話が前後するが、17日の土曜日はJR・西武鉄道・多摩モノレール3社共催による「駅からハイキング」3番勝負の第1弾、「羽村山口軽便鉄道廃線跡とベースサイドストリート散策」に参加した。久しぶりの「駅からハイキング」参加、日頃多摩地区に出かけることがないことや、軽便鉄道の廃線跡という名前に魅かれての参加である。
青梅線の羽村駅着。9時半から受付のところ、10時半頃のエントリー。集団の多くはすでに行ってしまった後であるが、それでも参加者の姿を多く見かける。この手のイベントには中高年の参加が多いのだが、今回は軽便鉄道が絡んでいるだけに、「その筋」の人間の姿も見かける。まあ、私もウォーキングの達人から見れば「その筋」のアブナイ奴にしか見られていないのだろうが。
まずは羽村駅近くの閑静な住宅街を歩く。ここは「旧鎌倉街道」ということで、由緒ある道のようである。それで、コースに組み込まれたのだろうか。もっとも、今日歩いた中で目立つのは「区画整理反対」の立て看板。3軒に1軒くらいはこの看板をかけていたかな。この地をめぐって大規模な区画整理が計画されているのだろうか。道路を通すのか何かを建てるのかは知らないが。
地図によれば、この辺りから軽便鉄道が走っていたのだという。この「羽村山口軽便鉄道」、この先の村山貯水池のダム建設用の砂利運搬を目的として敷設されたもので、戦前の話であるが機関車に牽引されたトロッコ列車が走っていたという。ただ、特に旅客営業をしていたわけでもなし、現在の私鉄の前身というわけでもなし、こういうイベントで紹介されない限り、ほぼ全ての人がその存在すら知らずに過ごすことになっただろう。私もこの鉄道のことは初めてきいた。
今日歩くコースでは、鉄道に関する史料や遺跡がそれとわかる形で残っているわけではなく(この先にはトンネル跡があるらしいが、それは来月の「駅からハイキング」での話)、わずかに「神明緑道」という遊歩道がかつての軽便鉄道のルートであったことを物語るのみ。時には住宅団地の敷地内も歩く。知らない人がみれば何の集団かと思うだろう。この緑道にも特に軽便鉄道のことが紹介されているわけでもなく、恐らく戦後になって宅地開発で移ってきた人たちから見ればただの遊歩道くらいにしか思わないだろう。逆に、遊歩道の形で残ったことが不思議なくらいだ。参加者も特段軽便鉄道に想いを馳せるようでもなく、淡々と歩き通す。
この廃線跡も本来であればまだまだ直進するのだが、今日のハイキングでは途中で右折を余儀なくされる。正面にはあの横田基地があるからだ。ここから右手にごく普通の近郊住宅街、左手には侵入禁止の看板も立つフェンスをはさんで、米軍ハウスが並ぶ。フェンスの向こうでは、兵隊の子どもたちが庭で歓声を挙げて遊ぶ光景が見られる。
羽村市から福生市に入り、そしてやってきたのが国道16号線。有事の際には軍事用道路として、また首都の防衛線としての役割を求められているのがこの国道である。ここからは左手に横田基地を見る。軍事用飛行機の爆音などは聞こえないが、フェンスの向こうの検問の雰囲気はピリピリしており、やはり軍隊がすぐそこにいるのだなと実感させられる。歩道は右手にしかなく、その歩道に沿って、「ベースサイドストリート」という商店街が広がる。
この福生、横田基地を前にして、米国的な雰囲気というのを醸し出しているのが売りのようで、いわゆる70年代の香りが漂うというのでこの町を愛好する人が多い。小説家やミュージシャンにも福生ゆかりの人や、福生をイメージした作品を残す人が見られる。今日ハイキングに参加している人には、その70年代に青春時代を過ごしたいわゆる「団塊の世代」らしき人が多く、それらの人たちにとってみれば福生というのはカッコイイ響きを持って受け入れられているのかもしれない。今日のコース設定の目的はそこだろう。
確かに看板には米国風のものが多く、アクセサリーや衣類、玩具などを扱う店が多い。確かに広々とした、カラッとしたものを感じるのだが、私の嗜好からすれば米国そのものはちょっと・・・というのがある。これが漢字ばかりが縦横に並んでいるというのであれば別だが。別に福生をどうこういうのではないが、福生でなくても米国風の店はあちこちで見られる。まあ、それだけ米国文化が日本に浸透しているのだろう。
米国風レストランもあるのだがどうも入りづらい雰囲気で、結局ラーメン屋「福実」という店で昼食。何でもマグロの頭をベースにしたダシが売り物とか。さすがは横田基地の前だけあって、米国兵らしき白人が上手に箸を使いこなしてラーメンをすすって餃子をぱくついているし、メニューも日英2ヶ国語。さて出されたラーメンは、マグロだなとすぐわかるくらいダシが効いている。何だかネギマ鍋を食べたあとに、中華そばの麺を入れて仕上げをしているような感じだ。おいしくいただく。
ベースサイドストリートから分かれ、拝島駅近くの水喰土公園へ。ここで昼食をとっている人が多い。今日のコースはなかなか立ち寄りスポットがなく、駅前のロータリーや道端の公園で弁当を広げる人もいたのだが、やはりこの公園が一番落ち着きそうだ。玉川上水に沿った公園で、その上水にはカモや鯉の姿を見かける。今は冬のこととて木々には何もないが、新緑の頃などにくれば実に清々しい雰囲気だろう。
7キロあまりのコースを食事込みで2時間ほどかかって、ゴールの拝島駅に着く。何だかあっけなかったかな。往復でコースに変化をつけるために、ここからは西武拝島線のきっぷを買って、西武新宿に向かう。
このシリーズのイベント、次回は3月3日(土)に、この拝島駅を起点として、「五日市鉄道廃線跡と鉄道遺産散策」が行われる。さて、次回はどんな表情を見せてくれるのか、楽しみである。