。

今どきは家賃の安い田舎に会社を構えて

浮いた経費を社員の福利厚生に使うようになってきとるんよ。

ベンチャーどころか、時代遅れじゃが」

「そういうものなんですか…」

「そういうものよ。

格好で仕事する人の所に長居をしても、あんまりいいこと無いけん

キッパリ諦めんさい」

「わかりました」

ホッとした顔になった久子ちゃんであった。


「ところで息子さんは、どこへ就職したん?」

私は彼女にたずねた。

「◯◯社…」

久子ちゃんは涙を拭きながら答える。

なんだ、ユータローのとこじゃんか。

同級生で唯一のセレブ、ユータローが

親から受け継いで社長をやっている会社だ。


そのことを言うと、久子ちゃんの顔がパッと明るくなった。

「本当ですか?!」

「本当よ。

彼の所だったら大丈夫。

ユータロー社長は、人の痛みがわかる子よ」

「そう言えば、息子も言ってました。

社長は温かい人だって」

「それがわかる子なら、絶対に大丈夫よ。

東京は大事な拠点じゃけん、わざわざ経費を使うて

バカを行かせるわけないじゃん(バカに経費を使う本社みたいな所もあるけど)。

大学も最初の就職も東京じゃったら安心して任せられるけん

行かせるんじゃが(多分)。

息子さんは期待されとるんよ(知らんけど)。

笑うて送り出してやり」

「それでいいんでしょうか…」

「いいんですっ!

出世して、社長の右腕として帰って来ますっ!(どうかわからんが)」

「わかりました!

これで気持ちの整理がつきました!

あの、社長さんに会うことがあったら

息子のことをよろしく言ってもらえませんか?」

「言っときます(同窓会は解散したから、会うかどうか知らんけど)」

「嬉しい!みりこんさんに話して、本当に良かった!」

「私も聞いて良かった。

息子さんに、社長を信じて頑張れって言っといて(我ながら無責任に呆れる)」

「はい!言っておきます!」


ありがとうございました〜…

手を振って帰る久子ちゃんを見送りながら

またいい加減なことを言ってしまったと反省した。

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43 コメント

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こういうお話になるといきいきキラキラとやってくるわたす (しおや)
2023-07-08 14:46:41
珍種wwww
久子さん、「怒りと諦めフォルダ」がたまる前に義父母様亡くなられたんですね。
実母義母のフォルダ、増え続けています。

理解不能。20代女子か?フォルダ

おんどれら批評するだけで動かんでよくてええのう!フォルダ

「80代にならないとあんたもわからないんよっ!」ハア?60代でもそう言っとったじゃんかフォルダ

増えることはあっても減ることはないです。これから続くのが怖いです。

もちろん良いことフォルダもありますが、今までとこれからの労力&気苦労で残念ながら相殺されてしまうんじゃ。

久子さん、息子さんもしっかりしていて経験も積んでええやん。なにを泣くことがあろうか。うちなんかうちなんか…ww
もう、デビ夫人の格言「私の敵が全部しぬまで生きます」だけを頼りに生きます。
返信する
Unknown (みりこん〜しおやさんへ)
2023-07-08 21:36:39
一字一句、うなずき過ぎて首ガクガクです。
怒りと諦めフォルダ、名言ですね!

うちもダブル母対応なので、大変さはよくわかります。
同じく「残念ながら相殺(笑)」の日々ですよ。

この頃は情で動かず、彼女らの持つ「業」ということで
あんまり考えずに事務的に片付けてる。
あの世へ行ったら、生きてる人に良い思い出を
思い出してもらったり語ってもらえると
待遇がいいって聞くけど…
反対に思い出したくもない、忘れたい案件になったら
けっこう厳しい環境になるらしくて
それは自分が人に強いて苦しめたのと同じ環境で
それを業が深いって言うんだけど…
この人らはあえて厳しい道を行くつもりなのね…
立派ね〜…とか思ってる。

「私の敵が全部死ぬまで生きます」
何度聞いても素晴らしいわ〜!
何だか力が湧きます。
頑張りましょうね!
返信する
Unknown (まえこ)
2023-07-11 07:57:45
久子ちゃん…
同居してない義両親は、
いくらでもいい人になるでしょう…
幸せな人生送ってきたんやなあと。
たまにこーゆー手合いに出会いますよね。
返信する
Unknown (みりこん〜まえこさんへ)
2023-07-11 09:57:15
手合い…プププ!
生涯お花畑の人、たまにいますよね。

お花畑にはお花畑なりの悩みがあるようで
これはこれで小さいことに悩まないといけないから
大変そうだな〜と思ってしまいます。
返信する
Unknown (まえこ)
2023-07-11 11:19:33
お花畑…!!
まさにそれ

知り合いの40歳がパート先の20歳の男の子に恋しててなかなか楽しそうです。
一方的な片思いだろうけど
無理だよって言うべきでしょうか
放置すべきでしょうか…
返信する
Unknown (まえこ)
2023-07-11 11:45:31
あ、知り合いはご主人と2人の子持ちです
返信する
Unknown (みりこん〜まえこさんへ)
2023-07-12 09:36:34
ほうほう…それは楽しそうですね!

