録画していたNHK特集を観る。
尖閣諸島近海の中国と日本の緊迫した状態を伝えたドキュメンタリーで、日本の自衛隊幹部(元も含むようだ)と中国人民解放軍との対話の場面も紹介されていた。むしろこの対話というのが、実際の衝突をギリギリのところで回避させているともとれて、なかなか興味深い内容だった。お互いにかなり危険な立場にいることと、相手の行動に対して率直に意見を交わしていることが分かった。
一方的に領海に侵入したり威嚇ともとれる行動を取っているように見える中国だが、台湾問題の懸念や自国領域の資源の問題、日本の監視に対する神経質な対応や、米国と日本との関係に神経を尖らせていたり、結局はその米国そのものに対する脅威についてや、中国国内世論の圧力などによって困惑している軍部の姿も映し出されていた。ある意味で日本の自衛隊も同じように困惑しているということなのだろう。前線にいる軍人にとっては、まさに生死をかけた(結果的には両国国民もそうなのだけど)やりとりが続いているわけで、対話無しに、相手の考えのディティールの理解なしにおられないというのは、まったくそのとおりだろうと思った。今後とも密な対話が途切れることは、許されることではないのであろう。
また、尖閣諸島問題を最重要としてあえて取り上げない(事実上棚上げ)という申し合わせを提案したり、進行役をしているときは、微妙にはぐらかしたりする人民解放軍の姿もあって、苦悩が感じられるとともに、やはり本当に危険な緊迫状態にあることに変わりがない事は間違いなさそうだった。本音としては衝突したくないが、衝突もやむなしの時はやるのだということなのかもしれない。
日本の潜水艦の演習も紹介されていて、実際には首相の命令が無ければ発射出来ない魚雷の発射訓練もごく普通に行われていた。現場というのは、当たり前に準備をしているのだ。
力に対しては力でねじ伏せるというのは威勢のいい話だが(もっともそういうバランスを取る努力は怠れないのだが)、結局は仲のいい相手なら、実際の脅威にはなり得ない。しかしながら、隣人問題というのは非常に厄介で、仲が良くても衝突は当然起こり得るものなのだ。脅威は脅威として無くなりはしないものの、だからこそ政治に左右されずに対話ができる関係が大切になるわけだ。
衝突が起きない事が何より大切だけど、衝突や紛争に発展した場合にもどのような対応を取るべきなのか、考えておく必要もあると思う。あってはならないことだから考えない、というのが日本の姿勢のようにも思えて、これはもっとも危険な対応だろうと思えてならないのだった。