2ヶ月ほど前、用があって夫と一緒に取引先へ出向いた。
私までくっついて行くことはないのだが
そこは都会で、私はその街にある楽器店が目当てだった。
地元の同級生でバンドを結成することになり
担当するアルトサックスを見たかったのだ。
取引先といっても遠いので、仕事上のつきあいは少ないのだが
その会社の2代目社長と、夫とは同い年で昔から仲がいい。
とても歓迎してくれ、初対面の私は
自社ビルの中を案内してもらうことになった。
終始レディファーストで、優しく誠実な感じ。
「すごいですね~」の社交辞令にも
「親が建てたものだから…ボクはそこへ居させてもらってるだけです」
と謙虚で、これまたいい感じ。
そのうち子供の話になる。
うちに生息するのは、うれしげにしゃべるほどの作品でもないので
早めに切り上げて質問などしてみる。
「社長さんのお子さんはおいくつですの?」
「高校2年です」
「まあ、お一人?」
「いえ…二人です」
「双子さん!男の子?女の子?」
「…両方です…」
「いっぺんに両方?ステキですね!」
短い沈黙が流れた後
誠実な彼は、たいへん言いにくそうに言う。
「いや…あの…連れ子同士です…」
「…ま…まあ~!ステキ!」
うう…どうやら聞いてはいけないことを聞いてしまったらしい。
「…2年前に再婚しまして…」
「わ…わぁ~…ステキ…」
「学校行事で知り合ったもんですから、嫁さんの子供も同い年で…」
「…あ…らぁ…ステキ…」
何がステキなのか、私もようわからん。
が、ステキを連発してテンションを保つしかないっ!
途中でやめたら、それこそドツボだ。
ちょっと前にも初対面の人に「お子さんは?」と聞いてしまい
「旅立ちました…」と答えられて
アチャ~!と思ったばかりだというのに。
バカバカ!みりこんのバカ!
「じ…じゃあ、これから受験が大変ですね」
「そうなんですよ~。ダブルですからね~」
やっと脱出。
ふぅ~!
夫は帰り道に、笑いながら言う。
「おまえ、よくあんなこと聞いたな。
途中で話を切ろうとしたけど、あの雰囲気にオレの実力じゃあ
入れなかったよ」
ズキッ…。
「バツイチの女とデキて、不倫がばれて離婚したんだぞ。
子供は3人いて、跡取りの男の子だけ置くことになったけど
大モメしたんだ。
子供の学校で知り合ったのは、オレも初耳だったね」
「知らねぇわっ!」
余計なことを聞いて自分のオバタリアンぶりを恥じた私は
頑固に開き直る。
誠実なのは態度だけで、心は不実だったのねっ!
金持ちだから相手も離れやしないわっ!
将軍様じゃあるまいし、な~にが跡取りじゃ!
子供を裂いてまで続けるほどの会社か!
勘違いもたいがいにせいっ!
「聞かれたくなければ、言えないことをしなければええんじゃ!
不倫の末に再婚しましたから聞かないでくださいって
首からぶら下げときゃええんじゃ!」
勢いはおさまらず
「あんな会社、つぶれるわいっ!」
と、さんざん毒づきながら帰った。
…先日、本当に倒産してしまった。
大きいだけに、融資が止まるといきなりであった。
後味悪っ!
先妻の実家が裕福なので
離婚していなければ保証の面で活路があっただろう…という業界の噂に
意地の悪い私は少々胸がすいた。
私までくっついて行くことはないのだが
そこは都会で、私はその街にある楽器店が目当てだった。
地元の同級生でバンドを結成することになり
担当するアルトサックスを見たかったのだ。
取引先といっても遠いので、仕事上のつきあいは少ないのだが
その会社の2代目社長と、夫とは同い年で昔から仲がいい。
とても歓迎してくれ、初対面の私は
自社ビルの中を案内してもらうことになった。
終始レディファーストで、優しく誠実な感じ。
「すごいですね~」の社交辞令にも
「親が建てたものだから…ボクはそこへ居させてもらってるだけです」
と謙虚で、これまたいい感じ。
そのうち子供の話になる。
うちに生息するのは、うれしげにしゃべるほどの作品でもないので
早めに切り上げて質問などしてみる。
「社長さんのお子さんはおいくつですの?」
「高校2年です」
「まあ、お一人?」
「いえ…二人です」
「双子さん!男の子?女の子?」
「…両方です…」
「いっぺんに両方?ステキですね!」
短い沈黙が流れた後
誠実な彼は、たいへん言いにくそうに言う。
「いや…あの…連れ子同士です…」
「…ま…まあ~!ステキ!」
うう…どうやら聞いてはいけないことを聞いてしまったらしい。
「…2年前に再婚しまして…」
「わ…わぁ~…ステキ…」
「学校行事で知り合ったもんですから、嫁さんの子供も同い年で…」
「…あ…らぁ…ステキ…」
何がステキなのか、私もようわからん。
が、ステキを連発してテンションを保つしかないっ!
途中でやめたら、それこそドツボだ。
ちょっと前にも初対面の人に「お子さんは?」と聞いてしまい
「旅立ちました…」と答えられて
アチャ~!と思ったばかりだというのに。
バカバカ!みりこんのバカ!
「じ…じゃあ、これから受験が大変ですね」
「そうなんですよ~。ダブルですからね~」
やっと脱出。
ふぅ~!
夫は帰り道に、笑いながら言う。
「おまえ、よくあんなこと聞いたな。
途中で話を切ろうとしたけど、あの雰囲気にオレの実力じゃあ
入れなかったよ」
ズキッ…。
「バツイチの女とデキて、不倫がばれて離婚したんだぞ。
子供は3人いて、跡取りの男の子だけ置くことになったけど
大モメしたんだ。
子供の学校で知り合ったのは、オレも初耳だったね」
「知らねぇわっ!」
余計なことを聞いて自分のオバタリアンぶりを恥じた私は
頑固に開き直る。
誠実なのは態度だけで、心は不実だったのねっ!
金持ちだから相手も離れやしないわっ!
将軍様じゃあるまいし、な~にが跡取りじゃ!
子供を裂いてまで続けるほどの会社か!
勘違いもたいがいにせいっ!
「聞かれたくなければ、言えないことをしなければええんじゃ!
不倫の末に再婚しましたから聞かないでくださいって
首からぶら下げときゃええんじゃ!」
勢いはおさまらず
「あんな会社、つぶれるわいっ!」
と、さんざん毒づきながら帰った。
…先日、本当に倒産してしまった。
大きいだけに、融資が止まるといきなりであった。
後味悪っ!
先妻の実家が裕福なので
離婚していなければ保証の面で活路があっただろう…という業界の噂に
意地の悪い私は少々胸がすいた。