殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

お買物

2009年06月16日 15時37分30秒 | みりこんぐらし
もうずいぶん前になるが

夫が一時期、隣国及び東南アジア各国へ

頻繁に出かけていた時期があった。

仕事絡みの協会やゴルフ同好会などの旅行である。


メンバーの大半は中年男性。

いちおうゴルフ旅行という建て前だが

まあ、どこのホールを狙っているかはおわかりであろう。


そのあたりに男性のみで旅行して

清らかなまま帰るのは子供と病人だけだと思って、まず間違いない。

不審の目を向ける妻に、皆必ず言う。

「あいつは行ったけど、俺は行かなかった。好きじゃないし…」

そういう時代であった。


一度自分が経験すると、今度は人を案内して

同じ「お買物」の体験をさせたがるのは、男性の習性らしい。

夫もそのお導きで「買物の楽しみ」を知った。


女性の地位向上を叫んで販売を抑制するのもよかろうが

こういう男どもをいったん根絶やしにするほうが

早いと思うのは過激であろうか。


その中のひとつ「た」で始まるお国には

古くより義父の馴染みである商店及び商品が存在した。

製造協力者は不明だが、その商品のお腹から

やがて新たな商品が生産され、それが今度は夫の担当となった。

世襲もありか?

なかなか面白いシステム…と感心した次第である。


なぜそんな話を知っているか…

口の軽い理髪店で、めったなことをしゃべるものではない。

私が子供を散髪に連れて行った時に、筒抜けなのだ。


身近なしろうとと違い、代金引換・現金御礼の商品は

面倒臭い野心や将来が始めから存在しないので、あとくされがない。

「あとくされ」を好む性質の夫には、少々物足りなかったようだが

どうでもよい。


さてそんなある日…私は知人を出迎えるために、ある駅に出かけた。

待合室がなんだか騒がしい。

「パパサン、パパサン」

若い外国人女性が、ちょっとハスキーな声で

しきりに連発している。


沈黙してたたずむ「パパサン」は…

おおっ!なんと夫の旅行仲間…この町在住の若社長、B氏ではないか!

もちろん、妻子あり。

ブラボー!!


「キタヨ、ミンナキタノヨ」

女性の背後には、両親と思われる男女

兄妹なのか、若い男から子供

じいさん、ばあさんまでいる。

総勢10人ほどが、それぞれ大きな荷物を携えてゾロゾロいた。


B氏、汗を拭き拭き、ボソボソと何か言う。

女性、激しい口調で詰め寄る。

「コイイッタネ!ワタシキタ!パパサン、オイデイッタ!」


B氏は周囲を気にし、身振り手振りで声を小さくするように促す。

奥ゆかしく!控えめな!私は

他人の不幸にぶしつけな視線を送るようなことはしない。


そのかわりといっちゃあナンだが

“だるまさんが転んだ”のように

座っていた椅子をひとつ…またひとつ…

座り直しながら、その集団に近づく。


女性の父親らしき人物は、少し日本語が話せるらしく

B氏となにやら小声で会話した。

やがてB氏は公衆電話に向かう。

ほどなく駆けつけたのは、黒い大きなカバンを持った

銀行員とおぼしき男性であった。


ああっ…そこで時間切れ…待ち人到着である。

友達なら一緒に最後まで見物するが

そうもいかない人だったので、未練を残しながら

振り返り振り返り立ち去る。


かなり後になって聞いた話によると

寝物語で「日本へおいで」と言ったのを鵜呑みにした彼女は

一族で現地を引き払い、B氏と結婚するために

はるばるやって来たということであった。


お金を渡してお帰りいただいたそうだが

そのことがあってから、ゴルフ旅行が減った。

この件が原因なのか、不況になったせいなのかは

ご一行様に渡した金額とともに不明である。
コメント (12)
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