北の動向については、ほとんどの人はうんざりしたりお笑いになったりしていることと思う。しかしながらいつの間にか脅威や恐怖というものをほとんど感じないということがあって、我ながら驚くのである。狼の嘘をついた羊飼い少年が食われたのは、このせいだろう。
馬鹿にしか見えないけれど、どうもそれなりに真剣かもしれないとは思う。何故というのは、やはり理解できない。虚勢を張ってもほとんど無駄だということが僕らには分かっているけど、しかしどうも彼らには分かっていないらしい。そこがかなりミステリーというか、どうなっちゃってるんだろう、という感じかもしれない。
お父さんの正日さんは、実はあんがい狡猾だったということは、透けて見えるところがあった。結果的に一生をまっとうしてしまった。たぶんそれ以外に選択は無かった訳で、ギリギリのところで孤立して生きていかなければ、自分が殺されていただろう。
立場としてはやはり正恩くんも同じようなものかもしれないが、しかし自分で選択して舵を取っているというふうにはどうしても見えない。いわば素直に馬鹿を演じている訳で、そういうところがかなり痛々しい。そうしてやはり危なっかしい。
狼少年は無視されるようになる訳だが、彼等はその為にさらに大声を張り上げるようになっている。具体的にはあらん方向にミサイルだかロケットだか人工衛星だかを打ち上げるということに落ち着くかもしれないが、しかし今回こそは、何かさらに踏み外すことをちょっとだけやろうという気になっているかもしれない。実際には致命傷になるはずだからやりはしないのだけれど、彼らの感覚が勘違いの度合いを深めてしまい、その少しが、反射の強度を読み間違う可能性も、やはりあるのではないか。
しかしながら、そういう思いは、もはや願望かもしれない。少なくとも僕の中には、いっそのこと具体的に動きがあった方がいいようにさえ思えてきている。上手く言えないが、世論的にもそのような空気が感じられるようにも思うのだ。それは大変に危険だし、やはり大きなリスクは伴う。その代償を経て違った歴史が生まれるということではあろうけれど、そういう近未来を見てみたいという欲求が高まると、本当にそれ自体はやってくるかもしれない。
期待としてやってきて欲しいが、しかしその期待がそんなに良いものとは限らない。本当に今は妙なバランスの上にふらふらしている状態なのではあるまいか。