刑事コロンボ・二つの顔/ロバート・バトラー監督
いつものように犯人は最初から分かっているように見える。そこのところをうまく利用したいつもとは違う味の作品である。
コロンボが捜査の段階で犯人に嫌われるのはいつものことなのだが、今回は犯人以外からも激しく嫌われることになる。それはギャグだったり伏線だったりするのだが、嫌われて当然のデリカシーの無さ。さらに言い訳もするが、今の時代だったら到底その理由にも納得ができないものだ。当時はむしろおおらかであるということが垣間見えるわけで、現代社会だとコロンボは捜査をすること自体がかなり困難そうに思える。葉巻も他人の家の植木に投げ捨てたりするし、普通にだらしないチンピラのようなものなのかもしれない。僕らは昔からのファンだから、そういうところも愛らしく見えるわけだが、コロンボが生きにくい社会になっていることを改めて感じずにはいられないわけだ。
被害者のフィアンセにしてもコロンボのことを嫌う。こういうのはなんとなく珍しい気もする。コロンボはむしろ、彼女の味方のはずなのに…。そうして途中では不必要にさえ見える退場もしてしまう。これで犯人が捕まらないわけにはいかなくなるわけで(いや、最初からそうでなくては困るが、倫理上これは行き過ぎた状態だろう)、なんだかちょっとかわいそう過ぎる気もするのだった。また、捜査の段階で殺した後にうまく逃げ切ったというだけの説明だけれど、そういうリスクがさらりと済みすぎる当時の警察力にも疑問が残るものだった。
コロンボのテレビ出演であがってしまう場面もあるし、犯人の二役の映し方のうまさもあるし、なかなか見所も無いではない。弁護士の狡猾な悪さも面白いし、結果的に家政婦と和解するだろう結末もいいだろう。しかし、そういうものを含めても、なんとなく、まあそんなもんかなという鑑賞時間を過ごした感じになってしまった。コロンボ作品は過去にほとんど見ている(一番新しいシリーズ以外)はずなのに、まったく覚えている要素が無かったのも、なんとなく納得できる作品という感じがしたのだった。