ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

人権侵害救済法案が閣議決定

2012-09-20 10:48:37 | 人権
 政府は19日、人権侵害救済機関「人権委員会」を法務省の外局として新設する人権救済機関設置法案を閣議決定した。今秋の臨時国会への提出を目指すという。
 この閣議決定は、国会の閉会中に行われた。また法案に慎重な松原仁国家公安委員長は外遊中であり、こうした時期を狙ったものと見られる。
 民主党はマニフェストに人権侵害救済法案の成立を掲げている。この3年間、成立を図る動きが続けられてきた。民主党は、次の衆議院選挙で政権から転落する可能性が高い。今回の閣議決定は、国会閉会中のものゆえ、今秋の臨時国会に提出する時は再度、閣議決定をする必要がある。わざわざ解散総選挙を前に閣議決定をしたのは、この法案の原案を作った解放同盟を始め、民主党の支持団体にアピールするためだろう。
 法務省は昨年12月15日、「人権救済機関設置法案」(仮称)の概要を発表した。今回閣議決定された法案は、法務官官僚の作った概要を踏まえたものだろう。法務省による法案概要は、従来の法案が若干手直しされていた。だが「少しハードルを低くしてでも法案を成立させ、後で段階的に内容を強化していこうという算段だろう。本質的な危険性は、全く変わっていない。とんでもない悪法である」と、私は本年1月7日の日記に書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/e5d973d8f353eeddc19321c1fbd00a5a
 だが、マスメディアや有識者・言論人は、法務官僚の巧妙なソフト戦術に籠絡され、法案の危険性に鈍感になっている。現在、国民は自民党総裁選と民主党代表選、また尖閣諸島を巡る中国との緊張関係に関心を向けている。マスメディアは、それらの報道に力を入れ、人権侵害救済法案については、ほとんど国民に知らせていない。
 法案の最大の問題点は、人権侵害の定義が相変わらず曖昧なことである。「不当な差別、虐待その他の人権を違法に侵害する行為」というが、これではどうとでも拡大解釈ができてしまう。人権侵害が乱用される危険性がある。現在でも、法務局は人権侵害の訴えがあると任意の呼び出しを行っている。あえて新法を作り、権限を拡大する必要はない。人権侵害救済機関は、政府から独立した権限を持つ「三条委員会」として設置される。任意調査しか行わない組織を「三条委員会」にするのは、将来、強制調査権を付与するためだろう。人権委員会が強大な権限を振るようになると、言論統制や密告等によって国民の権利侵害が深刻化する。さらに、市町村に置く人権擁護委員には日本国籍の有無について規定がない。地方参政権が付与されれば外国人でも就任できる。人権救済法案を推進する勢力と、外国人参政権付与実現をめざす勢力は重なり合う。もし地方参政権を得た在日韓国人や在日中国人が人権擁護委員に就任すれば、本国政府の指示のもと、人権侵害を政治的に利用することは目に見えている。
 法案は、与野党の多数派が衆参両院で異なる「ねじれ国会」のため成立する可能性は低い。だが、油断はできない。民主党執行部は閣議決定をもとに、党員に法案賛成を求めるだろうし、公明党は法整備に積極的である。自民党にも法案に賛同する議員がいる。私は、自民党の総裁選挙の候補者は、野田内閣が人権侵害救済法案を閣議決定したことを総裁選で取り上げ、国民に問題点を明らかにし、次の衆院選挙における争点の一つにしてもらいたいと思う。
 人権侵害救済法案という日本破壊の悪法を絶対成立させてはならない。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成24年9月20日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120920/plc12092000320000-n1.htm
人権救済法案閣議決定、選挙に向け「どさくさ紛れ」で実績作り 保守系から強い懸念
2012.9.20 00:31

 政府が19日、「言論統制につながる」との批判が絶えない人権救済機関設置法案(人権救済法案)の閣議決定に踏み切ったのは、衆院解散・総選挙をにらみ、人権団体など民主党の支持基盤にアピールするための「実績作り」が狙いだ。民主党代表選や中国による沖縄県・尖閣諸島での挑発行為のさなかに「どさくさ紛れ」で既成事実を作ったと指摘されても仕方がない。(千葉倫之)

 法案の最大の問題点は、救済対象となる人権侵害の定義が「不当な差別、虐待その他の人権を違法に侵害する行為」とあいまいで、拡大解釈の恐れがあることだ。これまで全国の弁護士会が行った人権救済勧告では、学校の生徒指導や国旗・国歌に関する指導、警察官の職務質問が「人権侵害」とされた事例もある。
 新設される人権委員会が偏った思想・信条に基づく申し立てに公正な判断を下す保証もない。法案は人種や信条などを理由に「不当な差別的取り扱いを助長・誘発」する目的での文書配布なども禁じているが、これでは北朝鮮による拉致問題への抗議活動も「不当な差別」とされかねない。
 ましてや、公正取引委員会などと同じ「三条委員会」として政府からの独立性と強い権限が与えられるため、「人権の擁護に関する施策」を推進する人権委員会が人権侵害の片棒を担ぐ可能性もゼロではない。
「人権委を一度設置すれば、将来、法改正することもできる。『小さく産んで大きく育てる』のが推進派の狙いだ。人権侵害の定義もあいまいで、権力による言論弾圧につながる」
 人権救済機関設置問題に詳しい日本大学の百地章教授(憲法学)はこう述べ、閣議決定を強く批判した。
 国会閉会中を狙った唐突な閣議決定も、与野党に波紋を広げた。
 自民党総裁選候補者は19日、「言論の自由の弾圧につながる」(安倍晋三元首相)、「なぜこのタイミングなのか」(林芳正政調会長代理)などと一斉に批判を始めた。民主党からも「慎重派の松原仁国家公安委員長が外遊中の閣議決定は理解に苦しむ」(長尾敬衆院議員)との反発の声が上がったが、野田佳彦首相の周辺は「慎重な閣僚がいないから閣議決定してもいいではないか」と話した。
 法案には選挙で影響力を持つ人権団体のほか、公明党も法整備に前向きだ。「解散風」が強まる中、今秋の臨時国会で成立する可能性は否定できない。
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関連掲示
・拙稿「人権ーーその起源と目標」
 ただいまMIXIとブログに連載中
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/df06780f00ced3812d367cb5562b2fb6

尖閣の守りに自衛隊を~志方俊之氏

2012-09-19 08:55:16 | 尖閣
 帝京大学教授・志方俊之氏は、今年4月、民主党・田中直紀防衛大臣のもとで、防衛大臣補佐官に就任した。素人以下の防衛大臣のもとで、よく補佐官の仕事を受けたものだと思うが、6月に田中氏が解任され、森本敏氏が防衛相に就任すると、志方氏はわずか2か月余で補佐官を退職することになった。せっかく国政に参与した優秀な人材が、短期間で職を離れたのは、残念なことである。
 私は、志方氏のほうが森本氏より、防衛大臣にはふさわしいと思っている。森本氏は、政界では安全保障の専門家として評価が高く、石破茂氏でさえ一目置いているようだが、森本氏の政治思想は保守系リベラルであり、歴史認識は自虐史観に近いと私は見ている。案の定、森本氏は今年8月、韓国の李明博大統領が竹島に上陸する暴挙を行うと、これは「内政上の要請だ」と発言した。この一言で、防衛大臣は失格である。森本氏の見識のゆがみは際立っている。志方氏が防衛相であったなら、きちんと国益に基づく見解を示したに違いない。
 さて、志方氏は、産経新聞9月12日号の正論欄に「自衛隊抜きに語れぬ尖閣の守り」と題する文章を書いた。この文章は、前防衛大臣補佐官の文章としても重みがある。
 志方氏は、次のように言う。「海空軍力の増強を背景にした中国の『尖閣盗り』は、日米同盟の一瞬の隙を突いて行われるであろう。その時が来るまでは、人民解放軍の独特の政治戦略である『三戦(法律戦、世論戦、心理戦)』を駆使してくることだろう。
 『法律戦』では、東南アジア諸国などと領有権を争う南シナ海の南沙(スプラトリー)、中沙、西沙(パラセル)の諸島をまとめて、『三沙市』なる行政区を設けたように、『釣魚(尖閣の中国名)市』を設置する手続きを取ることが考えられる。『世論戦』では、今回行われたように、主要都市で暴徒化しないように制御しつつ反日デモを組織し、メディアで全世界に見せる。『心理戦』では、日米安保体制を弱体化させるためなら、ありとあらゆることをしてくるであろう。『戦わずして勝つ』という古くから伝わる孫子の兵法である」と。
 補足すると、米国国務省の見方では、法律戦は「国際法及び国内法を利用して、国際的な支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する予想される反発に対処すること」、世論戦は「中国の軍事行動に対する大衆及び国際社会の支持を築くとともに、敵が中国の利益に反すると見られる政策を追求することのないよう、国内及び国際世論に影響を及ぼすこと」、心理戦は「敵の軍人及びそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理作戦を通じて、敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させること」である。
 この中国の法律・世論・心理の三戦をよく分析し、これに対抗することが、わが国の防衛において非常に重要である。国防は、軍事力の強化だけでなし得るものではなく、政治・外交・教育等、総合的な取り組みがされてこそ、最後の手段としての軍事力の行使が生きるのである。
 志方氏は、尖閣諸島の防衛は自衛隊抜きでは為し得ないと見ている。海上保安庁法、外国船舶航行法が改正されたことは大いに評価できるが、「海保による警察行動では不十分になった場合、海自の海上警備行動へ途切れずに移行できるよう、現場だけでなく首相官邸の情報共有と指揮統制能力をかねてから鍛えておくことも欠かせない」と志方氏は主張する。そして、自衛隊については、直ちに取り組むべきことを3点挙げる

