映画を観る楽しみにファンタジー世界を堪能するってのがある。でもまあ、ファンタジーというのは、実は厳しい世界だったりするわけだ。もしくは、人はどうしてファンタジーを欲するのか? という問題だったりする。
「パンズ・ラビリンス」は、残酷な世の中にあって、心の平安を持つと、このようなダークなものになってしまう、という話なのかもしれない。いや、そうじゃないかもしれないのだが、この気持ちの悪い違和感に、恐れながらも興味が尽きないのであった。
日本人というのも変な人が多い国である。「散歩する侵略者」は、その変な国ぶりがいかんなく発揮されている。その変な世界に生きながら、その変な人たちを放って置くことができない変な日本人がいる。と考えると、ちょっと怖い気もする。まあ、面白いんで、いいですか。
でも韓国になると、かなり違う。「バーニング」は村上春樹原作だが、そうして確かにそんなような話のはずだが、韓国映画らしい恐ろしさに打ちひしがれる。親戚であるお隣の国で、いったい何がこうも違うのだろう。いい映画って感じではないが、作品には力がある。最後の勝負で日本人には出せない底力が、韓国人にはあるように思う。
「岬の兄妹」の設定は衝撃的だが、社会派の物語なのかどうかはよく分からない。ある意味で可哀そうだけれど、しかし、ある意味で、彼らの選択でもあるからだ。孤立した社会だとこうなってしまいがちかもしれないが、現代日本では、こういう選択をする人は少数派だ。しかし、簡単にそうなってしまいそうな人たちは居て、それが障害者だということなのかもしれない。
「魂のゆくえ」は、基本的に何もかもクレイジーなのだけれど、それが宗教であり、原理主義的な現代人の素直な姿なのかもしれない。おそらく現代人が共通に認識しているはずの問題意識というものがある。例えば地球温暖化のようなイシューでもいいが、しかしそれは、個人の問題に還元すると、どうすべきなのか。こじれていく解決方法が、この映画の回答のようなことなのかもしれない。
パンズ・ラビリンス/ギレルモ・デル・トロ監督
散歩する侵略者/黒沢清監督
バーニング劇場版/イ・チャンドン監督
岬の兄妹/片山慎三監督
魂のゆくえ/ポール・シュレイダー監督