9日は大阪から所用で東京に来られていた大和人さんと「EL&SL奥利根号」に乗車。この列車は、上野~高崎間はEL、高崎~水上間をSLの「D51」が牽引する客車列車で、群馬県の観光キャンペーンに合わせる形で、9月15日までの毎週末に運転しているものである。
上野駅の13番線に、EF60(これも昭和37年製造という古いものだ)を先頭に6両の12系客車が横たわっている。原形のボックスシートが並ぶもので、昔、山陰本線などで何回か現役の客車列車に乗車した時のことを思い出す。そういえばその時は車両の端がロングシートだったような気がするが、今回は全てボックス席。
ここで大和人さんと合流し、指定席券をいただく。今回のこの奥利根号乗車は大和人さんの発案のもので、早くから指定席券を押さえにかかっていたのだが、発売開始3日にして「2人並んで座れる席はこれで最後」といわれたらしい。ボックスの通路側になるB・C席に陣取る。家族連れや旅行会社のツアー客、あるいは「その筋」の客で、上野出発時点で8割方の乗車。
最近のステンレス型の車両とすれ違いながら高崎線の線路を走り、荒川を渡って埼玉県に入る。朝の8時を回ったところだが、車窓に見える温度表示はすでに31度。これから向かう群馬県は関東でも気温が高い傾向のところなので、どこまで上がるか。暑いからか、イベント列車だからか、ボックス席だからか、車内のあちらこちらで早くもアルコールを含めた宴会が始まる(中にはワインのボトルを開けだす剛の者も)。
大宮を過ぎ、高崎線内を快走する。客車列車というと「遅い」というイメージがあるが、線形もよく停車駅もほとんどないこともあり、なかなかのスピードである。上尾、熊谷、深谷、本庄と停車し、かなりの時間を走ったように思えるがまだ埼玉県。「埼玉県って結構広いんですね」という大和人さんの言葉。ようやく利根川を渡り、群馬県に入る。
高崎に到着。ここでEF60からD51に機関車がつけ替わる。その瞬間を見ようとホームには多くの人だかり。こうして写真を撮っていても、機関車ではなく群集を撮っているようなものだ。高崎から乗車する客も多く、ここで車内はほぼ満席となった。
遠くからSLの汽笛が響き、客車の独特の衝撃とともに出発。少しずつ前のめりになるような衝撃がSLの車輪の動きというやつか。先ほどと比べてゆったりとした走りである。SL列車というもの、いざ乗ってしまえば普通の客車列車なのだが(普通の客車列車、というのも最近では貴重な体験である)、外を煙を流れるのを見ると、やはりSLに乗っているんだなという実感が沸いてくる。
渋川で、定期列車をやりすごすためと、撮影タイムのために30分近く停車。ここでも人だかり。また、運転台にあがって記念撮影ができるとあってホームに長い行列ができる。
ここから利根川の流れに沿って坂を上っていく。沿線の風景も山間のものになってきた。上越線にSLを走らせるというのは、いい線を選んだものである。東京から近すぎず、かといって新幹線を使わずとも日帰りが可能だし、勾配もあるし山村風景もきれいだし・・・。こうして乗る客だけではなく、沿線のあちこちには三脚を立てて列車を狙うギャラリーも多い。
車内では記念グッズをかけたじゃんけん大会なども行われ、子どもたちを中心に盛り上がる。また、乗客全員に記念乗車証が配られ、日付入りのスタンプも押してくれる。昔ながらの「硬券」で、下地には「JNR」の文字。
坂東太郎といわれ、流域面積の広さは日本一の利根川もいよいよ渓谷ムードになってきたところで、終点水上に到着。観光協会の人たちも横断幕をかかげてSLの乗客を歓迎する。
ここで越後湯沢方面の列車との接続でもあればさらに北上ということも考えたのだが、そういうことはなく、SLの折り返しまでの3時間あまりをこの水上で過ごすことにする。大和人さんも私も水上の町は初めてなのでどのように過ごすか、パンフレットを広げて検討である・・・(続く)。