①「自衛隊の態勢も、南西諸島各島に小規模な沿岸監視チームを常駐させて強化する。ある離島が外敵に占領されたら間髪を入れず逆上陸作戦ができるよう、西方普通科連隊を本格的に海兵隊化し、水陸両用の装甲車両を導入する」
②「海自では、陸自の水陸両用装甲車両を搭載して発出できる新型ヘリ搭載護衛艦を建造し、配備すること、空自では、南西航空団の2個飛行隊化を繰り上げ実施すること、そしてF35戦闘機導入のペースを加速することである」
③「統合レベルでは、南西諸島防衛の統合任務部隊を常設化し、同部隊の米軍との警戒監視や偵察活動における日米共同訓練を恒常化することが喫緊の課題である」

 これら3点に関して、私見を述べると、まず陸上自衛隊の一部を海兵隊化し、水陸両用の装甲車両を導入することは、重要なポイントだと思う。尖閣諸島などの離島を守るには、陸自が上陸して防衛にあたらねばならないが、上陸には海自の協力が必要である。しかし、緊急出動は、陸海ともに行動できる能力を持った部隊が行くのが早い。その部隊には水陸両用車が必須である。また陸海空の統合部隊を作るのもよいと思う。部隊南西諸島のどこかの島に基地を置き、統合部隊を配備して、ミサイルや戦闘機で即時対応できるようにする。これによって、中国に対する抑止力は格段と高まるだろう。なお、これらの方策は志方氏の独創ではなく、例えばこれらを含む国土防衛策を、田母神敏雄氏は著書『田母神国軍』(産経新聞出版)で発表している。
 ただし、装備の充実には、時間もかかるし費用もいる。今すぐできる方策を打たないと態勢不十分なところを中国に衝かれる。領域警備の緊急立法が望ましいが、これも今の内閣と国会では時間がかかる。そこで、尖閣諸島に自衛隊員を陸上配備するのがよいと思う。国有地の防衛に自衛隊を充てるのだから、法的問題はないだろう。内閣総理大臣が、自衛隊法76条に基づく防衛出動を発令すれば、さらによい。要は、国家指導者の覚悟次第である。
 以下は、志方氏の投稿記事。

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●産経新聞 平成24年9月12日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120912/plc12091203190007-n1.htm
【正論】
帝京大学教授・志方俊之 自衛隊抜きに語れぬ尖閣の守り
2012.9.12 03:18

 韓国の李明博大統領による島根県竹島への上陸強行で、困っているのは韓国の方ではないか。年末に選ばれる韓国の新政権は、傷つけてしまった我が国との関係修復にかなりの力を注がなければなるまい。日韓関係は経済面だけではない。韓国の防衛は、在韓米軍、正確には在韓国連軍と、それを背後から軍事的に支える日米同盟がなければ成り立たないからだ。これは世界の軍事常識である。
 他方、日本人の多くは、中国人による駐中国日本大使への前代未聞の無礼があっても、国旗が焼かれるテレビ映像を見ても、海上保安庁巡視船に煉瓦(れんが)が投げつけられても、いきり立ちはしない。政府も中国政府の立場に配慮し、通り一遍の抗議をするだけだ。

≪中国の次の一手を警戒せよ≫
 相手が感情的になっても冷静でいるのは、一つの「賢明さ」だと国際社会でほめられるかもしれない。が、今回はさすがに、少し様子が違ってきた。竹島、尖閣諸島への相次ぐ上陸事案を契機に、我が国では、60年以上も続いてきた「謝罪外交」を卒業すべきだという国民感情が高まると同時に、領域防衛能力を強化する必要性が真剣に語られるようになった。
 首相官邸が尖閣不法上陸事件の早期収拾を考えたことは分からないではない。だが、相手に足元を見られたマイナスは大きい。
 中国は、野田佳彦政権の反応を見る「探り」の一つを入れてきたのであって、当然のこと、次の一手を考えているだろう。訓練を受けて漁民に扮(ふん)した何十人もの工作員が荒天時に漂着して人道的取り扱いを要求したり、一度に何十隻もの漁船が何日も組織的な上陸を試みたりするかもしれない。

≪人民解放軍「三戦戦略」駆使≫
 海空軍力の増強を背景にした中国の「尖閣盗り」は、日米同盟の一瞬の隙を突いて行われるであろう。その時が来るまでは、人民解放軍の独特の政治戦略である「三戦(法律戦、世論戦、心理戦)」を駆使してくることだろう。
 「法律戦」では、東南アジア諸国などと領有権を争う南シナ海の南沙(スプラトリー)、中沙、西沙(パラセル)の諸島をまとめて、「三沙市」なる行政区を設けたように、「釣魚(尖閣の中国名)市」を設置する手続きを取ることが考えられる。
 「世論戦」では、今回行われたように、主要都市で暴徒化しないように制御しつつ反日デモを組織し、メディアで全世界に見せる。「心理戦」では、日米安保体制を弱体化させるためなら、ありとあらゆることをしてくるであろう。「戦わずして勝つ」という古くから伝わる孫子の兵法である。
 北方領土と竹島が、それぞれ軍事力を伴ったロシアと韓国の実効支配下にあるのに対し、尖閣諸島は我が国が実効支配していると日本政府は喧伝(けんでん)しているが、その内実となると心許ないものだ。
 海上自衛隊のP3C対潜哨戒機が上空を飛んでいるから、海保巡視船が尖閣周辺の領海を遊弋(ゆうよく)しているから、大丈夫なのではない。日本人が正当な理由で何時でも立ち寄れるようにすることが、不可欠だ。まずは、しけの時に数隻の漁船が避難できる程度の接岸設備を構築しなければならない。
 政府は、「尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理」のためと称して、国の関係者以外の日本人に対しては上陸許可を与えない。それを目的に国が尖閣を購入するのなら本末転倒である。政府は正当な理由ある日本国民の上陸を認める不退転の姿勢を見せよ。

≪海上警備行動へ途切れずに≫
 直ちに取り組まなければならないことは多い。海保に離島での逮捕権を与える海上保安庁法改正、理由なく領海内を周回・停泊する外国船に、立ち入り検査抜きで処罰を伴う退去命令を出せるようにした外国船舶航行法改正が実現したことは大いに評価できる。法的権限だけでなく、海保の人員と装備を質量両面で劇的に強化し、巡視能力を高める必要がある。
 海保による警察行動では不十分になった場合、海自の海上警備行動へ途切れずに移行できるよう、現場だけでなく首相官邸の情報共有と指揮統制能力をかねてから鍛えておくことも欠かせない。
 自衛隊の態勢も、南西諸島各島に小規模な沿岸監視チームを常駐させて強化する。ある離島が外敵に占領されたら間髪を入れず逆上陸作戦ができるよう、西方普通科連隊を本格的に海兵隊化し、水陸両用の装甲車両を導入する。
 北海道の陸自部隊を九州に輸送する「南西シフト演習(2011年11月)」では、民間の高速フェリー「ナッチャン・ワールド」を利用したものの、問題があり過ぎた。海自では、陸自の水陸両用装甲車両を搭載して発出できる新型ヘリ搭載護衛艦を建造し、配備すること、空自では、南西航空団の2個飛行隊化を繰り上げ実施すること、そしてF35戦闘機導入のペースを加速することである。
 統合レベルでは、南西諸島防衛の統合任務部隊を常設化し、同部隊の米軍との警戒監視や偵察活動における日米共同訓練を恒常化することが喫緊の課題である。(しかた としゆき)
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尖閣への中国の出方と対抗策~石平氏

