殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

妖怪カタリ

2009年10月15日 10時44分04秒 | みりこんぐらし


そいつは、夜にやって来る。

寝ようとすると、忍び足でやって来る。


いつの間にか私の部屋に入り込み

おごそかな儀式のように

ピシャッ…

パタン…

ドアや窓を閉めて、部屋を密室にする。


テレビが消され

部屋はにわかに夜半の静けさに包まれる。


煌々と灯る明かりの下

そいつは私の顔をのぞき込んでニヤリと笑う。

そして低い声でこう言う。

「さあ…奥さん…語ろうか」


「語ろうか」と言っても

しゃべるのはほとんどそいつだ。

とりとめのない話が延々と続く。


うつらうつらすると、お腹の肉をつまむ。

「奥さん、このアブラミはどうするつもりだね?ええ?」

と厳しく追求される。


「今日の弁当にゆで卵が入ってなかったぞ」

苦情も忘れない。

おまえは板東英二か…。


ひとしきり語ると、何か食わせろと要求する。

せっかく片付けたキッチンへ行き

しぶしぶ夜食を作る。


食べ終えると

「じゃ」

と言って立ち上がり

悠々と去って行く。


週に一度はやって来る。

妖怪カタリ…次男のことである。
コメント (18)
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