カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

羊は可愛くて怖い   LAMB/ラム

2023-01-27 | 映画

LAMB/ラム/ヴァルディミール・ヨハンソン監督

 舞台はアイスランドあたりの山あいの牧場。あたりには他に人の住んでいる気配すらない牧羊の地であるようだ。吹雪の夜、山から何かがこの牧場へやって来る。羊たちはおびえ逃げようとするが、一匹だけ痙攣して倒れてしまう。
 羊たちは出産のシーズンになる。順調に生まれ牧場には豊かな空気に包まれる。夫婦は二人で支え合いながら働き、牧場を切り盛りし、それなりに満ち足りた毎日を送っているように見える。しかしそんなある日、羊の生んだ子羊に、何か異質な感じが満ちる。映像では分からないが二人は驚きながらもとりあげ、マリアはその羊を抱いて奥へ連れていく。自分たちの寝るベッドの横で毛布にくるんで大切に育てるようになる。
 後にわかるがことになるが、この子羊が明らかに異質な存在で、映像も妙なトーンが被るようになる。男は最初トラクターの中で一通り泣くが、その後は何もなかったかのように幸せな顔をして、妻と一緒に羊の子育てにいそしむ。そうしてそんな中に、何か問題を抱えて逃げ出してきたような夫の弟が帰って来るのだった。弟はこの世のものとは思えない羊の子供を見て激しく動揺するが、果たしてこの状態をどうしたらいいのか、考えあぐねていくようなのだった……。
 よく分からないものの、何か自然と人間との間に起こりえない不思議なことが起こりつつあって、普通なら現実には受け入れるはずのない人間が、過去にこころの瑕を抱えていることがおそらく原因になって、むしろこれを積極的に受け入れようとする。よく分からない表現は多いけれど、これはたぶん何かの符号と絡んでいて、それはこの土地に伝わる伝承神話のようなものなのではないか。人間は自然の中で一体となって暮らし、契約のようなものを結んでいたはずなのだ。現代人には知る由も無いが、そのようなルールと、人間のしあわせを考えたものの、不都合が混ざり合ってしまったのだろう。
 かなりショッキングで受け入れがたいものがあるにせよ、最小限の説明の下で、さまざまな人間の葛藤が見て取れる。動物たちも動揺しながら、人間の葛藤に付き合っている。そうしていっときの、融合したしあわせな時間は流れていくように見えるのだった。もっとも見ている分には、ずっと不穏な空気の中にいることは明白なのだけれど。
 いちおうホラー作品なのかもしれないが、そういうものだけではない。人間の存在も残酷だし、自然もさらに残酷だ。それが大自然の中で生きていく人間の宿命であるということなのかもしれない。
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