2012-09-18 10:40:03 | 尖閣
 昨17日中国から漁船千隻が出航し、同日中に尖閣周辺に到着と報じられた。領海侵犯による不法操業が常態化しているので、その動きとみられる。中国国内では、現在、政府と軍によって操作された反日デモが行われているが、反日デモを使って日本政府に圧力をかけながら、尖閣略取を目指す行動を起こしてくる可能性がある。昨年6月17日に予定されていた民間人国際団体の行動は、大震災で延期されたが、計画実施に移ることを想定し、注意すべきである。尖閣略取の行動では、相当人数が尖閣に上陸して居座る可能性がある。わが国がこれを排除しようとして、事態が進むと、中国が軍事行動を起こすおそれがある。
 8月29日海上保安庁法が改正案が成立した。だが、施行は9月25日以降である。現時点では、まだ尖閣に不法上陸する外国人らを海上保安官が警察官に代わり捜査・逮捕することはでない。自衛隊は自衛隊法82条に海上警備行動が定められており、発令の前例がある。ただし、93条により権限は警察官職務執行法・海上保安庁法の準用と規制されている。自衛官の武器の使用は警察官に係る規定に準ずるとされており、海上警備行動では限界がある。内閣総理大臣は戦後初の防衛出動を命じる覚悟をしていないと、いざとなってから検討するのでは、後手に回る。早く領域警備法を制定し、いわば防衛出動を常時発令した状態にしないと、即応できない。しかも最大の問題は、憲法第9条で、交戦権を否認していることである。わが国の現状は、自縄自縛の状態である。

 さて、尖閣国有化をめざす野田政権は、9月11日、地権者と売買契約を締結したが、これに先立つ9月9日、中国の胡錦濤国家主席は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、野田首相との立ち話で、次のように語ったと新華社が報じた。
 「中日関係は釣魚島(尖閣諸島の中国名)問題で厳しい局面を迎えている。日本側のいかなる島の購入計画も不法かつ無効で、中国は断固反対する。日本側は事態の重大さを十分認識して誤った決定をせず、中国側とともに両国関係発展の大局を維持してほしい」
 わが国の固有の領土に関し、政府が地権者から土地を買うのは、純然たる国内問題である。これを「不法かつ無効」だという胡主席の発言は、ひどい内政干渉である。
 だが、中国の傍若無人ぶりは強まる一方である。中国外務省の洪磊報道官は同9日の記者会見で、尖閣国有化決定について「必要な措置をとって、国家の領土・主権を守り抜く」と発言した。対日経済制裁や各種交流の停止、尖閣周辺海域での国家海洋局監視船の行動拡大や軍事演習などが検討されているという。また、10日には中国政府は尖閣諸島周辺を中国の「領海」とする基線を発表し、中国外務省が日本非難の声明を出すなど、対日強硬姿勢を強めている。
 野田政権は、東京都が購入するのではなく政府が購入すれば、中国の非難を抑えることができると考えたのかもしれないが、まったく甘い。尖閣を国が持とうが、都が持とうが、個人が持とうが、中国には関係ない。中国は確実に尖閣略取を進めてくる。時間は限られている。わが国政府が尖閣を守るための具体的な措置を至急進めなければ、わが国の領土と主権が侵される。
 中国は今後、尖閣略取をどのように仕掛けてくるだろうか。今秋開催予定の第18回中国共産党大会で習近平氏が党の最高指導者に昇進する。シナ系評論家の石平氏は、8月31日の産経新聞「China Watch」に、これに関連して次のように書いた。
 「来年3月の全国人民大会では習氏はさらに国家主席に就任する予定である」「中国政府は『尖閣が中国の領土・核心的利益』だと主張してきた手前、日本側の尖閣の土地購入の実行に対して『習近平政権』は強硬姿勢に打って出るしかない。さもなければ、国民と軍部から猛反発を食らって誕生したばかりの新政権がいきなり、つまずくことにもなりかねないからだ。それを避けるために習近平政権はおそらく必死になって日本側の動きを封じ込めようとするのであろう。場合によっては来年の4月を待たずにして、今秋に習近平氏が党のトップとなったときに、日本に対する攻勢が早くも始まってしまう可能性がある」と。そして、石氏は「ありもしない『領土問題』を外国に突きつけられた以上、『撤退』はない。そして、彼我の力の対比や日米同盟の現状と今後の変化などの要素から考慮すると、今のうちに決着をつける方向で動いた方が日本にとって有利である。日本が国家として“尖閣決戦”にどう立ち向かうか。そろそろ『覚悟』を決めるときであろう」と述べている。
 一方、わが国では今月、民主党の代表選、自民党の総裁選が行われ、秋の臨時国会が開会されるや、11月以降に衆議院選挙が行われる可能性が高い。選挙期間中は、政治的空白を生じやすい。短期間に尖閣防衛のための法整備や具体的措置を進めるには、厳しい日程である。各政党は、選挙で尖閣防衛を争点に挙げ、国民に政策を訴えるべきである。また新政権を担う政党は、尖閣防衛策をしっかりまとめておき、新政権スタート後、速やかに実行する準備をしておいてもらいたい。

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●産経新聞 平成24年8月30日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120830/chn12083011130001-n1.htm
【石平のChina Watch】
“尖閣決戦” 「習近平政権」強硬姿勢は必至
2012.8.30 11:12

 香港の活動家たちによる尖閣諸島上陸・領土侵犯事件を契機として、日中間の緊張は一気に高まった。今後、両国間の攻防はさらに激しさを増していくだろうと予想される。
 まず日本側の動きからみると、現在、東京都が進めている尖閣の土地購入計画が予定通り進めば、実行されるのは来年の4月となっている。また、国も国有化の意思を示している。
 一方、中国側の今後の政治日程は、今秋開催予定の党大会で習近平氏が党の最高指導者に昇進し、来年3月の全国人民大会では習氏はさらに国家主席に就任する予定である。
 つまり来年の3月までには政権交代の日程がすべて終了し、習近平政権が正式に発足することとなる。都が購入した場合は、そのタイミングはちょうど、日本における尖閣の土地購入の実行と重なり合う。
 尖閣諸島は日本の固有領土だから、東京都や国が土地を買おうか買わないかは日本の内部問題であり、中国は何の関係もない。
 だが、中国政府は「尖閣が中国の領土・核心的利益」だと主張してきた手前、日本側の尖閣の土地購入の実行に対して「習近平政権」は強硬姿勢に打って出るしかない。
 さもなければ、国民と軍部から猛反発を食らって誕生したばかりの新政権がいきなり、つまずくことにもなりかねないからだ。
それを避けるために習近平政権はおそらく必死になって日本側の動きを封じ込めようとするのであろう。場合によっては来年の4月を待たずにして、今秋に習近平氏が党のトップとなったときに、日本に対する攻勢が早くも始まってしまう可能性がある。
 その際、中国はどんな手を打ってくるか。
 外交的圧力と恫喝(どうかつ)のエスカレート、経済カードを使っての心理戦の展開、日本内部の団結を瓦解(がかい)させるための宣伝工作…。
 2年前に漁船衝突事件が起きた際に日本企業の社員を“人質として拘束”するような汚い手段、偽装漁民による尖閣諸島への大挙上陸、巡視船などによる準軍事的な実力の行使等々、いざとなったときには「無法国家」が使える手は実にいろいろとあるのだ。
 そのとき、日本がどう対処すべきなのかが問題である。
 もちろん、中国が猛反発するからといって、今さら尖閣の土地購入計画を放棄するようなことは絶対してはならない。実効支配強化の観点からしても、東京都の尖閣購入あるいはその国有化はおおいに進めるべきであろう。
 その上で、中国からのあらゆる攻勢に対処して尖閣を守っていくためには、日本国政府と東京都が、それこそ一致団結して、国家レベルでのさまざまな対策を用意しておかなければならないのだ。
領土侵犯に厳しく対処するための法の整備、海上保安庁の力の補強、目に見える形の尖閣に対する実効支配体制の強化など、急いでやっておくべきことは山ほどある。
 そして何よりも重要なのは、日本国家として、どんなことがあっても自国の領土である尖閣諸島を守り抜くとの決意を中国側にきちんと示していくことである。
 ありもしない「領土問題」を外国に突きつけられた以上、「撤退」はない。そして、彼我の力の対比や日米同盟の現状と今後の変化などの要素から考慮すると、今のうちに決着をつける方向で動いた方が日本にとって有利である。
 日本が国家として“尖閣決戦”にどう立ち向かうか。そろそろ「覚悟」を決めるときであろう。
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単身世帯の急増は亡国への道~渡辺利夫氏

