まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

河口湖へ

2006年07月17日 | 旅行記C・関東甲信越

3連休の2日目。東京近郊区間のJR乗り放題の「ホリデーパス」を手に、東京の中央快速線ホームに現れる。先週は房総半島の鉄道を乗りに出かけたので、今日は方向を変えて東京の西部を訪ねようと思ったのだ。青梅あたりがいいかな。青梅鉄道公園や昭和風のレトロの町などもまだ行ったことがないし。もし時間があれば終点の奥多摩までまた行ってもいいかな。

ところで、乗車したのが高尾行き。青梅に行くには途中の立川で乗り換えるのが便利である。ところが、青梅に特に急ぐわけでもなく、高尾というところも通っただけでよく知らないから、この機会に高尾まで行って折り返してもいいかなと、そのまま乗車。

高尾駅ではホームの反対側に115系の「スカ色」の列車が停まっており、甲府方面に接続していた。それを見て思わず乗りたくなった。若干でも「汽車旅」の風情を味わおう、どうせ「ホリデーパス」は途中の大月まで有効である・・。ということで「スカ色」に揺られ、小仏峠を越える。途中の車窓は通勤圏の中央線から山岳路線の中央線に移り変わるところで、汽車旅の風情として充分なものだった。特急通過のため山中の小駅で数分停車するのも、鈍行の旅らしい。

P1010506 大月で下車する。ここで引き返すことになるが、ただ行って帰るのも惜しい。また大月からは河口湖まで富士急行が通っている。こちらも乗ったことがないし、ここまで来たのだから行ってみるかと、JRとの連絡改札口で河口湖までの乗車券を求める。

P1010507 ちょうど昼時、ホームには弁当の立ち売りが出ていた。私鉄ホームでの駅弁は珍しく、昼食として「ほろほろランチ(1150円)」を買い求める。「ほろほろ鶏」という地鶏を使用した弁当であるが、甲州ワインの小瓶が入っているのがうれしい。(つまりは、見本の写真でこれあるを確認したから買ったようなものだが・・・)富士急行の車両はボックス席もあり、車内で弁当を広げても違和感がない。

さて発車。少しずつ高度を上げていく。辺りは山中の田園風景なのだが、屋根を見ると落雪防止のストッパーがつけられている。冬はそれなりに積雪があるのだろう。

富士急行というからには富士山の姿が見えてもよさそうなのだが、一向にその気配がない。やはり曇っているからかなあ・・・。途中で方向転換をした富士吉田や、新型ジェットコースター「ええじゃないか」の登場間近の富士急アイランドでも富士山の姿は見えない。天気予報にさほどこだわらず、そもそもここまで来たのがとっさの思いつきであるからして、雲がかかって富士が見えないのは仕方がない。もし本気で「富士を見たい!」という計画を立てているなら、来る日をもう少し検討したことだろう。

山小屋風の河口湖駅着。駅舎を改築したばかりとかで、観光案内や物産販売をやる棟はもうすぐのオープンという。駅前は観光客で賑わっている。外国人の姿も多い。ただ私の気のせいか、白人の欧米人よりは、中国・韓国や東南アジア、インドあたりの顔つきをした人が多く見られる。少なくとも英語ではないいろんなお国言葉が飛び交っているように聞こえる。

せっかく来たのだからこのまま折り返しの電車で引き返すのも無粋なことで、私もしばし河口湖畔を散策しよう。歩いて10分ほどで湖畔に出る。有名観光地らしく、旅館や土産物屋が軒を連ねる。双方向ともにいろんなナンバーのクルマで道路は渋滞。

P1010514_2 その中で、「カチカチ山ロープウェイ」というのにたどり着く。河口湖畔の天上山のロープウェイのことなのだが、おとぎ話に伝わる「カチカチ山」の伝説はこの山が舞台だったという。この山上の展望台からは富士山と河口湖の両方の眺望が楽しめるということで、湖畔の人気のスポットである。

P1010520 しかし・・・・雲は晴れず、結局富士山の方向に見えたのは麓の広大な樹海と、左手にわずかに望める稜線の姿・・・それも少し上に向かうとたちまち雲の中に消える稜線。稜線の伸び具合から山頂はあの辺りだという見当はつくのだが・・・あとは想像で補うしかない。

P1010519 その代わりに出迎えられたのが「カチカチ山」のタヌキとウサギのご両人。薪を背負ったタヌキが、ウサギに火をつけられて逃げ回っている姿だ。記念撮影のオブジェになっているのだが、あの話ってよく考えてみれば残酷なものであるなあと思い出される。そのあたりは太宰治も『お伽草紙』の中で書かれている。

P1010525  P1010533山上からの帰りはロープウェイではなく徒歩を選択し、40分ほどかけて下山する。途中はあじさいの群生地となっており、山中に育つ無数のあじさいを愛でる。鮮やかに色をつけたもの、これから花を咲かせようとしているもの、さまざまにある。ちょうど雨で水を含んでおり、花の表情から生気を感じ取ることができる。富士山が見えなかったのは惜しいことだが、これらあじさいとの出会いは充分にそれを補えるものであった。

P1010547 天上山公園の後は、結局ほど近い遊覧船に乗ることにする。この河口湖、湖上は実に賑やかである。手漕ぎボートにはじまり、白鳥の形をしたペダル式のボート、さらには「モーターボートで最速で河口湖を周遊する」とか、釣り糸を湖上から垂れる意味での簡易ボートとか、いろんなのが湖を我が物顔に走っている。手漕ぎボートはまだいいとして、モーターボートがしょっちゅうエンジン音を垂れ流して回るのが傍若無人な振る舞いに見える。あれでよく衝突事故が起きないなあと思う。

晴れていれば富士山が湖越しに見られるのだが、今日のクルージングではそうはいかない。稜線がわずかばかり見えるくらいだ。それでも大勢の観光客が「あの辺」に向けてカメラを構える。涼しい風を味わえたのはよかったが、あまりのボートの多さに、「湖をこのように使ってもいいのか?」という思いも。

P1010551 河口湖駅に戻り、帰りの列車まで時間があったので駅前の民芸調の店で山梨名物の「ほうとう」を味わう。大きな鍋に盛られたそれを大汗をかいて味わう。少し早い夕食だが、栄養のバランスもよく、腹持ちもよい。外に出るとちょうど雲が晴れてきて、駅舎の向こうに黒い姿の富士山が顔をのぞかせていた。もう少し早く晴れていればなと残念に思う。P1010553

P1010560 さて河口湖からの帰りは富士急行が誇る(?)、「フジサン特急」に乗車。おそらく元は名鉄のパノラマカーだったと思われる車両を改造して、最前部の展望シートにラウンジ、前との間隔の広いリクライニングシートを設けた「観光特急」である。また車体にはさまざまな表情の富士山のイラスト。この展望車両に乗るには通常の特急券のほかに定員制の「着席整理券」100円が必要であるが、それを買い求めて最前部に陣取る。P1010557

P1010562 富士吉田までは先頭を走るが、ここで方向転換、最後部となり、流れ行く景色を眺めることになる。来た時には見られなかった富士の輪郭がくっきり見えるようになった。こうして見ると、やはり大きいし、稜線がきれいな三角形である。最後に来て気持ちを満足させてくれるものだった。

この次は天気のいい時を見計らって、今日回れなかった美術館等のスポットも含めて回ることにしよう。富士急行の旅も楽しみである。

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