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クラシック音楽オデュッセイア

2025年正月、ついに年賀状が1通も来なくなった“世捨て人”のブログ。クラシック音楽の他、日々のよしなし事をつれづれに。

歌劇<ウンディーネ>(1)

2005年12月19日 | 作品を語る
フーケーの『ウンディーネ』を土台にしたオペラ作品として現在最もよく知られているのは、アルバート・ロルツィングが作曲した歌劇<ウンディーネ>であろう。ロルツィングと言えば、フロトウ、ニコライ、そして近年再評価されつつあるマルシュナーなどと並ぶ作曲家で、歴史的な位置としては、ウェーバーとワグナーの間をつなぐ世代に属する。一般的には、<ロシア皇帝と大工>や<密猟者>といった歌劇の方がよりよく知られている人だが、<ウンディーネ>もまた見逃せない作品である。今回と次回に分けて、このロルツィングの歌劇<ウンディーネ>を語ってみたいのだが、現在数種ある全曲CDのうち、私が持っているヘーガー盤のキャスト一覧を最初にご紹介しておきたい。鋭い方は、これを見ただけで「おやっ?」と思われることだろう。

ウンディーネ : アンネリーゼ・ローテンベルガー(S)
騎士フーゴー・フォン・リングシュテッテン : ニコライ・ゲッダ(T)
フーゴーの従者ファイト : ペーター・シュライアー(T)
ベルタルダ : ルート=マルグレット・ピュッツ(S) 
水界の王キューレボルン : ヘルマン・プライ(Bar)
ハイルマン神父 : ゴットロープ・フリック(B)
ワイン蔵番のハンス : ゴットロープ・フリック(B) 二役。
老漁師トビアス : ハンス=ギュンター・グリム
その妻マルテ : ジークリンデ・ワグナー
ロベルト・ヘーガー指揮 ベルリン放送響、他 (1966年 EMI ステレオ録音)

さて何が、「おやっ?」なのかと言えば、フーケーの原作には出て来ない人物が二人、このオペラに登場しているということである。騎士の従者であるファイトと、ワイン蔵番のハンスおやじ。オペラ作品に時折見られる現象なのだが、ここでもまた、「原作にはいない、でっち上げキャラ」が大事な役割を担っている。

序曲

力強い金管と、それに続く切なげな弦のメロディ。悲劇の運命と、ウンディーネの悲しみを表しているのだろうか。全体的にいかにもロルツィングらしい、ロマンティックでソフト・フォーカスな音楽だ。約9分半。

第1幕 

漁師夫婦の家。まず騎士フーゴーの従者であるファイトが、「ほとんど三ヶ月も洪水で足止めを食ったが、ようやく今日は出発だ。フーゴー様が花嫁を連れて、これからご帰還になるんだ」と前口上を歌う。老漁師トビアスとハイルマン神父の対話を経て、ウンディーネが結婚の喜びを歌う。続いて、「魂って、幻でしょ?」という彼女の言葉にギョッとした一同の五重唱。(※このオペラは、いきなり騎士とウンディーネの結婚が決まったところから話が始まる。やはり、フーケーの原作を知っておいた方がよさそうだ。ヘーガー盤では、若き日のシュライアーが開始早々、粋な歌声を聴かせてくれる。)

騎士フーゴーが、ベルタルダにけしかけられて魔の森へ入ったいきさつを歌い、そこからウンディーネと愛を確かめ合う二重唱に入る。それから、二人の婚礼を祝う合唱が柔らかく歌われる。(※このソフトな感じがいかにも、ロルツィング。)

場面は変わって、ファイトと人間の姿で登場したキューレボルンの対話。騎士をよく知るファイトがつぶやく。「ウンディーネさんは、フーゴー様に遊ばれているだけさ」。キューレボルンの顔色が変わる。その後、ファイトと他の男たちが酒の歌で盛り上がる。神父に化けたキューレボルンがウンディーネのもとに現れ、「こうなったことを、私は今後悔している」と歌う。ウンディーネが、自分を育ててくれた漁師の家にお別れを歌い、合唱に送られながら騎士と一緒に出発するところで幕。(※このあたりの響きは、先輩格にあたるウェーバーのオペラを思わせる。)

第2幕 

不穏な運命を予告するような間奏曲で開始。ファイトと、酒蔵番のハンスおやじ。この二人は仲良しだ。ファイトは、自分の主人である騎士フーゴーが新妻を娶ったことをハンスに伝える。そのやり取りの後ハンスは貴重品箱を出して、「この箱には、ベルタルダ様の出生の秘密が書かれた書類がしまってある。今日の誕生日に開かれることになっているんだ」と語る。

フーゴーとウンディーネ。ホルンに導かれて、ウンディーネが自分の素性を明かすアリアを歌う。「自然界には、様々な精霊たちがいます。 (中略) 私も、その水の妖精ウンディーネなのです」。たじろぐ騎士の手をとって、彼女は続ける。「私たち精霊が人間たちと違うのは、魂を持っていないこと。でも私は、あなたとの愛によってそれを得たのです」。(※言うまでもなく、これは主役ウンディーネによる最大の聴かせ歌である。ただ、ヘーガー盤に関して言えば、ここでのローテンベルガーは声の点でちょっとツライものがある。何とかこなしてはいるのだが・・。)

一方ベルタルダは、騎士フーゴーの結婚を知ってショックを受けている。しかし、「私は気高い血筋ゆえ、もっと高貴な方と結ばれるのよ」と気丈に歌う。真実を知るキューレボルンは、それを聞いて冷笑する。ウンディーネのことを悪しざまに見下げるベルタルダの態度にムッとしたキューレボルンが、「貧しい漁師夫婦に、赤ちゃんがおりました。でもある日、その子は湖に消えていなくなりました。さあ、誰のことでしょう」と歌い始める。やがて彼の歌が意味するところを悟って、一同騒然となる。

そこへ貴重品箱が持ち込まれ、中に収められた羊皮紙の文章を役人が読み上げる。そして、キューレボルンの歌った内容が事実であると判明。ベルタルダは貧しい漁師の娘だった。打ちひしがれるベルタルダ。キューレボルンの高笑い。しかし、ウンディーネはベルタルダに、「あなたを見捨てはしないわ」と優しく声をかける。一同の騒然たる合唱で第2幕終了。(※ここでの合唱にも、ウェーバーの流れを汲んだような響きが聴かれる。)

この続き、後半部分に当たる第3幕から第4幕終曲までの展開については、次回・・。

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