2012-09-17 08:49:13 | 少子化
 本日は「敬老の日」である。総務省の推計によると65歳以上の人口は3074万人で、初めて3千万人を突破した。総人口に占める割合は24.1%と過去最高を更新した。「団塊の世代」の先頭グループである昭和22年生まれの人が今年65歳となって「高齢者」の仲間入りをしたことが増加の要因である。
 高齢化の一方、わが国は、憂うべき速度で少子化が進行している。少子化の直接原因は、二つ。未婚率の上昇と既婚者の出生力の低下である。結婚しない人が増え、結婚しても子どもを生む数が少ないことである。脱少子化の対策は、これら二大原因を削減するものでなければならない。その立案・実行のためには、日本人は、根本的なところから考え方、生き方を改めなければならない。二大原因には、さまざまな社会的経済的文化的背景があるが、さらにその根底に目をむけ、様々な要因が少子化に結果するところの、国家の基盤的な条件から考察する必要がある。
 私は、まず戦後の日本という国のあり方から考え直すべきだと思う。戦後の憲法や教育、歴史観、価値観等を全体的に見直し、ゆきすぎた個人主義を是正し、家族や民族や国家の意識を高めること。そして、生命に基礎を置いたものの考え方、生き方を取り戻し、家族・民族・国家の存続・繁栄に努めることが、いま日本で必要である。
 この点は拙稿「脱少子化と日本再建は一体の課題」に書いた。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02f.htm
 残念ながら、わが国の有識者で、私のような意見を明確に主張する人は少ない。そうしたなか、産経新聞平成24年8月9日号に拓殖大学総長・学長の渡辺利夫氏が書いた主張は、注目すべきものである。「終戦67年 単身世帯の急増は亡国への道だ」と題した「正論」欄の寄稿記事である。
 渡辺氏は、わが国は家族が崩壊の危機に瀕し、これによって「共同体と国家が再生不能なまでに貶められかねない不気味な様相」が浮かび上がってくるとし、この危機を象徴するものが「単身世帯の急増による後継世代再生産メカニズムの毀損」である、という。
 平成18年(2006)に単身世帯数が夫婦と子供から成る標準世帯上回って最大の世帯類型となった。配偶者と死別した女性高齢者による単身世帯以外に、未婚と離婚による単身世帯が増えている。渡辺氏は、単身世帯が一般的存在となった要因を、「未婚や離婚に対する人々の規範意識が変化し、結婚・出産・育児といったライフスタイルをどう形作るかは個人の自由な選択によるべきだ、とする考えが定着してしまったということなのであろう」と述べる。
 ここで渡辺氏は、この社会的傾向が現行憲法の影響によることを指摘する。この指摘が重要である。現行憲法は、第13条に「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」、第24条に「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されねばならない」と定めている。渡辺氏は「第13条において、個は絶対的存在である。第24条は、独立した個から構成されるものが夫婦であるというのみ、これが家族共同体の基礎だという語調はまるでない」とし、「単身世帯の広がりは憲法精神の紛れもなき実体化である」と論じる。私はこの意見に同意する。現行憲法が家族を解体し、個人主義を蔓延させ、少子化を助長しているのである。
 渡辺氏は、次に民主党に批判の矢を向ける。民主党政権は平成22年(2010)12月に「第3次男女共同参画社会基本計画」を閣議決定した。この基本計画は個を重要な観念とし、世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行を推進しようとしていることを渡辺氏は「家族が流砂のごとくこぼれ落ちていくさまをみつめてこれを何とか食い止めよう、というのではない。逆である。現状を善しとし、さらにこれを促さんというのである」と非難する。そして、渡辺氏は、民主党の中枢部は「日本の伝統を憎悪し、伝統を担う中核的存在たる家族を解体せんと意図する戦闘的な政治集団」だとし、民主党に執権を委ねるわが国は、「亡国への道に踏み込まざるをえない」と主張する。
 私は、民主党中枢部が「日本の伝統を憎悪し、伝統を担う中核的存在たる家族を解体せんと意図する戦闘的な政治集団」だということには同意するが、話はそう単純ではないことを指摘したい。というのは、「男女共同参画社会」を目指す政策は、自民党政権時代から継続的に実施されてきているものであり、民主党が初めて掲げたものではないからである。政権政党が交替しても一貫して個人主義の徹底と家族の解体を進める政策が遂行されているのは、官僚とそのブレーンたる学者の集団が主導権を握っているからなのである。そして、彼らが目指そうとしているものこそ、現行憲法が方向づけている個人主義の徹底と家族の解体なのである。自民党の総裁選が盛り上がっているところだが、候補者たちにはこの点の反省が弱いと思う。
 結婚や子作りを勧めると、個人生活への干渉だとか、「産めよ増やせよ」の人口政策だとか言う人がいるが、私は、若い人たちには、日本の将来、日本人の幸福を思って、結婚や子作りを積極的に考えてほしいと思う。特に日本を愛し、日本の文化や伝統を愛する男性、女性には、そういう観点からも人生を語り合い、自分たちに与えられた命の継承に思いを向けてほしいと思う。
 以下、渡辺氏の記事を掲載する。

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●産経新聞 平成24年8月9日

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120809/trd12080903200001-n1.htm
【正論】
終戦67年 単身世帯の急増は亡国への道だ 拓殖大学総長・学長 渡辺利夫
2012.8.9 03:20

 日本の人口動態を多少なりとも子細に観察してみると、社会存立の基礎的単位である家族が崩壊の危機に瀕(ひん)しており、これによって共同体と国家が再生不能なまでに貶(おとし)められかねない不気味な様相が浮かび上がってくる。危機を象徴するものが、単身世帯の急増による後継世代再生産メカニズムの毀損(きそん)である。

≪単身世帯、標準世帯上回る≫
 夫婦と子供から成る家族が標準世帯である。2006年、単身世帯数が標準世帯数を上回って最大の世帯類型となった。日本の人口史上初めての事態である。10年の国勢調査によれば、全世帯に占める単身世帯の比率は31%、標準世帯の比率は29%である。国立社会保障・人口問題研究所は、単身世帯比率が2030年には37%にまで増加すると推計している。
 単身世帯といえば誰しも思い浮かべるのは、配偶者と死別した女性高齢者のことであろう。しかし、これは男性より女性の方が長命であることから生じる生命体の自然現象である。死別以外の単身世帯化の要因は未婚と離婚だが、これが現在ではごく日常的な現象となってしまった。「子供がなかなか結婚しないで困っている」というのはよく聞かされる親の愚痴話である。私の関係している職場でも30~40代の独身者がいっぱいいる。1回もしくは複数回の離婚のことを“バツイチ”とか“バツニ”といって、別段恥ずかしいことでもないような風潮である。  単身世帯がどうしてこうまで一般的存在となってしまったか、その要因を探る人口学的な研究書が私の書棚にも何冊か並んでいる。そこで明らかにされている要因をあえて1つにまとめれば、要するに未婚や離婚に対する人々の規範意識が変化し、結婚・出産・育児といったライフスタイルをどう形作るかは個人の自由な選択によるべきだ、とする考えが定着してしまったということなのであろう。

≪背景には憲法精神の具現化≫
 憲法精神のみごとな「制度化」というべきか。「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されねばならない」。前者が現行憲法の第13条、後者が第24条である。第13条において、個は絶対的存在である。第24条は、独立した個から構成されるものが夫婦であるというのみ、これが家族共同体の基礎だという語調はまるでない。
 単身世帯の広がりは憲法精神の紛れもなき実体化である。それゆえであろう。戦後精神の牢固(ろうこ)たる守護者、わが与党民主党は、「第3次男女共同参画社会基本計画」なるものを10年12月に閣議決定し喜び勇んで次のように宣揚する。「多様なライフスタイルを尊重し、ライフスタイルの選択に対し中立的に働くよう社会制度・慣行を見直す。その際、核家族化、共働き世帯の増加、未婚・離婚の増加、単身世帯の増加などの家族形態の変化やライフスタイルの多様化に対応し、男性片働きを前提とした世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行」を推進すると。
 個がよほど重要な観念らしい。その観念をもとに配偶者控除の縮小・廃止、選択的男女別姓制度の導入、未婚・離婚の増加などに伴う家族形態の多様化に応じた法制の再検討に入るのだという。家族が流砂のごとくこぼれ落ちていくさまをみつめてこれを何とか食い止めよう、というのではない。逆である。現状を善しとし、さらにこれを促さんというのである。

≪家族解体狙う民主党左派勢力≫
 消費税増税法案をめぐるあの無様(ぶざま)な党内抗争を眺めて、一体民主党とは何を考えている政党なのかとジャーナリズムは嘆くが、見当違いをしてはならない。隠然たる影響力をもつ左派的な政党事務局をも含む党の中枢部は、日本の伝統を憎悪し、伝統を担う中核的存在たる家族を解体せんと意図する戦闘的な政治集団なのである。
 しかし、民主党中枢部のかかる目論見(もくろみ)は、その論理不整合のゆえにいずれ自壊せざるをえまい。単身世帯とは、みずからは後継世代である子供を産み育てず、子供をもつ標準世帯により重く賦課される保険料や税金に依存して老後を凌(しの)いでいく人々のことである。単身世帯の増加は、出産・育児という後継世代を恒常的に再生産する自然生命体としての営為を、あたかもそれが理不尽なものであるかのごとき認識に人々を誘ってしまいかねない。単身世帯という存在は、個々の単身者がそれをどう認識しているかは別だが、結果としては社会的エゴそのものである。かかるエゴを助長する政党に執権を委ねる国家は、亡国への道に踏み込まざるをえない。
 また終戦記念日がやってくる。私どもはもう1つの終戦記念日をつくらねばならないというのか。(わたなべ としお)
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関連掲示
・拙稿「少子化・高齢化・人口減少の日本を建て直そう」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion02g.htm

