殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

聞いてはいけない

2009年08月11日 13時20分25秒 | みりこんぐらし
2ヶ月ほど前、用があって夫と一緒に取引先へ出向いた。

私までくっついて行くことはないのだが

そこは都会で、私はその街にある楽器店が目当てだった。

地元の同級生でバンドを結成することになり

担当するアルトサックスを見たかったのだ。


取引先といっても遠いので、仕事上のつきあいは少ないのだが

その会社の2代目社長と、夫とは同い年で昔から仲がいい。

とても歓迎してくれ、初対面の私は

自社ビルの中を案内してもらうことになった。

終始レディファーストで、優しく誠実な感じ。


「すごいですね~」の社交辞令にも

「親が建てたものだから…ボクはそこへ居させてもらってるだけです」

と謙虚で、これまたいい感じ。


そのうち子供の話になる。

うちに生息するのは、うれしげにしゃべるほどの作品でもないので

早めに切り上げて質問などしてみる。


       「社長さんのお子さんはおいくつですの?」

「高校2年です」

       「まあ、お一人?」

「いえ…二人です」

       「双子さん!男の子?女の子?」

「…両方です…」

       「いっぺんに両方?ステキですね!」


短い沈黙が流れた後

誠実な彼は、たいへん言いにくそうに言う。

「いや…あの…連れ子同士です…」

       「…ま…まあ~!ステキ!」

うう…どうやら聞いてはいけないことを聞いてしまったらしい。


「…2年前に再婚しまして…」

       「わ…わぁ~…ステキ…」

「学校行事で知り合ったもんですから、嫁さんの子供も同い年で…」

       「…あ…らぁ…ステキ…」


何がステキなのか、私もようわからん。

が、ステキを連発してテンションを保つしかないっ!

途中でやめたら、それこそドツボだ。


ちょっと前にも初対面の人に「お子さんは?」と聞いてしまい

「旅立ちました…」と答えられて

アチャ~!と思ったばかりだというのに。

バカバカ!みりこんのバカ!


    「じ…じゃあ、これから受験が大変ですね」

「そうなんですよ~。ダブルですからね~」

やっと脱出。

ふぅ~!


夫は帰り道に、笑いながら言う。

「おまえ、よくあんなこと聞いたな。 

 途中で話を切ろうとしたけど、あの雰囲気にオレの実力じゃあ

 入れなかったよ」

ズキッ…。


「バツイチの女とデキて、不倫がばれて離婚したんだぞ。

 子供は3人いて、跡取りの男の子だけ置くことになったけど

 大モメしたんだ。

 子供の学校で知り合ったのは、オレも初耳だったね」


       「知らねぇわっ!」

余計なことを聞いて自分のオバタリアンぶりを恥じた私は

頑固に開き直る。


誠実なのは態度だけで、心は不実だったのねっ!

金持ちだから相手も離れやしないわっ!

将軍様じゃあるまいし、な~にが跡取りじゃ!

子供を裂いてまで続けるほどの会社か!

勘違いもたいがいにせいっ!


    「聞かれたくなければ、言えないことをしなければええんじゃ!

     不倫の末に再婚しましたから聞かないでくださいって

     首からぶら下げときゃええんじゃ!」

勢いはおさまらず

    「あんな会社、つぶれるわいっ!」

と、さんざん毒づきながら帰った。


…先日、本当に倒産してしまった。

大きいだけに、融資が止まるといきなりであった。

後味悪っ!

先妻の実家が裕福なので

離婚していなければ保証の面で活路があっただろう…という業界の噂に

意地の悪い私は少々胸がすいた。
コメント (12)
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