11人いる!/萩尾望都著(小学館文庫)
宇宙大学の最終試験は、外部との接触(助けを呼ぶなど)をしたら終了という状況で宇宙船に乗り込んで53日間放浪する、というサバイバルものだった。10人1チームで行うことになるのだが、なんと、最初から11人いるのである。誰かが秘密で何の意味があるか分からないながら紛れ込んでいることは確かだ。最初は犯人捜しのようなことで混乱するが、宇宙船の中でもトラブルがいろいろと起こり、文字通り協力しなければサバイバル試験に受かることができないのだった。
超名作の名高い作品で、当然ながら僕も読んだことがあるはずで、どこかにすでに思っているはずの本である。最近萩尾望都の解説がなされたテレビ番組を見て、懐かしくなってまた手に取ったのだ。それというのも持っているはずの本は見つからないし、「ポーの一族」も「トーマの心臓」もよく覚えているのに「11人」はなんだか忘れていたからである。
これを読んだのは、中学生の時に同級生の女の子が教えてくれたからである。僕はSF漫画や小説などを読み始めたころで、しかし男物(少年)の作品しか知らなかった。だからちょっと抵抗はあったし、絵柄がいわゆるメカニック中心のかっこいいSFという感じではない。しかしとにかく面白いんだから、っていう話で、読んだら衝撃を受けた。その後「ポー」や「トーマ」で、さらに爆発的な衝撃を受けることになるのだが、その前哨戦として、十分に驚いたし、やはりこれを読んだ後だからこそ、「ポー」などの作品も受け入れやすかったのではなかろうか。
今回読み返してみて思うのは、思ったよりバタバタした展開やコマ割りだし、ギャグも多かったんだな、ということである。読み物として少年少女に親しみやすい配慮をしている、という感じもする。しかし一方で、それはそれでやっぱりSF的な要素もしっかりしている。つまり、やっぱり傑作なのだ。
僕らは萩尾望都の存在した世界に生まれてきて、つくづく幸福だと思う。萩尾望都が居なかったら、こんなに豊かな世界では無かっただろうから。ということで、大部分忘れていたので、本当に楽しめました。