風邪を引いた。
2月にかかったインフルエンザほどの辛さは無い。
咳が出る程度。
原因ははっきりしている。
2週間ほど前、ズブ濡れになった。
あれからおかしい。
その日、義父アツシは病院から外泊で家に帰っていた。
以前は毎週だった外泊も、今は月に一度だ。
それはアツシが家に帰れる病状ではなくなったこともあるが
スタッフが手薄になる土日に、手のかかるアツシを外泊させて
調整したい病院の都合もあり
病院に近くて人手が多いという我が家の条件も考慮されて
割り出された回数だ。
外泊の送迎は介護タクシーに頼っていたが
そのうちアツシの病状では責任を負えないと
辞退をほのめかされた。
誰も責任を取ってくれなんて言わないが
全身麻痺のアツシを送迎するには、1人では難しい。
2人も出動させると、採算が取れないのが本音であろう。
そこでしばらくの間、夫が付いて行って2人で送迎していた。
やがてコツを覚えた夫は
シブシブやってもらうより自分1人でやろうと考え
友人が所有する介護カーを借りるようになった。
後部座席に車椅子が乗せられる軽自動車だ。
この方法で、今回もつつがなく外泊を終えるはずであった。
しかしアツシが病院に帰る夜
介護カーのバッテリーが上がって動かなくなった。
前日、アツシを連れて帰るのに使わせてもらった時
夫がライトを消し忘れたのだった。
病院へ戻る時間が迫っていたため、修理は明日ということにして
夫は帰って来た。
彼のドジは、今に始まったことではない。
ダンプの荷台を上げたまま走って電線を引っかけ
電柱をドミノ倒しにしたこともある。
対向車の知り合いに手を振った途端、前の車に追突したこともある。
どう言い聞かせたって、やるものはやる。
そして何をやらかしても、自分だけは無事なのだ。
謝って直せば済む失敗なら、むしろ喜ぶようでなければ
彼の妻なんかやっていけない。
私は確かに夫の浮気と戦ってきたとは思うが
それ以上に激しく戦ったのは
フジツなこの男が引き起こすウカツだったように思う。
ともあれ今夜中に病院へ戻らなければ、翌朝の透析に支障が出る。
我々は介護カー無しでの移動にチャレンジすることにした。
全く動けない人間を普通車に乗せるのが
こんなに大変だとは知らなかった。
しかも外は土砂降りだ。
ズブ濡れになって試行錯誤したあげく、夫が運転席から引っ張り上げ
私が足を持って押し込んで、どうにか助手席に突っ込む。
後部座席は無理。
姿勢を保つ力が無いので座れない。
寝かせようにもヒザが曲がらないため、シートの長さが足りない。
床ずれが痛まないよう、シートを倒した助手席に
半身で横たえるしかないのだ。
「手伝おうか?私が乗って、一緒に行こうか?」
乗せ終わった頃、化粧直しと着替えをすませた義母ヨシコが出てくる。
力を入れたら脱腸になる人に、何の手伝いができようか。
「いらんっ!」
夫と私が同時に叫んでドアを締める。
「んまあっ!」
怒るヨシコを置き去りにして、車は病院に向かった。
走ること数百メートル、何とか病院に着いたが
今度はアツシを車から降ろす作業がある。
土砂降りは続いている。
また雨に濡れながら、2人でアツシを引っ張り出す。
引っ張り出しながら車椅子に乗せる…
介護シロウトの我々には、この合わせ技が難しい。
駐車場で苦心さんたんする我々であった。
その様子を眺めながら発進した別の車が
ボコッと音を立てて街灯にぶつかった。
「じいちゃん!見れ!ぶつかったぞ!」
ようようアツシを乗せたばかりの車椅子を、問題の方角へ向けてやる。
ただでさえ濡れネズミの3人が
その物見高さゆえに、さらなる土砂降りをかぶったのは言うまでもない。
車は幸いたいしたことはなかったらしく、そのまま走り去った。
ズブ濡れになってエレベーターに乗り込み
3人で「ククク」と笑う。
病室に戻って寝かせたら、アツシのスネの皮がペロッとはがれて
血が滲んでいた。
車から出し入れする時、どこかで怪我をしたらしい。
痛くても我慢したのか、麻痺しているのでわからなかったのかは
定かではない。
翌日からアツシは、風邪で生死の境をさまよう。
とうとう殺害しちゃったか…と思ったけど、今週復活した。
アツシの熱が下がった頃、夫と私も風邪の症状が出た。
今も調子が良くないが、チンタラしてはいられない。
来週から選挙が始まる。
ウグイスは引退したはずじゃなかったのかって?
