修羅雪姫/藤田敏八監督
梶芽衣子主演の伝説的映画。父を無残に殺された恨みを母から託された女性の復讐劇。ついこの間死んだ小池一夫原作で、内容的にはほとんどマンガ(劇画)である。父が唐突に殺されるのも不条理だし、それで犯人たちが何事もなく生き延びるのも漫画だからだろう。さらに復讐途中で獄中死する母の希望を聞いて、復讐心をたぎらせる少女時代の修行も漫画である。さらに幼児ポルノ的描写もあって、それなりのサービス精神とは言え、単にエロである(そこがいいのだろうけど)。とにかく星飛雄馬的に修行を積んで強くなって、次々に復讐していく。血糊が赤すぎて人間っぽくないが、そういうものを楽しむためなのだろう。途中でプロモーションビデオのような歌も入ったりして、考えてみると、ミュージカルというか、演劇の世界のような盛り上げなのかもしれない。
とにかく梶芽衣子が暗いが美しく、ダークだけど潔くかっこいい。映像的にも美しく、なかなか考えて作られていることがよくわかる。昔の娯楽映画がいかに優れているか、今の日本の監督さんたちは反省すべきではないか。まあ、時代錯誤があるので作れないのは分かるけれど、面白いものは面白いので伝統を受け継ぐべきだろう(馬鹿にされるかもしれないが)。
復讐に次ぐ復讐に、妙な恋愛チックなものも混ざるが、肉親が混ざり合って愛憎劇を作るという浪花節的な世界観というのは、日本をはじめアジアに共通のもののように感じられる。いつの間にかこのようなものは消えてしまったわけだが、いまだに韓国映画ではこのような設定は多いようだ。やっぱり人間の感情としては、このような怒りが一番燃えやすいということがあるのだろう。さらにカタルシスも得られやすいのだろう。なんとなく恥ずかしくなってやらなくなったのだろうけど、このような単純な世界で楽しむということを経験したうえで、段階的に複雑な心を理解していくしかないのではないか。
もっとも本当には成長できてない精神の人間が言っても、信用は無い話かもしれない。