
アントキノイノチ/瀬々敬久監督
映画的にははっきり言っていま一つだが、企画的によかったのだろうな、と思う。原作がさだまさしで、若手の俳優も売りになり、脇を固めた俳優陣も話題性がある。内容としても興味深い感じもするし、そのような中での演技合戦も丁寧に描かれている感じだ。もちろんそれらが上手く行く場合はあるとは思うが、要するにそれらが上手くいってないという事かもしれない。それらしい感じであるのに、実際にはそれらしくなく、つまりまったく上手くいっていない。どうしたのかな、と皆思いながら頭をかいてしまう。
時間の使い方かな、とも思う。間、ということか。吃音のある人を知らない訳ではないが、そのこととのギャップが大きいのかもしれない。確かに慣れるまでぎこちなさを感じるのだけれど、それなりに慣れるというのがある。集団だとなかなかそのテンポがつかめないかもしれないが、しかしそれは慣れるたぐいのものだ。そういう共有の時間が映画的にむつかしい。そんな感じかもと思う。
いじめ問題もそうかな、と思う。これだけの反撃が出来るなら、とも思う。分からないくせに言うな、と怒られるだろうか? でも、やはりそれらしくない。これは願望の話かな、とも思う。邪悪な理由もよく分からないし、傷ついた人間同士の分かり合える感じも分からない。いや、実際は想像力で分かるような所は分かる。映画としてそこまで行けてない感じが最後までする。苦しさの狂気がきれいすぎるのではないか。
ところでしかし、それはやはり当然なのだとは思う。俳優さんたちは一般の人たちより美しい人が多い。それ自体が人の興味を呼んで、それが興行になる。だから夢のような話で十分いいのだけれど、映画のお話を追う場合、それが大変に邪魔になるという事がある。結局そのことを超えて何かが演じられなければならないのではないか。そういう思いが残ってしまって、やはり残念な思いがするのだった。