既に紹介した本は除外して、紹介もれをいくつか振り返ってみる。どういうわけか今年はあんまり本を読まなかったのだけど、年をとると疲れやすくなるためだろうか。まあ、それはそれでいいけど、好奇心が減退するようで、気分的には今一つだった。暇になったのに読めなくなるなんてなんだかもったいない話である。
モテたい理由/赤坂真理著(講談社現代新書)
さて、これは日本の女性論というものらしい。僕は女性雑誌をまともに開いたことがほとんど無いので、こういう世界が展開しているなんてことはまったく知らなかった。女という生き方は本当に大変だと心から思った。後半もなんだか凄い展開になって、結構面白い。日本という立場もそうだったんだ、という感じ。なるほど。
ラクをしないと成果は出ない/日垣隆著(大和書房)
多少勇み足のようなところもあるけど、立ててある項目を読むだけでも面白い。効率化のノウハウが詰まっており忙しい人はこの本を読んでから忙しさにアタックしてもいいんじゃないか。まあ、やるべきことはルールに従ってやるというのが結局は早道ということなんだろう。
チームハックス/大橋悦夫・佐々木正悟共著(日本実業出版社)
これは仕事をする上でものすごく参考になった。特にチームを作って何かに取り組まなければならない仕事(一般の仕事はほとんどそういうことが多いだろうけど)をしている人には、かなり納得できる仕組みが満載でお得である。プレッシャーがやる気になるというはその通りだし、やらざるを得ない状況をつくることが結局やる気になったりする。当たり前だけど、そういう当たり前の状況になかなかなれない仕組みになっている職場環境がかなり存在するのではないか。
「ことば」の課外授業/西江雅之著(洋泉社新書)
これは素直に面白い読み物だった。僕らは言葉というものをかなり勘違いして捉えているのではないかと目から鱗が落ちた。言葉が正しいとか正しくないということ一つでも、考え方でずいぶん違ってしまうものである。別に難しい話はほとんど無いので、なるほどという世界を散歩されてはいかがでしょうか。
本はどう読むか/清水幾太郎著(講談社現代新書)
この古典は名作といっていいのではないか。ブログ書いている人は結構参考になると思う。文章も面白いし、ちっとも古くなっていない。読書論というのは鼻につくものが多いものだけど、これは全然そんな感じが臭わない。僕はこの本を読んで無謀にも洋書にチャレンジしてみる気分になったが、やっぱりちっとも歯が立たなかった。内容に感銘を受けても、受け取る人間の能力の低さをすべてカバーできるわけではない。まあ、これからもコツコツやるよりないんでしょうね。これは生き方にも影響を与えうる教養書の見本のような本であった。読むべし。
空中ブランコ/奥田英朗著(文藝春秋)
まあふざけたものも読んでリラックスするのもいいだろう。僕はこの本を或る人の入院に際してプレゼントした。明るい気分になれるんじゃないかと思ったからだ。主人公はかなりハチャメチャだが、何故だか本当に救われる気分にさせられる。何じゃこりゃという話ばかりだけど、結構真実をついているんじゃないかとも感心してしまった。
きみのためのバラ/池澤夏樹著(新潮社)
小説家なんだから当たり前のことなんだろうけど、文章が上手だなあと思った。ちょっと寓話と説教が混ざったものもあるにはあるが、言わんとすることに反発は感じない。そして実際の話、たぶんそうなんだろう。人間を仔細に観察して考えたことが物語として語られている。ジワリとしみいるように軽く感動するという感じが心地いいのだった。
その数字が戦略を決める/イアン・エアーズ著(文藝春秋)
やっぱり直感だけでものを考えていては駄目なんだな、と思う。統計の数字はどのようにとってどのように考えるのか。今はコンピュータの関係で、ものすごく大きな数字を扱えるようになった。そうすると人々の感情のようなものも数字として読み取ることができるようにもなっているのである。まったくの個人の感情は歯が立たなくても、集計して動向を調べて手を打つことはできる。それでも直感で動いている人は、結局この人たちには勝てないのかもしれないのであった。
ピギー・スニードを救う話/ジョン・アービング著(新潮社)
小説家がどうして物語を紡ぐのかということが、これほど腑に落ちたことはなかった。それはペギー・スニードを救うためだったのだ。もちろんその何故は、読んで確かめてほしい。この一話を読むだけで、人生というのは無限大に豊かになっていくのではないか。たとえそれが小説家でない人であっても、少なくともこの話の教訓は身につけて損はしない。僕もペギーを救うことができるといいなあと思う。もちろん小説を書く以外の方法で。