国旗「日の丸」を掲げよう

2012-09-16 11:59:00 | 日本精神
 7月25日から8月12日にかけて、ロンドンでオリンピックが行われた。日本選手が大活躍した。金メダルは7個と少なかったが、獲得したメダルの数では38個とかつてない成果を上げた。表彰台に日の丸が上がるたびに、多くの国民は歓声を上げた。
 各国の選手はこのスポーツの祭典で、自国の国旗をしるしとして身に着け、国の代表としての誇りを以て、力と技を競い合った。応援する人々も、自国の国旗を振って、心を合わせて応援した。オリンピックほど、各国の国旗が美しく、また誇らしく振られる時はないだろう。日本人もこの4年に1度の祭典で、新ためて国旗「日の丸」に美しさ、また誇らしさを感じたところである。
 8月12日、オリンピックが閉会した後、わが国では国旗を巡って重大な出来事が三つ起こった。
 一つ目は、8月15日に香港の中国人活動家がわが国の固有の領土である尖閣諸島・魚釣島に不法上陸し、中国(五星紅旗)と台湾(青天白日満地紅旗)の旗を掲げたことである。政府はこれらの中国人を公務執行妨害罪や器物破損罪等の刑事犯罪に問うことなく、強制送還した。わが国の領土に不法上陸することを阻止せず、みすみす島に上陸して外国の旗を掲げ、ここは中国の領土だと主張することを許したことは、失態である。中国人活動家たちは、再び尖閣に上陸に来ると宣言している。今回の日本側の対応を見て、今後、多数の船で押し寄せ来る可能性がある。
 二つ目は、8月19日に、参議院議員の山谷えり子氏を始めとする国会議員・地方議員等150名が尖閣諸島沖で戦没者の慰霊祭を行った際、地方議員・活動家等10名が魚釣島に上陸し、日の丸を掲げたことである。政府は国会議員、石垣市、東京都等が尖閣諸島への上陸を申請しても許可しない。わが国の領土でありながら、日本国民が尖閣諸島に上陸することを、政府が許可しないという異常な状態になっている。これに対する抗議の意味を込めて、地方議員らが魚釣島に上陸し、日の丸を掲げた。この様子は、海外でも報道された。これに対し、中国では反日デモが行われている。
 三つ目は、こうした中で、8月27日中国に駐在する丹羽宇一郎大使の公用車が、中国人に襲われ、国旗を奪われたことである。これに対し、わが国の外務省は抗議をしないこととした。大使は国家の代表であり、国旗は国家の象徴である。駐在国で大使が襲われ、国旗を奪われて、本国の外務省が抗議せずとは、外交を担う資格がない。中国政府は実行犯に「厳正な対処」をすると約束していたが、5日間の行政拘留処分という極めて甘い処分に済ませた。「反日無罪」という民衆の暴走を煽る結果となった。
 国と国の関わりにおいては、常に国旗が国の象徴として使われる。日本人は戦後、国旗をなおざりにする傾向に陥り、国旗の大切さを知らない人が増えている。国旗の大切を伝えるとともに、「日の丸」の由来・歴史を広め、国旗「日の丸」の掲揚を呼びかけよう。

 日本の国旗について、こういう意見がある。「日本とともに、第2次世界大戦の主な敗戦国だったドイツとイタリアは、戦後、国旗をかえた。戦争中の旗をそのまま政府が使っている国は、日本だけだ」と。
 これは、正しい見方だろうか。いいえ、違う。一般に国旗を変えることは、革命が起きたときとか、独立を果たした時だけである。日本には、そういうことがなかったので、国旗を変える必要がなかったのである。その点で、ドイツ・イタリアとは事情が異なる。
 まずドイツは、現在の三色旗がもともとの国旗だった。ところが、戦前、ナチスが政権を取ると、独裁者ヒトラーはナチスの党旗をドイツの国旗とした。戦後は、それを元に戻しただけである。
 戦争末期にヒトラーは自殺し、ナチスの一党独裁体制は崩壊した。1945年5月、ドイツは無条件降伏し、米ソ等による分割占領を受けた。ところが同年9月、共産主義のソ連が突然、ベルリンの壁をつくり、ドイツは二つの分割国家となってしまった。
 当然、国旗も別々である。西独は国旗を以前の三色旗に戻したが、東独は三色旗をもとにした新たな国旗を作った。その後、1990年10月、社会主義に失敗した東独を、西独が合邦する形で、ドイツの統一が実現した。統一ドイツは、旧西独の国旗、つまり本来の三色旗を国旗とした。つまりナチスや社会主義の時期を除くと、ドイツの国旗は一貫しているわけである。
 一方、イタリアでは、戦前、ムッソリーニ率いるファシスト党が武力によって政権を奪い、一党独裁国家を築いた。しかし、1943年7月、ムッソリーニ政権は崩壊。独裁者ムッソリーニは、国民の激しい憎悪を浴びて、処刑された。その後、イタリアは、1946年6月に国民投票をした結果、王制を廃止し、1948年1月に共和国憲法が施行された。それによって、イタリアは王制から共和制に変わった。こうした体制の変化があったので、イタリアの国旗は変わった。
 ところが独伊と異なり、日本は、戦前・戦後とも国柄が変わっていない。日本は、明治維新によって、天皇を中心とする国民国家を築き、アジアで初めて憲法を制定し、立憲議会政治を実現した。昭和に入っても、独伊とは違い、一党独裁体制にはなることはなく、敗戦後も、国が分断されるとか、共和制に変わるというような変動はなかった。だから国旗も一貫しているわけである。
 敗戦国では、歴史上、元首は処刑されるか自殺か亡命をするのが普通である。しかし、日本では、同じ天皇が戦前・戦後と変わらずに天皇の位におられた。昭和天皇は、マッカーサーと会見されたとき、「自分の身はどうなっても構わない。国民を助けてもらいたい」と話された。これに感動したマッカーサーは、天皇を守るために努力するほどに変わった。また、自ら全国を巡幸して、国民を力づけた昭和天皇は、国民から深い敬愛と信頼を受け、日本復興の柱ともなった。 こうした例は、世界史を見ても他にない。
 現行憲法にも、天皇は「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」であると規定されており、大多数の国民が皇室を支持している。
 このように、日本では、明治時代から今日まで、国の基本的な形が変わっていない。それゆえに、国旗を変える必要が全くなかったのである。
激動の世界において、日本は、明治維新後、国旗を定めて以来、約140年もの間、一貫して「日の丸」を掲げている。これは、世界に誇るべきことである。 また、世界中の人々が、ニッポンといえば「日の丸」を思い浮かべてくれる。「日の丸」は、日本人のアイデンティティのしるしでもある。
 日本人は、国旗「日の丸」に誇りを持ち、家庭や地域、職場等で、国旗掲揚を広めよう。

■追記

 国旗「日の丸」の由来については、次の動画が詳しく、また分かりやすく描いています。

 友人のチョックリーさんの作品「【ゆっくり動画】 日の丸のはなし」
  前編 http://www.nicovideo.jp/watch/sm14626610
  中編 http://www.nicovideo.jp/watch/sm14831405
  後編 http://www.nicovideo.jp/watch/sm15119318

