お日柄もよくご愁傷様/和泉聖治監督
結婚式の仲人を頼まれている式の日に、父親が突然亡くなってしまう。相手にも迷惑がかかることだし、とりあえず式に出て滞りなく役割を済ませて、父の葬儀をその後にしてしまおうという、実際はそれだけのお話し。大変なんだが、そういう選択はまったく無いではない。年齢や時期によってはそうはいかない事もあるだろうが、父親もそういう年でもあるから、致し方ないと考えてもおかしくは無い話なのである。しかしながら臨月の娘は旦那とけんかして里帰りしているし、もう一人の娘はジャーナリストの彼氏との結婚前のようである。それも大変だが、まあ、よくある話なのかもしれない。いろいろ愚痴を言ったり妙に説教くさいところを見せる父親ではあるが、ある意味ではまじめな家庭ということなんだろう。忙しさがいろいろ重なることで、そういうホームドラマが濃密に展開されるということになる。コメディなのだが、深刻な問題もある。みんな何となく頼りないような人達ばかりだけれど、物事はそれなりに収斂していく。身に覚えのあるような事もあるし、ちょっとありえないかなと思うこともある。それでもなかなか上手くまとまったドラマの展開だということは言えるだろう。
坦々としたドラマの羅列で終わるのかと思ったら、最後はラブロマンスにまで展開する。ちょっと驚きという感じもするが、妙なお得感のあるのも確かだ。いや、むしろ後半の流れの方が、本当にメインなのである。そういう意味では大どんでん返しに匹敵する変な映画である。
葬式も結婚式もそれだけでそれなりのドラマ性がある。それは当事者だけの問題では無い。だから題材としては使いやすいものかもしれないとは思う。しかしともに何となく相反する設定ではある。それをごちゃまぜにして本文にはしない。人を食った映画とも言えるし、何となく名作めいた気分にもなる。深く考えさせられる映画では無いかもしれないが、やはり家族とは何かなどと考えてみたりする。何もかもが自分の思惑通りになる訳ではないが、やはりそれでも悪くないではないか。妙な話でも達観は出来る。ひょっとすると、それは監督さんの思惑通りなのかもしれない。