テヘペロ。
2月にかかったインフルエンザほどの辛さは無い。
咳が出る程度。
原因ははっきりしている。
2週間ほど前、ズブ濡れになった。
あれからおかしい。
その日、義父アツシは病院から外泊で家に帰っていた。
以前は毎週だった外泊も、今は月に一度だ。
それはアツシが家に帰れる病状ではなくなったこともあるが
スタッフが手薄になる土日に、手のかかるアツシを外泊させて
調整したい病院の都合もあり
病院に近くて人手が多いという我が家の条件も考慮されて
割り出された回数だ。
外泊の送迎は介護タクシーに頼っていたが
そのうちアツシの病状では責任を負えないと
辞退をほのめかされた。
誰も責任を取ってくれなんて言わないが
全身麻痺のアツシを送迎するには、1人では難しい。
2人も出動させると、採算が取れないのが本音であろう。
そこでしばらくの間、夫が付いて行って2人で送迎していた。
やがてコツを覚えた夫は
シブシブやってもらうより自分1人でやろうと考え
友人が所有する介護カーを借りるようになった。
後部座席に車椅子が乗せられる軽自動車だ。
この方法で、今回もつつがなく外泊を終えるはずであった。
しかしアツシが病院に帰る夜
介護カーのバッテリーが上がって動かなくなった。
前日、アツシを連れて帰るのに使わせてもらった時
夫がライトを消し忘れたのだった。
病院へ戻る時間が迫っていたため、修理は明日ということにして
夫は帰って来た。
彼のドジは、今に始まったことではない。
ダンプの荷台を上げたまま走って電線を引っかけ
電柱をドミノ倒しにしたこともある。
対向車の知り合いに手を振った途端、前の車に追突したこともある。
どう言い聞かせたって、やるものはやる。
そして何をやらかしても、自分だけは無事なのだ。
謝って直せば済む失敗なら、むしろ喜ぶようでなければ
彼の妻なんかやっていけない。
私は確かに夫の浮気と戦ってきたとは思うが
それ以上に激しく戦ったのは
フジツなこの男が引き起こすウカツだったように思う。
ともあれ今夜中に病院へ戻らなければ、翌朝の透析に支障が出る。
我々は介護カー無しでの移動にチャレンジすることにした。
全く動けない人間を普通車に乗せるのが
こんなに大変だとは知らなかった。
しかも外は土砂降りだ。
ズブ濡れになって試行錯誤したあげく、夫が運転席から引っ張り上げ
私が足を持って押し込んで、どうにか助手席に突っ込む。
後部座席は無理。
姿勢を保つ力が無いので座れない。
寝かせようにもヒザが曲がらないため、シートの長さが足りない。
床ずれが痛まないよう、シートを倒した助手席に
半身で横たえるしかないのだ。
「手伝おうか?私が乗って、一緒に行こうか?」
乗せ終わった頃、化粧直しと着替えをすませた義母ヨシコが出てくる。
力を入れたら脱腸になる人に、何の手伝いができようか。
「いらんっ!」
夫と私が同時に叫んでドアを締める。
「んまあっ!」
怒るヨシコを置き去りにして、車は病院に向かった。
走ること数百メートル、何とか病院に着いたが
今度はアツシを車から降ろす作業がある。
土砂降りは続いている。
また雨に濡れながら、2人でアツシを引っ張り出す。
引っ張り出しながら車椅子に乗せる…
介護シロウトの我々には、この合わせ技が難しい。
駐車場で苦心さんたんする我々であった。
その様子を眺めながら発進した別の車が
ボコッと音を立てて街灯にぶつかった。
「じいちゃん!見れ!ぶつかったぞ!」
ようようアツシを乗せたばかりの車椅子を、問題の方角へ向けてやる。
ただでさえ濡れネズミの3人が
その物見高さゆえに、さらなる土砂降りをかぶったのは言うまでもない。
車は幸いたいしたことはなかったらしく、そのまま走り去った。
ズブ濡れになってエレベーターに乗り込み
3人で「ククク」と笑う。
病室に戻って寝かせたら、アツシのスネの皮がペロッとはがれて
血が滲んでいた。
車から出し入れする時、どこかで怪我をしたらしい。
痛くても我慢したのか、麻痺しているのでわからなかったのかは
定かではない。
翌日からアツシは、風邪で生死の境をさまよう。
とうとう殺害しちゃったか…と思ったけど、今週復活した。
アツシの熱が下がった頃、夫と私も風邪の症状が出た。
今も調子が良くないが、チンタラしてはいられない。
来週から選挙が始まる。
ウグイスは引退したはずじゃなかったのかって?
テヘペロ。