カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

とにかく書ける人よでてこーい   書きたい人のためのミステリ入門

2021-03-28 | 読書

書きたい人のためのミステリ入門/新井久幸著(新潮新書)

 著者はミステリ作品を主に担当してきたという編集者。仕事柄ものすごくたくさんの作品を読んできたということがあって、さらに新人賞などのために持ち込まれた作品も、それこそたくさん読み込んできたという事もあって、どのような作品が素晴らしいのかという事を熟知した人だといえるのだろう。また出版社の人だからこそ、どのような作品がプロとして売れるという事もわかるという事なのだろう。おそらくだが、そういう場面で作品指導も同時にこの本の内容のようにやっているという事なのではなかろうか。
 まあ、そういうことではあるんだが、基本的に自分が読んできた読書遍歴と、それによって感じてきたミステリ作品群のブックガイド的な内容になっている。そもそも作品をどういう風に書くというよりも、ミステリとして新しい作品を今後も読んでいきたいがために、そういうミステリ作家を目指して頑張ってほしいという応援歌のようなことかもしれない。そういう意味では、ミステリファンとして、もっと楽しみたいということだろう。
 結論として言うならば、これを読んだからと言ってミステリ作品を書けるようになるという本ではないようにも感じる。著者はミステリ作品を愛しているのかもしれないが、ミステリ作品を評価する目は持っていても、書ける人ではないようだ。どのように書けばいいということは言えても、やはり書く人というのは、また別の人なのだ。それに書く人というのは、どのように書いたらいいのかの前に、書きたくて書くタイプの人が圧倒的で、どのように書くかなどと悩んでいるような人は、もうすでに出遅れていて、たぶんその後も書かない。作家になっている人のインタビュー集のようなものを読んだことがあるけれど、ほとんどの人は書くことに苦しむことはあったとしても、それでも書かずにおられないというような意味のことを言っていたように思う。作家というのはそういうものらしく、たとえアイディアを絞ることにうんうんと唸っていたとしても、結局は書いてしまう。失敗したと思ったかもしれないが、やっぱり書いて推敲して、書き直して、また書くのである。方法としてはそれしかないのじゃないか。
 さらに読んでいて思ったのは、ミステリ愛好家というのは、驚くべきトリックが好きというのがあるようで、紹介されている評価の高いミステリの類いは、いわゆる僕らからするとバカミスといわれる、現実的にはとてもありえないトリックを競う作品が多いのだった。確かにそういう愛好家がいてもいいとは思うが、一般的に本を読む人々にとっては、そんなのはあんまり面白いわけではない。少なくとも僕はそうなのだ。まあ、仕方ないから読んでしまうことはあるけど、トリックが新しかろうとどうだろうと、展開が面白ければいいと思うんだけどな。どうなんでしょう。他の皆さんは。
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