人権11~世界人権宣言の人間観

2012-09-15 09:24:49 | 人権
●世界人権宣言の人間観

 私は、人権を「発達する人間的な権利」と定義し、普遍的・生得的な権利とされてきたものは、そうありたい、そうあるべきという理想であり、目標であると位置づける。こうした整理に立って、人権を基礎づけ直すに当たり、まず今日世界で広く受け入れられている世界人権宣言の人間観を検討したい。以下の訳は日本国外務省の仮訳文による。
 世界人権宣言にいう人間とは、どのような人間か。言い換えると、どのような人間観に立った人間だろうか。「宣言」の前文には、次のようにある。
 「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利(the inherent dignity and of the equal and inalienable rights of all members of the human family)とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であるので ……」
 ここに「人類社会」と訳されているのは、the human family という英語である。family は、「社会」ではなく「家族」である。それゆえ、the human family は「人類家族」と訳すべきものである。また、「人類社会のすべての構成員」とは「人類家族のすべての構成員」を意味する。私は本稿の人間論で家族の重要性を述べており、その立場から「人類家族」という文言に注目する。アメリカ独立宣言やフランス人権宣言では、社会を抽象的な個人の集合ととらえているが、世界人権宣言は、社会を「家族」にたとえている。「宣言」には、人類は一つの家族であるという思想があるのである。そのことを私は強調したい。
 では、「人類家族」の構成員である人間とは、どのような人間であるか。前文に続き第1条に、次のようにある。
 「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心(reason and conscience)とを授けられており、互いに同胞の精神(a spirit of brotherhood)をもって行動しなければならない。」
 この条文の冒頭に、人間は「生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」という文言がある。これは、「宣言」の中の最も有名な一文である。人間は、生来自由であり、平等であるという人間観がここに打ち出されている。近代西洋文明が生み出した人間観である。17世紀のホッブス・ロックが主張し、アメリカ、フランス等の市民革命で発達した人間観が、約300年を経て、世界人権宣言において、非西欧社会に受け入れられるものとなったのである。ただし、少し考えてみれば、誰でも分かるように、実際は人間には生まれながらにさまざまな不自由があり、また決して平等ではない。「宣言」がいうのは、事実ではなく理想であり、そうありたいという目標である。理想・目標を述べる主張にすぎない。
 次に、第1条は、人間は「理性と良心」を授けられているという。理性とは reason、良心とは conscience の訳語である。これらもまた、近代西洋文明の人間観に基づく認識である。フランス人権宣言では、人間の理性が強調されたが、世界人権宣言では、理性という知的能力だけでなく、良心という道徳的能力が併記されている。これは後に述べる人格の概念につながっていく。
 次に、注目したいのは、「同胞の精神(a spirit of brotherhood)」という言葉である。先に前文に「人類家族」と訳すべき言葉があることを指摘した。「同胞」は人類を家族に例える考え方によるものである。同胞とは本来、共通の親を持つ兄弟姉妹のことをいう。「宣言」は、人類は家族であり、同胞愛をもって行動すべきだというのである。
 次に、注目すべきこととして、「宣言」は人類家族の構成員について、「個人」の意味で individual (原義は不可分なもの)という言葉を使っていない。「宣言」において、個人にあたるのは、a person である。そして、人間は、人間としての尊厳を持ち、各個人が「人格」(personality)を持つ存在だとしている。ここにいう人格とは、理性と良心を持つものと考えられる。この点に関して、第22条に次のように記されている。
 「すべて人は、……自己の尊厳と自己の人格の自由な発展(the free development of his personality)とに欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を有する」
 また第26条2項に、次のように記されている。
 「教育は、人格の完全な発展(the full development of the human personality)並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。……」
 ここには、人格は発展するものであり、自由かつ完全に発展すべきであるという思想が表れている。また、人格の発展のために必要なものが教育であり、教育は人格の完全な発展を目的の一つとすべきだという認識が示されている。
 以上見てきた条文に、世界人権宣言の人間観が概ね表現されている、と私は思う。「宣言」の人間観の主要な要素は、人類家族、自由、平等、理性、良心、同胞精神、人格とその発展可能性である。そして、「宣言」は、人間は経済的、社会的及び文化的な権利を実現する権利を持ち、それらを条件として、自己の尊厳を保ち、人格的発展を追求する権利を持つとしている。これは、人格の存在とその成長可能性を認める近代西洋の思想を背景にした考え方である。
 「宣言」はこのように、個人の人格の発展を重要視する。だが、その個人が「人類家族の構成員」であり、その家族の一員として人格的に成長し、発展することを強調していない。また、「宣言」は、親子・夫婦・祖孫等による実際の家族の重要性には、あまり具体的に触れていない。私の見方では、家族は、生命を共有し、精神的なつながりを持つ集団である。個々の人間を「人類家族」の構成員とするならば、個人個人の生命と人格は、人類が家族的に共有する生命・精神の一部と位置づけることができる。そして、個々の人格的発展は、「人類家族」の幸福や繁栄に貢献するものであることが期待される。しかし、「宣言」は、この方向に考察を進めていない。「宣言」は、生命に基づく具体的な家族的人間関係に、立ち入ろうとしていない。同時にそうした家族の巨大な集合体である人類家族についても、具体的に生命的・歴史的に考察していない。一定の人間観を表しながら、その依って立つ根拠を示さず、またそこから展開し得るものを秘めた状態に止まっているのである。
 それゆえ、私は、世界人権宣言における人間観は、人間に関する考察が不十分であると考える。人権を基礎づけ直すには、この点の検討が必要である。

 次回に続く。

尖閣上陸等に抗議する緊急集会の報告2

2012-09-14 08:50:42 | 尖閣
 9月4日衆院議員会館で行われた緊急集会では、各氏の提言の後、声明文が朗読され、「李明博韓国大統領の竹島上陸に対する要望書」と「尖閣諸島に不法上陸した中国人釈放に対する要望書」が採択された。李大統領の暴挙暴言、尖閣を巡る政府の対応に憤りを覚える人であれば、大方賛同できる内容ではないか。
 集会終了後、平沼赳夫氏らの代表者が、首相官邸を訪れ、政府に対する要望書として、藤村官房長官に手渡したとのことである。

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■李明博韓国大統領の竹島上陸に対する要望書

 八月十日午後、韓国の李明博大統領は、日本政府の再三の中止要請を無視し、韓国歴代大統領としては初めて、竹島に上陸するという暴挙に出た。
 李大統領は、今回の上陸を「地方視察」と語り、「日本政府は歴史問題に誠意がなく」、反発は「理解できない」としている。また、天皇陛下の韓国訪問に言及し、あろうことか「独立運動家の遺族に心からの謝罪を行うなら来てよい」と強弁したが、こうした非礼極まりない言動は、日韓友好へ向けたわが国政府と国民の努力を水泡に帰すもので、断じて容認できるものではない。
 いうまでもなく竹島は、歴史的に見ても、国際法的に見ても我が国固有の領土であり、韓国による竹島の領有は、サンフランシスコ条約が発効するまでの間隙をぬって強行された不法占拠である。国際法上何ら正当性を有しないというのが、我が国政府の変わらざる立場だ。
 しかしながら、大統領上陸という事態を招来した原因の一端は我が国政府にもある。竹島のみならず、北方領土、尖閣諸島など我が国固有の領土・領海をめぐる周辺諸国の実効支配の強化や領有権の主張に対して、歴代政府はこれまで有効な対抗措置をほとんど講じてこなかったからである。そのため、近年はロシア大統領の北方領土視察や軍事演習の強化、尖閣諸島海域における中国公船の度重なる領海侵犯やこの度の中国人活動家の不法上陸、竹島における埠頭などの整備や観光事業の推進などが顕著となっている。既に竹島は、韓国による不法占拠が六十年も続いている。
 私たちは、次の点について政府が毅然と対処するよう強く要望する。

一、天皇陛下に対する謝罪の要求に抗議し、発言の撤回と謝罪を求めること。
二、野田首相は我が国の竹島に対する領有権を内外に明示する総理大臣談話を発表すること。
三、全省庁上げて竹島問題に対応するよう、この問題を所管する対策本部を内閣府に設置し、併せて「竹島の日」を制定することなど、各種啓発活動、国民運動並びに国際広報を行うこと。
四、国際司法裁判所への提訴の手続きを進め、あらゆる外交チャンネルを通じて我が国の立場を主張し諸外国の理解を促すこと。
五、領土・領海に関する正しい理解を次世代に伝えるため、学校教育において我が国の立場を正しく教える領土教育の充実を図ること。
六、過去・現在の韓国との外交関係を見直し、河野官房長官談話、菅総理談話の撤回、教科書検定基準から「近隣諸国条項」を削除すること。
七、現在両国政府間で実施されている通貨スワップなどの経済協力を即時凍結すること。

 平成二十四年九月四日
 日本会議国会議員懇談会
 日  本  会  議
 日本会議地方議員連盟

■尖閣諸島に不法上陸した中国人釈放に対する要望書

 八月十五日、尖閣諸島の領有を主張する香港の運動団体の中国人活動家が魚釣島に不法上陸、我が国は直ちに十四人全員を逮捕した。これに対し中国政府は、「即時無条件の釈放」を要求、日本政府は八月十七日、中国政府の要求を呑み全員を強制送還した。
 尖閣諸島は、歴史的にも国際法的にも我が国固有の領土あり、中国側の不法行為が我が国の領土で繰り返されたことに断固抗議するとともに、領土領海の防衛に対する我が国政府の弱腰な対応に激しい憤りを感じざるを得ない。
 ことの経緯を追ってみると、不法上陸の恐れありとの情報に基づき海上保安庁は十数隻の巡視船艇を同海域に派遣、領海内への侵入阻止をめざしたが、遺憾ながら上陸に至った。抗議船は、海保の巡視船が接舷を試みた際、レンガを投擲して妨害した。かかる行為は「公務執行妨害」が適用される刑事事件として、司法が厳正に裁くべきものである。しかしながら、「強制送還」措置が取られたことは、我が国が中国の不当な要求に屈し、政治決着を図ったとみなされてもいたしかたないと言えよう。
 今回の事件は、過去の尖閣不法上陸事件や中国漁船体当たり事件の再来であり、我が国の司法制度をもねじまげるもので、決して容認できない。歴代政府がかかる屈辱的な外交と政治的決着を繰り返すならば、敵対的な外国勢力は次々と領海侵犯、不法上陸を将来にわたり繰り返し、我が国の主権が侵害され続けること必定である。
 我々は、一昨年の中国漁船の領海侵犯事件以降、尖閣諸島の実効支配の強化を求め全国で二百二十四万の署名、国会議員二百五十五名、地方議員四千百二十八名の賛同を得てきた。我々はここに、我が国の領土・領海の保全に万全を期すため、政府・国会が早急に次の施策を実行するよう要求する。

