殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

打つ・買う・飲む

2014年10月31日 10時18分37秒 | みりこんぐらし
「おみやげ」

選挙用。

爪先がバレエのトウシューズみたいな所が気に入りました。




先日、同級生のケイちゃんと2人で

やはり同級生のユリちゃんが住む町に出かけた。

3人で、とっておきの秋の一日を過ごすのだ。


今回の旅の目的は、もう一つある。

私はユリちゃんの嫁ぎ先であるお寺に出家して、老後を過ごす予定だが

ここにケイちゃんを誘うつもりで下見に案内したのだった。


ケイちゃんは離婚して長い。

ずっと一人暮らしだ。

仕事と、老いた両親の世話に通いながら暮らしている。


彼女は大変な綺麗好き。

たとえ「突撃お宅訪問」や「隣の晩ごはん」の撮影隊が来ても

にっこりお通しできる、数少ない人である。


老後をユリ寺で過ごす予定のメンバーは

家主のユリちゃんを筆頭に、私もマミちゃんも

掃除はあんまり得意じゃない分野。

バリバリの掃除好きが一人は欲しいということで

強制的にケイちゃんを引き入れることにしたのだった。


我々はケイちゃんに建物を案内する。

「ここが今、モクネン(ユリちゃんの夫)のお母さんが住む離れ。

数年後には空く予定。

あっちは現在空いている離れ。

そっちに見える建物も、空き部屋。

我々はここに分散して入居予定。

ゴールドの豪華なインテリアをご希望なら

永代供養の位牌を祀る部屋」


ケイちゃんはお寺をすっかり気に入った。

「私は一人ぼっちになるのが決まってるんだから、嬉しいわ!

もう老後を恐れなくていいのね!」

喜ぶケイちゃんに満足するユリちゃんと私。


「でも、1人で掃除するのはきついから手伝ってよね」

ケイちゃんは心配そうに言う。

「当たり前じゃん。

ケイちゃんは掃除係じゃないのよ、クリーン部門の部長よ」

ダラダラ部門の部長に就任予定の私は言う。

「わかった、それで手を打とうじゃないの」

ケイちゃんは部長のポストに気を良くしてうなづいた。


話がまとまったところで、買い物に繰り出す。

なにしろユリ寺は、繁華街のすぐ近く。

ここ数年、ユリ寺訪問のたびに靴を買う。

商店街にお気に入りの靴屋があるのじゃ。

普通のおばさんが1人でやっている小さな古い店で

品数も少ないのに必ず私の感性と必要性にヒットする靴がある

不思議な店なのじゃ。


今回は選挙用の運動靴を買う。

選挙運動だから運動靴。

スニーカーじゃあ脱ぎ履きに手間がかかるし、芸が無い。

楽で、品性とおしゃれ感がさりげなく漂うものが望ましい。

楽はともかく、持ち主の品性に疑問は残るが

今回はこれで出陣じゃ~!


後は飲む。

ユリちゃんの案内で、予約が取りにくいという人気店に行く。

私は最近、赤ワイン。

何のウンチクもありゃしないし、ポリフェノールにも無関心。

回りが早いという効率の良さが選択ポイント。

白でもいいのだが、見た目もくすんできた今日この頃

せめてテーブルに彩りが欲しい。


日本酒の好きなユリちゃんと、下戸のケイちゃん

3人のおしゃべりは尽きない。

あっという間に時間が経ってしまう。

近いうちにまた来る約束をし、ケイちゃんの運転で家路につく。


家に着いたら10時半だった。

珍しく玄関の明かりが点いている。

うちの玄関はガラス張りなので、中がよく見えるのだ。


おっ!鍵もかかっていない。

どうしたことだ!

私の夜遊びには、義母ヨシコによる

玄関真っ暗・施錠の刑がセットで付くはずだが

ヨシコ、具合でも悪いのか?


台所に行くと、テレビを見ていた夫が「お帰り」と言った。

近年は早朝デートのために早寝をする夫が

この時間に起きているのは珍しい。

「待っててくれたの?」

「うん、お袋が鍵をかけないように番をしてた」

「ありがとう」

「楽しかった?」

「うん、とっても」

買って来たお菓子なんぞ披露する私。

ハートほっこり、穏やかな夫婦の時間が流れゆく…。



これで終わらないのが我が家。

私は先月のことを思い出したのだ。


玄関真っ暗・施錠の刑は、昔からヨシコが行う伝統の刑。

「つい習慣が出た」

「もう帰っているのかと思った」

「一人だと怖い」

ヨシコの言い訳はさまざまだが、何だかんだいったって

夜遊びをする嫁へのこらしめであり、楽しんだ者への嫉妬である。


刑には慣れっこ。

しかし先月、刑が執行された時

トイレに行きたかった私は烈火のごとく怒り狂った。

いつも気をつけているのに、この日は油断があった。

「この次やったら、殺す!」

トイレから出るなりつぶやいた私の前に、夫がいた。


夫も多分、それを覚えていたと思う。

となると、彼はヨシコの刑から私を救おうとしたのではなく

ヨシコを私の殺意から守ったことになる。

どっちでもいいけど、親思いのいい人なのは本当だ。
コメント (8)
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