カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

居なくなってもお終いでは無い   岸辺の旅

2017-03-15 | 映画

岸辺の旅/黒沢清監督

 3年前から失踪していた夫が、幽霊となって帰って来た。亡くなっていたのは3年前だったようだが、その後いろいろあったらしく、観てきた美しい風景を一緒に観たいということで、一緒に旅に出ることになる。夫が幽霊として接してきた人たち(生きているとは限らない)との出会いのエピソードがつづられていく作品。
 原作小説があるらしい。が、映画としては、れっきとした黒沢清作品。いい意味でまともでは無い。いわゆる変なんだけど、安心して観ていいと思う。そういう気分になるかどうかは別だが…。作品としてはそんなに話題になったとは記憶してないが、海外での評判が高いとは聞いていた。これまでもそういう傾向はあったが、まあ、確認程度はしておくか、ということで観た訳だ。結論としては、大いに納得。大変に素晴らしい作品だった。
 ホラー要素はあるにはあるが、怖いというようなことでは無い。不穏な空気を映す映像作品でありながら、まあ、それなりに変わってはいるとは思うが、ちゃんと感動作品として成り立っている。少なくとも人間の気持ちの整理が大切だというのは、言葉で伝わる以上に伝わってくると思う。なんだか本当にいい話だな、と、しみじみ感じて、後味もいい。難点があるとしたら、それなりに重要な感じの科白が聞き取りにくいという日本映画特有の問題はある。DVDだから、仕方なく、後で字幕で見直した。映画館だと、? のまま終わったに違いない。まあ、それでもいいと言えばそんなことは無かったと思うが、仕方ないダメさだろう。だから日本映画の多くは映画館で観たくないだけのことで、僕にとっての日本語の壁である。
 死んでいるのに不自然なところがたくさんあるのだが、まあ、そういうことは特に考えない方がいい。全部の謎がすっきりすることも無いと思うが、それもまあ、勝手に自分で補完して考えたらいいと思う。幽霊が人間の常識のようなもので成り立っても仕方がない。足もちゃんとあるが、それも本当に重要なのか、誰が分かるというのか。
 映画とは話がそれるが、日本だけでもそれなりに失踪したままの人というのはたくさんいるのではないか。本人も事情があろうが、残された人はやはり大変に可哀そうである。そういう気分のようなものを、なんとなく感じ取ることができるようにも思う。死んでしまったものは仕方がないが、本当にそれで済ませることができるのだろうか。人間というの生き物はつくづく厄介なものである。
コメント
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