一人暮らしの自炊について、テレビであれこれ工夫しているのを見ていたのだが、最後は達人めいた人が出てきて、その見事ぶりが実にすばらしくて、かえってハードルを上げ過ぎることになってしまったのではないかと、老婆心ながら心配になった。やっぱり無理だわ、と諦めたい人にはよかったのかもしれないが。
ところでいろいろ理由はあるだろうにせよ、やはり一人暮らしの自炊のハードルの高さにおいて、男女差というのは相当ありそうにも思える。ウチの職場にも弁当男子らしき人が以前は居たのだが、実際には同棲している人がいたらしいと後でバレた。そういうことをかくしたがる人間性も含めて、つまらない人間である。まあ、それが若さだろうが。
自炊するかしないかなどは、実際はまったくどうでもいい問題のようにも思えるが、自炊した方が偉いというような感覚があるのは確かだ。実際に偉いのは分かるのだが、そういう気分が、やはり無理をさせるのではなかろうか。
健康のためだとか、金銭的な節約だとか、きちんとした生活態度だとか、理由はいろいろあっていいが、自炊をしたから一方的に偉いし、そうすべきだという考えが無くなれば、人はずいぶん楽になるんじゃなかろうか。外食するにしても、お惣菜などを買うにしても、それなりに考えて食べることは可能だし、そのための労力に見合うほど、自炊というのが実際に大切なものであるというのは、案外怪しいことなのではあるまいか。ましてや、不健康になってしまっても、結局それは自分の望んだことなのだし、医療費の問題など社会的なことを言い出すとややこしいが、他人がとやかく言うような問題とはぜんぜん思えないのである。「食事は外食が中心です」と聞いたところで「あ、そう」で済めば、それは平和である。
共働きになると女性の不満が高まる理由に、家事の分担問題は大きいと思うが、そもそもやりたくなければともにやらなければいいだけだと思うことがある。男性にもちゃんとして欲しいという考えも分かるが、ある程度はやらなくていいルールにすればいいんじゃないかとも思う。その分家の中は無茶苦茶になるのかもしれないが、それが望みならそれでいいではないか。掃除をするのは人間が生きている証拠だが、最低限でも生き延びられるラインというのは模索してもいいのではないか。しかしその代わり、男性の側が散らかっていることなどを指摘するのは、そもそも最大のタブーであり卑怯な行為だということは、申し添えておかなければならないが。そんな男は人間としての価値が無いのだから、即刻離婚すればいいだけのことである。
こういうことを言えるのは、家人がしっかりしてくれていることだということは重々承知している。しかし能力的に劣っている男性の多くが、そのハードルを越えることはそもそも難しすぎる問題のように思えてならないのである。
厄介なのは、それでも出来る男というのが居そうなところである。そういうのは例外だから比較対象から外すべき問題であるはずなのだけど、そういうサンプルは一人歩きをして、個人の意識の高さでどうにでもなるような言動が跋扈することになったりする。そうなるとほとんどそれは社会的暴力で、中には実際に努力をしようとするような人間も出てきて、社会的にいびつないじめ状態がまかり通るようになってしまうのではあるまいか。
お互いに無理なことは相手に求めないということが自然になれば平和なんだけどな、と思っているだけであります。おかげで僕んちは早々に諦められたのかもしれないですけどね。いや、ひょっとすると将来的には、何か復讐が待っているのかもしれませんが…。