一、去る八月二十九日に国会で成立した改正「海上保安庁法」「外国船舶航行法」に基づき、直ちに我が国領海警備体制の強化を図ること。
二、抗議船の領海侵犯から逮捕に至る記録映像を全面公開すること。
三、尖閣諸島が歴史的・国際法的に我が国固有の領土であることを学校教育や国際広報を通じ、国内外に積極的に知らしめること。
四、尖閣諸島に海上保安庁、自衛隊などを常駐させるとともに、周辺海域の常時監視体制を強化すること。
五、尖閣諸島に灯台や避難港を整備するなど、実効支配の強化に取り組むこと。
六、自衛隊に領土・領海警備の任務を付与する自衛隊法改正を早急に進めること。
七、国家主権の侵害を目的とする領土・領海・領空侵犯を取り締まる新たな法整備を行うこと。
八、北京駐在の丹羽大使の公用車に対する襲撃、並びに我が国国旗の強奪に対して、中国政府に犯人の厳正な処罰と謝罪、再発防止を求めること。

 平成二十四年九月四日
 日本会議国会議員懇談会
 日  本  会  議
 日本会議地方議員連盟
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 以上、皆様のご参考に報告する。

尖閣上陸等に抗議する緊急集会の報告1

2012-09-13 08:44:20 | 尖閣
 9月4日、衆議院第一議員会館地下一階大会議室で「尖閣上陸、竹島占拠、韓国大統領暴言に抗議する緊急集会」が行われた。平日の昼間だが、645名が参集した。私も参加することができた。
 主催は日本会議、日本会議国会議員懇談会、日本会議地方議員連盟である。国会議員は、民主・国民新党・自民・たち日・きずな・生活の各党から計75名(代理含む)が出席したと紹介された。

●開会の挨拶

 最初に主催者を代表して、平沼赳夫氏(衆議院議員・日本会議国会議員懇談会会長)が開会の挨拶をした。
(以下の発言要旨は、日本会議のサイトより転載)
http://www.nipponkaigi.org/activity/archives/4817
「北方領土、竹島、尖閣諸島の問題は全く進捗していない。その大きな原因は日本国憲法にある。現行憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、ロシア、中国、韓国は「平和を愛する公正と信義」がある国なのか?外交上の屈辱的なこの案件を解決するために、自主的な正しい憲法を作らなければならない」

●提言

 続いて、青山繁晴氏((株)独立総合研究所代表取締役)が提言をした。
 「日本は、敗戦国であり、資源の無い国であるから頭を垂れていないといけないという思い込みを今こそ克服すべきだ。今回の竹島・尖閣の侵略行為の元になったのは、7月3日のロシアのメドベージェフ大統領の国後島への侵入であった。北方領土とは北方四島のことではない。ロシア(旧ソ連)はサンフランシスコ講和条約に調印・批准していない。南樺太、千島全島は日本のものであるというところから交渉して頂きたい。
 竹島については、国際司法裁判所に単独提訴になっても、毎月毎月繰り返し国連に提訴することが必要。その上で、国連自体を改革しなければならない。国際司法裁判所、国際海洋法裁判所は、当事国の同意が無いと提訴出来ないが、これに不満を持っている国々は多くある。当事国の同意が無くても提訴自体を審議する機関をつくって多数決で裁判を開始できるようにすべきである。
 尖閣については、自衛隊が駐留出来ないという思い込みがある。近く中国では極めて軍に近い政権が誕生する恐れがある。中国は軍事力を行使してきたときに、我が国の憲法には『国の交戦権はこれを認めない』とあるので、日本は対抗できない。それ故、自衛隊をまず駐留させておかなければならない。これを9月中にやらなければ、10月以降、中国が素早い動きに対応出来なくなる」

 ここで、急きょ駆け付けた安倍晋三元内閣総理大臣が挨拶をした。
 「尖閣は、我々が生命を賭けても守るという覚悟と決意を示さねばならない。憲法改正は当然であり、来る選挙で争点にしていかねばならない、
 昭和52年、石川県で久米裕さんが拉致された。そして、主犯格は北朝鮮工作員のキム・セホだと分かっていながら、憲法前文の精神に則り実行犯を釈放してしまった。外交・安全保障はメッセージである。その結果、2カ月後、横田めぐみさんが拉致された。戦後体制は13歳の少女の人生を守ることができなかった。この事実に、我々は真剣に向き合わねばならない」

 次に、西岡力氏(東京基督教大学教授)が提言を行った。
 「慰安婦騒動は、20年前から始まっているが、慰安婦問題は無いというのが20年前から変わらない私の立場だ。慰安婦はいたが、問題は無いというのは、今も解決しなければならない問題があるということだが、そのような問題は無い。
 竹島問題についても、昭和40年に日本は国交正常化をして、基本条約を結び、経済協力3億ドルを無償で供与した。その時、韓国も外務省同士で交換公文というものを出して、紛争があったら話し合いで解決し、それが出来なければ国際調停にかけると、事実上問題を先送りした。韓国も、日本が竹島の領有権について主張することは黙認する。そして警備を強化しないということを金泳三政権までは守っていた。ところが日韓関係を離間させようとする勢力が伸張し、金泳三大統領以後の大統領は愚挙を重ねてきた。
 今回の韓国大統領の竹島上陸が愚挙だということを、韓国に徹底的に知らしめるためにも、日本は竹島問題の国際化を図るべき。日本は配慮・遠慮する交流を進め、相手の話だけを聞いてきたが、徹底的に日本の主張を世界に広めなければならない。本日の声明に一つ付け加えたいのは、歴史問題についても政府の専門部署を作るべきだ。今までの外交は失敗だったわけだから外務省の外に、担当大臣も予算も付けて、徹底的に、歴史認識の一致は無いことを言いながら、韓国が北朝鮮と中国に利さないに戦略的配慮をし続けることが必要だ」

●国会議員からの提言

 続いて、4名の国会議員が提言を行った。
 最初に、馬淵澄夫氏(衆議院議員・元国交大臣)が提言。
 「外務省など関係省庁と領海警備法を作ろうとしたが、周辺諸国との政治的ストレスを生みかねないと押し返された。これが事なかれ主義外交の根底にあるものだ。
 その後、国交省のみで法改正をする取り組みに着手した。困難なのは分かっていたが、政権が変わっても、我が国の領海を守る、それが政治家の使命だと任じ、海上警察権のあり方に関する国土交通大臣基本方針を発表した。8月15日の香港の活動家が尖閣諸島・魚釣島に上陸した。それを止める手立ては無かったのか。もしあの段階で法律が通っていれば、外国船舶航行法によって退去勧告を行い、それに従わない場合は、立入検査をすることなく、拿捕し、領海を警備する断固たる姿勢を示すことが出来た。なぜいち早く成立出来なかったのかと国家議員としての責任を感じる。今後は、憲法改正も視野に入れながら、具体的に実行できる施策を更に検討し、より強固な領土領海の守りを固めねばならない」

 次に、新藤義孝氏(衆議院議員・衆議院決算行政監視委員会委員長)が提言。
 「今、国を守るための覚悟と行動が問われている。我が国には、領土・国家主権を守ることを担当する役所がない。それを作らねばならない。また、シンクタンクを作る必要がある。尖閣は我が国の領土でありながら、誰も近づいてはならない、上陸してはならないと政府は言い、そして外国人は勝手に上陸しても食事を与え、ビジネスクラスの飛行機で返してしまう。こんな事がありえるのか。
 政府が国有化して使って行くと言っているが、それなら何故、国会議員が上陸できないのか。島に避難港を建設や電波塔、気象台、さらには海上保安庁の詰め所を建設するためには、上陸しなければ設計しようがない。国会の常設委員会である決算行政監視委員会として上陸申請をしているが、政府・民主党が合意しない。今のまま、誰も近づかせないための国有化なら意味がない。是非とも国民の皆さんからも、国会の代表として、我々の上陸調査を後押し頂くことをお願いしたい」

 次に、下村博文氏(衆議院議員・日本会議国会議員懇談会幹事長)が提言。
 「中国は10月にも尖閣上陸を目指していると聞く。南シナ海の例からすれば、偽装漁民、活動家が上陸し、それを保護するといって、中国軍隊が入ってくるのは間違いない。今の状態では尖閣は中国にみすみす奪い取られ、取り返しのつかないことになる。
 領海警備法案が国会で通っただけでは、解決できない。実効支配を強化するために施設を作り、海上保安庁の職員、自衛隊の隊員が常駐させるべきだ。二度と中国人が上陸出来ないようにすることが必要だ」

 最後に、山谷えり子氏(参議院議員・日本の領土を守るため行動する議員連盟会長)が提言。
 「今回、領土議連と地方議員連盟と魚釣島に上陸しての慰霊祭を申請したが、却下された。洋上で慰霊祭を行い、来年は必ず、上陸して慰霊祭を行う、それが実現できる政権を作ろうと皆で誓い合った。
 魚釣島のすぐそばまで船で行き、かつお節工場も良く見えた。かつての家々の跡、水を貯めも良くわかった。それを見て、これは開拓の心だ、海から恵みを頂きながら、南の守りとして250人、一人ひとりが開拓団としてお住まい下さっていたんだと分かった。この尊い気持ちを私たちは引き継がねばならない」

