殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

フグ

2009年10月30日 08時38分59秒 | みりこん胃袋物語


秋も深まってきた。

冬が近い。

フグの季節がやってくる。


大好物のフグ…。

その中で最も愛する白子…。

この味を九州の仲居時代に覚えてしまった。


私の居た地域は価格も手ごろで、扱う店も多かった。

皆さん焼き肉と同じノリで、わりと気軽にフグを食す。

一介の仲居とて「勉強」と称してフグを食べに行った。


勤めていた店でも出していた。

フグのさばかれるありさまは痛々しい。

イケスから連行され、まな板の上に寝かされた彼(彼女?)…。

これから訪れるであろう運命を甘受するかのような

そりゃもういさぎよい横たわりっぷり。


まず何をされるかというと

突き出たお口をバッサリ切り落とされる。

歯が鋭いので、まず板前の安全を確保するらしい。


イテテテ…思わず自分の口に手を当て、つぶやいてしまう。

絶対フグに生まれたくない…強く願う。

すまんのぅ…フグ。


それから各部位に分けられ

ガーゼに包まれて、冷蔵庫へ安置。

困った部分は鍵のついたステンレスのケースへ。

ヒレは大きな板に標本のように貼り付けられる。

乾燥させてヒレ酒になるのだ。


おっと!ヒレ酒もこたえられん!

陶器のコップの底にヒレを数枚…

そこへ熱燗をなみなみと注ぎ、塩をひとつまみ。

対のフタをして、飲む前に開け

すかさずマッチで火をつける。

ポッ…と一瞬酒が燃える。

適度にアルコールが抜け、口いっぱいにひろがる香ばしさとうまみ。

カ~ッ!日本に生まれてよかったばい!


白子に戻ろう…

白い明太子みたいな形状をまるごと火葬…

いや、塩焼きにしてもらう。

そっけないほどクセの無い、とろりとした食感、滋味、甘み。

本来の役割りをかんがみれば

これほど期待を裏切ったまろやかな美味があろうか。


フグ刺しから少し遅れてご登場まします

荘厳かつシンプルなお姿に、思わずコウベを垂れるワタクシ。

主役を引き立てながらも、しっかり個性を光らせて引き締める…

そうね…まるでアイドル主演ドラマの脇を固める市原悦子。


こちらは白子どころか、フグそのものがあまり出回らない。

いくら好きだと言っても

スーパーのパック入り刺身や鍋セットは買わない。

もどきはいやじゃ。

気休めはいやじゃ。

目指すは天然トラフグじゃ~!


よって、免許のある料理屋に頼んで取り寄せてもらい

食べに行く。

家で通販という手もあるが、せっかくのフグ…

プロの手でふるまわれたい。

日頃つつましく暮らしているのだ…それくらいは許されるはずだ。


もちろん現地へ赴くに越したことはない。

だがセコい私は、旅費でもう1~2回食べられると考える。

今年も無事に生き延びて、フグと再会するんじゃ。


惜しむらくは、同行者。

家族はフグに興味を示さないので、相手は友人となる。

できればあんたじゃなくて、ステキな男性と座敷でしっぽり…

なんてことになりたいものだ…

いつもそう言い合う。

しかもそのおかたのオゴリであれば、言うこと無し。


フグの時だけは、なぜかそう思う。

フグの身の清廉な白さが

生々しさを昇華してくれるような気がする。


しかし貞淑な私は心配でもある。

フグの精巣(せいそう)という一種ハシタナげな食品に

目の色を変えて飛びつくワタクシをごらんになって

そのおかたは何とお思いになるであろうか。

スッポンを食べるのと、どっちがモンダイであろうか…。


“妄想に 胸を痛める 秋の空    

      そんな心配 デキてからしろ”  



あ、仲居の時、お座敷で作っていましたけれど

フグちりの後の雑炊は

少なめのごはんをサッと水洗いするのがコツです。                                 
コメント (12)
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