殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

お金の話

2009年06月11日 13時59分23秒 | みりこんぐらし
たぶん私は、節約好きな質実剛健主婦と思われている。

違ってはいないが、夫の浮気に耐えながら爪に火をともすような暮らしの中

二人の息子を育て上げた努力の人…というわけではない。

元々は、おのれの容姿もかえりみず

ブランド好きで見栄っ張りのお軽い女だ。


嫁いだ先も悪かった。

今がザンネンな者は過去のことをよく言うが、私もそのクチだ。

まさに衣食住に浪費をいとわない、私好みの家庭だったので

衣類や宝石など、多少の恩恵にも預かった。


雲行きが怪しくなってきたのは

やはり義父と夫が競うように浮気をしていた頃だった。

バブル全盛期とはいえ、夫の不始末で大きな仕事を逃したことから始まる。


当然独占できるはずの公共事業だった。

規制が厳しくなり始めた頃で

現場を仕切るためには、国からのとある許可が必要だという。

許可申請の行程は順調に進み

夫は最終的に支払う手数料を持って、司法書士の事務所へ行くはずだった。


しかし、夫はその日に行かなかった。

司法書士の事務所と、愛人のアパートが近所だったのがいけなかった。

ついでに泊まっただけでなく、手数料を使い込んで手続きが遅れた。


困ったことに正月が近かった。

日にちは充分あると踏んでいたのに

お金を使ってしまったと告白する決心をするまでに数日を擁し

世間は完全に正月休みに入ってしまった。


結果、期日までに間に合わず、工事の参入は不可能となった。

数年は続くであろうその仕事を見越して購入していた

車両や土地の購入がことごとく借金に変わった。


それが岐路と言えるかもしれないが

そんなバカ息子を取締役に据えて疑問を抱かない会社だ。

遅かれ早かれ、同じ事態になっていたと思う。


資金繰りが厳しくなり、元々多くない給料が減った。

経費でナントカしてもらっていた範囲がぐっと狭まる。

バブルがはじける前に、バブル崩壊体験!

時代の先取りだ~い!


逃避からか、義父と夫の道楽は会社の辿る下降線と反比例してひどくなり

ますます困窮していった。

その辺から序々にではあるが

噂に聞く、かの有名な「貧乏」というものが

少しずつ理解できるようになってきた。


それで節約するようになったのかというと、そうではない。

そんな事態になる少し前…

あれは、誰でも知っている通信電話会社が

まだ公的機関だった頃のことだ。

もうすぐ民間になるという話はあったものの

子育て真っ最中の私は、気にもしていなかった。


知り合いだったそこの職員が、展示会の案内状をくれた。

つきあいで出かけたら

発売されたばかりの「テレホンカード」なるものが展示されていた。


最終日の夕方、閉会間際に行ったのだが

田舎ではまだ知名度が無いため、大量に売れ残っていた。

知り合いはつぶやいた。

「残った分を自腹で買わされるかもしれない…」


私は同情してしまい、無いお金をはたいて何十枚も買った。

後で思えば、私なんかより

公務員だったその人のほうがよっぽどお金持ちなのだ。

とんでもないバカなことをした…と後悔したが、あとの祭である。


やがて、電○公社はN○Tとなった。

さらに数年して、空前のテレカブームがやってきた。

今となっては誰も見向きもしないが

猫も杓子もテレホンカードを集めて喜んでいた時代があった。

旧公社のカードは、収集家なら喉から手が出るほど欲しいものだと言う。


輪ゴムでくくり、何年もタンスの奥に突っ込んでいたアレ…。

目に映るたびに、ええ格好しぃの向こう見ずな我が身を呪い

バカを後悔していた、いましめのカードの束…。


半信半疑で、こういうものを扱っている知人にまとめて売った。

ごく初期のものだった数十枚のカードは

少々のまとまった金額を私にもたらした。


その後、なけなしの貯金と合わせ

とある芝生の上で行う球技の、とある権利を一回だけ転がした。


同じ手法は二度と使わないのが私の主義である。

またそれをタネ銭にして…と損したり、得したりしながら

夫の収入が女性のところへ注がれていた数年も含め

それで乗り切った。

たいした金額ではなかったが、それが支えになっていたと思う。


子供が成長して社会人になり、ひとまず戦いが終わると

テレカから始まったあぶく銭もきれいに無くなった。

タイミングの良さに、一種感慨をおぼえる。


その頃には、お金のありがたみも多少はわかるようになっていた。

お金は祈ってもケチケチしても、自分からはやって来ない…

必ず「人」によってもたらされることも、身に沁みてわかった。


しかし、一番よくわかったのは

亭主が働いたお金でバーッと何か買うのが

やっぱり一番気持ちいい…ということである。
コメント (8)
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