●地方議員からの提言

 続いて、地方議員を代表して、小礒明氏(東京都議会議員)が提言を行った。
 「洋上慰霊祭で魚釣島近くまで行ったが、灯台の光は本当に小さかった。政府は、石垣島を始めとする先島諸島の漁民の皆さんの命をどう思っているのか。しっかりとした灯台を今すぐ作り、避難港を作り、航海の安全を確保するのが、日本政府として当たり前にすべきことではないか。
 日本の領海内で、安全に堂々と操業できる。これこそが『平穏かつ安定的に維持管理する』ことではないか。今後、あらゆる実効支配を強化しなければ、ますます中国は尖閣諸島への歩みを進めてくる。
 政府は、尖閣諸島を買っても、日本人を上陸させないどころか、近寄らせない。中国が喜ぶ事ばかりやろうとしている。まず東京都が購入し、しっかりした実効支配をし、その後、国が我が国の領海・領土・主権をしっかり守る。有人化が一番大切であるが、プロセスを踏まえて実効支配を固め、尖閣諸島を断固として守って行かねばならない」

 小磯都議は、熱烈に東京都による尖閣購入を訴えたが、後日、政府が購入するという展開となったのは、御承知の通り。

 次回に続く。

衆院選予測:自民236、民主89で維新は58と躍進2

2012-09-12 08:52:42 | 時事
 「週刊文春」の衆院選の予測議席数をもとに、ほそかわが推計すると、次の衆院選は自民大勝、民主大敗で、政権再交代が起こる。自民は単独で政権を発足するまでには及ばず、新たな連立政権を組むことになる。過半数は480議席を超える241議席ゆえ、自民党はあと5議席を連立で確保できれば過半数を獲得できる。そういう組み合わせは、いくつも考えられる。獲得予測数の多い順で言えば、民主89、維新58、みんな33、公明21、生活18のどこと組んでも、過半数を取れる。たち日と保守系無所属とでも可能だろう。 
 そこで、自民党が従来のリベラル系路線で行くのか、保守系路線で行くのかが、新たな政権の方向性を決める。これらの路線で過半数となる組み合わせを大まかに分けると、

<リベラル系路線>
■自民+民主+公明  346
■自民+公明     257

<保守系路線>
■自民+維新+たち日 296
■自民+維新     294

と予測される。
 自民党は、今度の衆院選で憲法改正を争点の第一に挙げる。自民党が憲法改正にまず衆院で必要な3分の2以上をめざすならば、321議席以上必要ゆえ、自・維・たち日に、民主・みんな等から改憲派を25名以上、結集する必要がある。
 自民党がリベラル系路線を採るか、保守系路線を採るかは、総裁が誰になるかで決まる。自民総裁選には、石原伸晃氏、石破茂氏、安倍晋三氏、町村信孝氏、林芳正氏の5人が出馬すると見られる。保守からりべラルへと並べると、安倍氏、町村氏、石破氏、林氏、石原氏となるだろう。総裁選の結果いかんで、次の連立政権の方向性が決まってくる。
 ところで、8月1~2日に産経新聞社とFNNの合同世論調査で、維新が次期衆院選の比例代表投票先として約24%を占め、自民党22%、民主党17%を抑えてトップに立った。比例の投票先を全国11ブロック別にみると、維新は地元の近畿を含む北海道、東北、東海、近畿、四国の各ブロックで単独トップ。北関東でも自民、民主両党と同率首位だった。
 仮にこの結果で「週刊文春」の予測を補正すると、維新は比例で34から43へと伸長。小選挙区は同じとすると、67議席となる。維新が伸びる分、自民・民主が食われるだろうが、自民・維新の組み合わせなら総計議席数は、「週刊文春」による予測294より伸びるだろう。またもし橋下徹氏が衆院選に自ら出馬すれば、もっと伸びるだろう。「週刊文春」の記事は、橋下氏が東京1区、東京比例単独、これらの重複で立候補する可能性に触れている。マスメディアがムードを煽れば、100議席以上行くかもしれない。
 9月8日、橋下氏は「大阪の改革を進めるためには国の根っこを変えないといけない。一歩踏み出し、国政政党の設立に向け力を入れたい」と述べ、国政進出方針を宣言した。理由について「大阪都新法は成立したが、まだまだ不十分。国の統治機構にメスを入れ、あるべき姿に持って行く」と強調した。党名は「日本維新の会」、代表は橋下氏が務めると発表された。
 維新が台風の目になるのは間違いない。自民が維新と連立する場合、維新は58~67議席、展開によっては100以上取るかもしれないから、自民は主要政策を丸呑みすることを条件として求められるだろう。橋下氏と大阪維新の会については、拙稿「橋下徹は国政を担い得る政治家か」「橋下『維新八策』は改訂版も未だ『?』」に書いたが、国政を担うには準備不十分であり、その状況は、まだ変わっていない。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13p.htm
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13q.htm
 彼らが現在の欠陥を是正し、国政を担い得る水準に向上し得るかどうかは、わが国の政治に一定の影響をもたらす要因となるだろう。また、有権者は、ムードに流されずに、彼らの理念・政策をよく検討し、国政を委ねられるかどうか見極めることが必要である。橋下氏は大阪市長と「日本維新の会」の代表を兼務するに当たり、国政政党の代表の仕事は「プライベートの時間を充てる」と言っている。プライベートの時間で大阪から国政政党のかじ取りができると本気で考えているのであれば、よほど国政を甘く考えているのだろう。その点も、有権者は、よく見定めたいものである。

衆院選予測:自民236、民主89で維新は58と躍進1

2012-09-11 06:51:28 | 時事
 「週刊文春」は、9月6日号に「解散目前! 総選挙全300選挙区当落予測 ザ・ファイナル」という記事を載せた。
 政治広報システム研究所代表の久保田正志氏と週刊文春取材班による予測である。「週刊文春」は、4月12日号でも久保田氏と文春取材班による予測を載せた。その予測は、民主党は148議席減の144議席。一方、自民は209議席の大勝、自公なら計236議席。みんなの党は40議席への8倍増。大阪維新の会が一挙に36議席を獲得。みんなと維新を合わせると、76議席という予測だった。私は日記にそれに基づく分析記事を書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/3dbf35423ddb30de5383888718baac22
 その予測から約5か月。今度は民・自・公の三党合意により、野田首相が「近いうちに」解散総選挙をすると発表し、早ければ10月解散、11月総選挙の日程が考えられる状況である。タイムリーな選挙予測の記事と言えよう。
 今回の久保田氏の予測は、

・民主は89議席で、解党的惨敗
・自民は236議席と単独過半数をうかがう勢い
・維新は小選挙区24議席、比例34議席の合計58議席
・みんなの党は33議席で、前回予測より後退
・生活は現有より半減以下の計18議席

というもの。
 自民党が4月の予測よりさらに伸び、現有議席の倍近くに。逆に、民主党は半減どころか、3分の1近くに激減。維新は、4月の36議席より50%超の増加。久保田氏は、4月時点では、維新は大阪だけに候補者を立てた場合を予測したが、今回は近畿ブロック、2府4県の48選挙区に擁立すると見ている。
 解党的惨敗と見られる民主党では、鳩山由紀夫元首相と菅直人前首相は落選の危機。小沢ガールズは長崎の福田衣里子氏以外は全滅。東京では、現職大臣の松原仁国家公安委員長、小宮山洋子厚労相、手塚仁雄首相補佐官が議席を失う恐れがある。大阪では、平野博文文科相を含め全滅の危機。藤村修官房長官、中野寛成元国家公安委員長、樽床伸二幹事長代行らが、まだ誰とも決まっていない維新の候補より劣勢と見ている。

 記事は党派別獲得議席予測を表にして載せている。

■民主
 小選挙区 現有185 → 予測 63
 比例区  現有 63 → 予測 26
 合計   現有248 → 予測 89
■自民
 小選挙区 現有 65 → 予測190
 比例区  現有 54 → 予測 46
 合計   現有119 → 予測236
■生活
 小選挙区 現有 25 → 予測  3
 比例区  現有 12 → 予測 15
 合計   現有 37 → 予測 18
■みんな
 小選挙区 現有  2 → 予測  7
 比例区  現有  3 → 予測 26
 合計   現有  5 → 予測 33
■維新
 小選挙区 現有  0 → 予測 24
 比例区  現有  0 → 予測 34
 合計   現有  0 → 予測 58
■公明
 小選挙区 現有  0 → 予測  2
 比例区  現有 21 → 予測 19
 合計   現有 21 → 予測 21
■国民   現有  3 → 予測  0
■たち日  現有  2 → 予測  2
(その他は、略)

 分析は次回書く。