同じ職場であれば、密かに観察する楽しみがあるけど
職場が違うと日々の観察ができませんから
楽しみは半減ですね。
「相談」と称して聞き苦しい片恋バナを
聞かされているというところでしょうか?

恋する人の脳内は、果てしなく広がるお花畑。
簡単に秘密を打ち明けては、共感してくれる人を
必死で探しています。
「無理」と言っても聞こえないでしょう。
さりとて放置したら、共感してくれていると
思い込んでノロケ話を聞かされる。
厄介なことです。

こういう人は甘ったれですから、人に迷惑かけることを
何とも思わない。
人によっては、否定されたことを逆恨みする場合も
あります。
秘密を知られている恐怖から、けっこうエグいこと
しますよ。
絶縁してもかまわなければ、無理と
はっきり言ってもいいと思います。

「共感して応援する」という向こうが望む反応を
するつもりが無いのであれば、アホ認定して
早めに距離を置く方がいいですね。
いくら純粋な片思いと飾っても、現実にやりたいことは
若い男のつまみ食い。
人生終わってます。
運も悪い、あるいはこれから悪くなる一方です。
この先、仲良くしてもロクなことは無いので
良い機会だと思います。
返信する
Unknown (まえこ)
2023-07-12 15:17:54
ありがとうございます。

うわぁ
バッサ斬り

しかし、刺さりますね

若い男のつまみ食い
→まさにそれ
確かに人生詰んでますよね
良いこと1つもないし

運気下がる
→嫌だ!!
ただでさえアレな私の運気が更に下がるなんて!!
即距離をおかないと。


みりこんさんは、
この手の悩みに強いんですよね。

甘ったれ…お花畑…
確かにこの手合いは
人生得してる組ですもんね、
何だかんだで。
ご本人はそれなりに過酷な人生送ってきたと言いたそうですが
その割にはつめがあまいと言うか…
ズレてるというか…

死ぬまで治らないのかなw

彼女がそんな片思いで悩んでる間

私はまつ毛エクステかまつ毛パーマかで悩んで1週間。
ショボい人生やなぁ。
返信する
Unknown (みりこん〜まえこさんへ)
2023-07-12 21:19:08
簡単に距離が置ける関係であれば、良かったです。
同僚や親しい友人だったら困りますもんね。

私はこの方面に強いというより、さんざん
やられてるんですよ。
この手の話を人に聞かせずにはいられない人間は
もれなくゲスです。
付き合い続けたら、いずれアリバイ工作に利用されるか
決裂して恨まれるだけ〜。

勝手にアリバイに使われて、誤解した旦那が
私の勤務先に怒鳴り込んできたこともあるし
話を聞くのを断ったら、とんでもない悪口を
言いふらされたりね。
色ボケは何するかわからんので、近寄らない方が
いいです。

そういう人に、過酷な人生談は付き物ですね〜。
私は苦労したんだから、恋したっていいでしょ?
ちょっとぐらい聞いてくれたっていいでしょ?
という言い訳のために、とりあえずの過酷が
必要になるんですわ。
言い訳でしかないんだから、詰めが甘く見えるのは
当然で、まえこさんの目は正しいと思います。

人間の人生って、おおむね過酷なものです。
楽そうに、得していそうに見える人でも
実はそうじゃないので、過酷をひけらかしても
免罪符にはなりません。

人の時間を奪い、薄汚い話を聞かせて迷惑をかけるより
まつエクかパーマかで悩む方が、よっぽど優雅で
素敵ですよ。
返信する
Unknown (ななしで。みりこんさんにはわかると思います…)
2024-05-29 11:43:47
こんにちは
ずっとブログ読ませて頂いています。
以前、兄弟の事について親身に教えて頂いてありがとうございました。
数値は高いですが、大丈夫な範囲みたいです。

そして、またまた相談なんです。なのでこちらの相談室に伺いました。

みりこんさんにお聞きしたい。というかお会いして泣きたいです。 どうしていいかわからないです。

旦那が恋愛感情をもっている女性がいて、その女性と今後もペアで仕事し続ける場合の、私の心構えを教えてください!

ペアというか部下が女性だということを1年半隠してました。
「実は女性なんだ」と言われた瞬間、好きなんだな。と確信しました。
旦那が全て仕事を1から教え、健気について来る女性を可愛いと思わないはずないです。そして仕事の山を二人で乗り越えました。
二人で現場などに何時間もドライブして行く事も多く、その間全く不愉快な思いをしたことないらしく、もしかして両想いかもしれません。親子ほどとし違うんですが。

「その人を女性として好きなの?」「違う」「みてたらそうとは思えないよ。こういう事にとしは関係ないんだよ」と言ったらハッとしていました。堅物なひとです。
普通に接しようと努力していますが、間欠泉のように怒りがこみ上げます
返信する

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