カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

龍はもう目覚めている   経済大国インドネシア

2014-07-18 | 読書

経済大国インドネシア/佐藤百合著(中公新書)

 ご近所の銀行の支店長さんが研修というか旅行というか、とにかくインドネシアに行ってきたらしい。みやげ話にいろいろ聞いたが、なるほど面白そうな感じだなと思ったら、本棚にあった。
 というわけでうわさにも聞いているし、話題の多い国である。日本人の多くがどのように考えているのかは知らないが、徐々にこのように話題には上るようになっており、知っておいてなんら損は無いだろう。というか、普通に知っておいていいのではなかろうか。
 よく言われているように、インドネシアは比較的人口が多いというのがある。約2億5千万の民がいて、さらに増えていく。人口ボーナスというそうだが、若くて活きのいい働き手が今後も増え続けるという状況が、自然に経済を押し上げる要因になるということだ。それだけだと「なーんだ」と感じるかもしれないが、もちろんその元となる背景がいろいろある。日本だってつまるところそういう豊富な労働力が地方にたくさんいて、そういう人材をどんどんかき集めることができたから高度成長を成し遂げることが出来たということなんで、つまるところ極めて昔の日本の条件に近いという感覚で、まずはいいと思う。
 しかしながらやはり違う国なんでいろいろ本当は事情が違う。問題も数多い。ちょっと感覚的に違うというのはイスラム国だというのはある。しかしながらこれは日本では馴染みが少ないだけという感じの宗教に過ぎなくて、いわゆるファンダメンタリズムではなさそうなのだ。イスラムでもキリストでも原理主義が厄介なわけで、寛容なら問題なし。要するに島が多くて民族が多くて、そうして統一の言語でさえないのにまとまりがある。もともと海洋国家であることから人々が歴史的に自由に行き来し、多様性を認め合う素地がある。最大のイスラム教徒を抱える国家でありながら、排除の論理があまりなさそうなのだ。さらに最大派閥というか、最大の民族が、あえて自分らの有利性を誇示するようなこともしない。主流の言語でさえあえて統一しない。このことが最大のこの国というか地域の魅力であるといえ、民主国家として大統領を選出して国を治めている。もちろん最初は軍事のトップが首に座っていたけれど、あんがいリベラルに統治し、若く米国などで勉強した人間を登用して大胆な政策を次々に打ち出して、まさにダイナミックに変貌を遂げているというのが現実のようだ。
 実業家の台頭も著しく、華僑などの外国人勢力も力を持つ。また、オランダ病といわれる資源国家としての悩みもある(これは一次資源がある国は、その所為で他の産業が育ちにくくなるということがあることを指す)。経済危機にも陥ったし、官僚の腐敗による政治危機も経験している。そういう、大変な経験もありながら、まさにダイナミックに成長をしている姿が、何より頼もしいということになるのかもしれない。日本に失われてしまった若さのすべてがある。さらに日本には無い自由と寛容さがあるということかもしれない。
 また、インドネシアは親日国でもある。先の戦争では日本軍がこの地で暴れたにもかかわらず(もちろん禍根はあろう)、寛容さのほうが勝っている。さらに若者からも自然に憧れを持って好感度の高い国といわれている。もっとも韓国も積極的に売り込みをかけており、いつまで優位性が続くかは分からないのだが…。
 要するに、もともと資源国というのもあるが、日本との関係も深く、日本の企業も積極的に進出を果たし、または狙っており、日本の援助もあるが、それだけに頼る姿勢でなく自助や勤勉さも持ち合わせている。民主国家であるし寛容性も高いことから、日本のアジアのパートナーとして自然にその地位が上がっているという現実がある訳だ。距離的にまだまだ遠いように思うかもしれないが、国としての重要性が薄れることは考えにくい。近くても付き合いにくいところと無理にどうこうするより、信用できてお互いにハッピーなところと、もっと友好になるべきだということに尽きるだろう。さらにこの関係がモデルとなって、そういう友達の輪が広がるかもしれないということかもしれない。インドネシアの国際的な発言力は増しており、どこかの極端な肩入れをして自国だけ良ければいいというような外交もするわけではない。極めて信用の置ける可能性は高いわけだ。
 この本とは直接には関係ないが、最近大統領選挙があったばかりだ(これを書いているのは14日現在)。二人の候補が激しく競り合い、結局二人とも勝利宣言をしてしまったという不思議な状況になっているが(20日ごろはっきりするらしい)、多少はそういう混乱は今後もあるのかもしれない。まあ、日本のほうが密室で首相が決まるというのがあるわけで、むしろ開かれすぎている結果かもしれない。
 将来的には確実に経済規模としては日本を抜き去ることは確実視されている国である。日本は日本の生き方を模索しなければならないが、見習うべきは素直に目を向けて考える必要があるだろう。個人的に惜しむらくは、支店長と話をする前に読んでおけば良かったな、と思ったことだった。
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