まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

小湊鉄道といすみ鉄道

2006年07月09日 | 旅行記C・関東甲信越

千葉県は内房線の五井駅に降りる。千葉近郊の駅として近代的な橋上駅舎なのだが、JRの改札をくぐらずに橋を渡ると、小湊鉄道のホームに出る。橋の上にはワゴンが出ており、弁当や惣菜が積み上げられている。「五井駅名物あさりめし」というのがあり、それを買い求めてホームに下りる。

P1010457 これから乗る小湊鉄道、そして終点で接続するいすみ鉄道に乗り、房総半島を横断するのが今日のお出かけである。ホームにはクリーム色と朱色に塗られた気動車が2両、エンジン音をうならせて待機している。最近の軽快車やレールバスとは違う、いかにも気動車という感じの面構えだ。車両はクロスシートではなく全車ロングシートであるが、これはこういうものだろう。

P1010462 「房総横断記念乗車券」というのを買い求める。小湊鉄道の上総鶴舞駅、いすみ鉄道の大多喜駅が「関東の駅百選認定」された記念ということだが、五井、あるいはいすみ鉄道の起点・大原駅から一方向の乗車で、途中下車自由というもので1600円。普通に買えば小湊鉄道1370円、いすみ鉄道670円ということで、通しで乗る分にはかなりお得。

そこそこに埋まって発車。住宅地と田園地帯が混在する中を走る。田植えを終え、少しずつ育っている苗。このところすっきりしない天候が続いているが、今年は順調に実をつけるだろうか。

P1010463 「海士有木」という駅名を過ぎる。「あまありき」と読む。何だか昔話の世界に入り込むかのようだ。どういう由来の駅名なんだろう。この後、手書き風情の駅名標が続く。

P1010464 こういうローカル鉄道となるとワンマン運転が多いのだが、小湊鉄道は車掌が乗っている。しかも女性、そのうえ途中の上総牛久まではドア扱いと車内精算用で2名乗車。道中無人駅が続くのと、JRからの乗り換え客が多いが、JRホームとの間に専用の改札を持たないため、そういう人たちへの車内券売りが多いのだろう。

小湊鉄道の中心駅ともいえる上総牛久で半数の乗客と車掌1名が下車し、車内はのどかなローカル線となる。「関東の駅百選」の上総鶴舞も過ぎるが、車内から見た目には周りに何もない、古びた駅舎としか見えない。ここで途中下車しても時間を持てあますだろうな。

P1010465 乗客も減ったので、ここで五井で買った「あさりめし」を開ける。コンビニにあるミニ弁当のサイズであるが、あさりのだしがよく効いて風味がよい。小ぶりながらあさりの身もふんだんに入っている。これで300円。

車窓はすっかり山あいで、沿線随一の観光地である養老渓谷に到着。ここで、残っていたほとんどの乗客が下車する。残ったのは同じように房総横断中とおぼしき人ばかり。車内や沿線パンフレットでもハイキングコースの案内があり、緑と水蒸気の景色を楽しむのだろう。私も下車してもよいのだが、いすみ鉄道との兼ね合いもあり、そのまま乗車。

もう一駅走り、上総中野着。ここで小湊鉄道はおしまい。隣のホームがいすみ鉄道のホームであるが、見た感じでは完全に一つの駅。駅舎も木で組んだ簡単なつくりである。こういう接続駅というのも珍しい。

P1010473 次に乗るいすみ鉄道は、もともとは国鉄の木原線である。ものの本によれば「木原」というのは「木更津」と「大原」いうことで、大原から木更津を目指して建設されたのが途中で頓挫したとか。また小湊鉄道の「小湊」も、外房にある地名で、こちらももともとは房総横断を目指していたとか。そのいずれも志半ば?で挫折し、この上総中野で出会って「房総横断」が相成ったということか。

P1010475 いすみ鉄道の「いすみ」という言葉が聞きなれないが、このあたり「夷隅郡」というのだそうだ。夷隅川というのも流れている。「夷隅」という地名の由来も気になる。「夷」=「東夷」ということで、「東の隅、端っこ」とでもいう意味だろうか。沿線は菜の花の多いところで、レールバスの塗装も菜の花色なのだが、この時期はあじさいが目につく。

いすみ鉄道の中心駅、大多喜に着く。このまま乗りとおすのもよいが、ここで途中下車しよう。いすみ鉄道の本社や車庫もある、沿線の中心部。駅の向かいには「観光本陣」という新しい建物もあり、半島の観光案内をやっている。

P1010479 この大多喜、徳川家康家臣の「四天王」の一、本多忠勝が封ぜられた土地で、後に本多家から松平家に引き継がれた10万石の城下町である。房総半島の中央にあり、江戸の東側(外房側)の守りを固める役割を果たしたのだろう。その大多喜城は駅の裏手の山に立つ山城だったというが、現在千葉県立博物館の分館として天守閣もどきが建てられているとのことで、蒸し暑い中、山道を歩く。本多家にまつわる書状や武具の展示、大多喜の城下町の様子の紹介がなされ、なかなか充実していた。

P1010484 山城を下り、街中に入る。メインストリートが「鍵屋の辻」状になっており、ところどころに昔作りの建物が残る。また、町屋のつくりを再現した「商い資料館」というものもある。パンフレットには「房総の小江戸」とあるが、観光を大々的にPRしてというのではなく、あくまでひっそりと佇んでいる。逆にいえば観光ズレしたような感じがなく、いすみ鉄道に乗ってちょっと途中下車して歩くのがちょうどいいサイズである。P1010482

一つ惜しかったのが、「房総中央鉄道館」。これも町屋風の建物で、パンフレットには旧木原線をはじめとした千葉県内の鉄道に関するグッズ展示や、鉄道模型の運転などが行われるとあったのだが、入口からのぞくと「現在改装中で見学不可」とある。ちょうど展示替えなのか数人の人が作業していた。何も日曜にやることないのに・・・と思うが、逆に普段仕事を持っている人たちが、日曜日を利用してボランティアで運営しているのかもしれないし、夏休みを前にして準備中とも見える。駅名標の展示などを外から眺めて、駅に戻る。

P1010486 次に乗るのは大多喜始発の大原行き。私以外は大多喜の高校生ばかり。ここからは辺りも開けて、半島の外側に出たことがわかる。30分足らずで大原着。これで半島横断が完成。もう少し歩けば海岸に出ることもできる。また外房線で半島一周の旅もできる。ただ今日のところは天候も今ひとつだし、青春18の客でもないのでそのまま外房線で千葉方面に戻る。今や113系の「スカ色」も珍しい存在となった。

短時間ながらなかなか味わいの深い鉄道の旅であった。P1010468

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