ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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尖閣は一転、政府が購入ーーなぜ?

2012-09-10 09:22:31 | 尖閣
 本年4月17日石原都知事が尖閣諸島を購入する計画を発表すると、有志によって10億円を超える募金が集まった。すると7月になって、それまで尖閣の国有化に消極的だった民主党政権が、尖閣の国有化方針を発表した。東京都には14億6千万円ほどの寄付金が寄せられているが、政府は20億円で買うと報じられた。
 地権者側は以前、政府に売ると中国にわたる恐れがあるとして、政府には売らない意思を明らかにしていた。石原氏であれば信用できると判断し、都に売ることを決めていると地権者の弟・栗原弘行氏が語っていた。都の購入は地権者の栗原國起氏と合意ができていたはずだった。
 ところが、ここへきて、政府が20億5千万円で購入することを地権者が承諾したという。9月11日にも売買契約が結ばれると伝えられる。意外な展開となった。
 地権者の事情につき、「週刊文春」が8月1日にスクープ記事を載せた。次の記事である。

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●週刊文春 平成24年8月1日

http://shukan.bunshun.jp/articles/-/1656
週刊文春 掲載記事

尖閣諸島地権者に「負債40億円」が発覚!
2012.08.01 18:00

 4月の石原慎太郎都知事による購入発言を受け、都が買収交渉を進める尖閣諸島地権者の栗原國起氏が、約40億円にのぼる負債を抱えていることが週刊文春の取材で明らかになった。
 國起氏はさいたま市大宮区の大地主であり、大宮区近辺に多くの不動産を所有している。不動産登記簿謄本によれば、三菱東京UFJ銀行は一昨年3月末、國起氏が所有する物件に極度額24億5000万円の根抵当権を設定し、38件もの担保を取っている。一方、埼玉縣信用金庫も昨年9月に大宮区内の不動産に極度額15億円の根抵当を設定している。
 しかし、埼玉信金が設定した根抵当の担保は、土地2筆(計1000平米)と平屋の建物2棟(延床面積計119平米)の4件のみ。公示地価に照らし合わせると、2億3000万円の価値にしかならない。
「根抵当権の極度額は担保評価額の110%が一般的ですから、明らかに担保としては足りないですね。尖閣列島の所有者だから取りはぐれはないだろうという見込みで貸し込んだのではないでしょうか」(不動産鑑定士)
 彼が莫大な負債を抱えるに至った理由を、弟であり一連の報道で地権者側の「スポークスマン」となっている栗原弘行氏に聞くと、次のような答えだった。
「地主は相続対策として、ある程度の負債を抱えておくのが常識ですから」
 だが、ある都幹部はこの弘行氏も國起氏の負債に大きく影響していると話す。
「弘行さんはいろいろな事業に手を出して失敗し、それを國起氏が埋め合わせしたと聞いています」
 一方で、本誌は都が國起氏側と売却金額上限20億円で合意に至っていることをつかんだ。
「20億という数字は『上限』というよりも暗黙の了解。世間の常識から考えてそれ以上になるべきでないというラインが20億です」(前出・都幹部) 
 東京都知事本局は20億円という価格について「進行中の案件につき、詳細はお答えできません」と回答した。
 都が尖閣購入・活用に充てるために募っている寄付金は、現在およそ10万人から約14億円に上る。日本全国から集めた寄付金を購入資金とする以上、石原都知事は地権者との交渉経緯、購入金額の妥当性等について、きちんと説明することが求められる。
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 「週刊文春」によると、都は地権者と売却金額上限20億円で合意に至っていたという。政府が当初提示した金額は20億円だから、最終的に20億5千万円で売約となったとはいえ、地権者が国に売却することにしたのは、5千万円の差が決定的な要因ではないだろう。なにか地権者に考えの変化があったのだろうと思われる。都の尖閣購入計画に対し、中国政府が強硬な姿勢を示し、反日デモも広がっている。そうした状況を見た地権者が、摩擦の拡大を避けるために政府に売ることに決めたとも考えられる。だが、地権者が長年政府に尖閣諸島を売らなかったのは、政府に売ると中国にわたる恐れがあるから政府には売らないという意思だと伝えられていたから、腑に落ちないところである。

 一方、政府側については、青山繫晴氏が9月5日関西テレビのニュースアンカーで語ったところによると、次のような事情があるらしい。外務省が「施設を作ることなどすれば、中国との友好関係に問題が生じる」と秘書官などを通さずに直接総理に強行に言った、野田総理が迷っていると、岡田副総理が「外務省の言うことを聞かないと大変なことになる」と総理に進言。野田総理は、民主党代表の再選を目指しており、それを支える岡田副総裁の意向を無視することができなくなった。中国のいうとおりの3原則すなわちう、①上陸させない、②資源・環境調査をしない、③建造物を構築しないという条件を丸呑みにすることを野田総理が了承したとのこと。野田政権による尖閣国有化は、野田氏の首相再選のために、中国に追従するものかと疑われる。私利私欲・党利党略による中国政府との密約がありそうである。
http://mayanri.iza.ne.jp/blog/entry/2842327/

 地権者は、青山氏が伝えるこうした情報を知っているのだろうか。国が購入しても、現在のような政権では、尖閣を中国から守ることはできない。当面の摩擦の拡大を避け得たとしても、中国首脳が尖閣を「核心的利益」と呼び、略取の意思を明らかにしているのに、野田政権は有効な施策を打とうとしていない。国と地権者の協議で、漁船待避施設の整備などを中国の反発に配慮し、当面行わないと確認したという。このような政権の政府に尖閣を売ることは、国を売る恐れがある。地権者の真意を聴きたいところである。
 我々国民としては、政府が購入して国有地となったら、早くまともな政権に替えて、尖閣防衛策を速やかに実施するよう求めるのみである。
 民主党政権による国有化と、新政権による防衛策実施の間の期間に、中国側に尖閣略取の行動をとられないように抑止するには、どうすべきか。自衛隊の領域警備なら法整備だけででき、海上保安庁の警察力強化と違い、時間も予算もかからない。無人島でも自己完結的に行動できる組織は、自衛隊しかない。自衛隊員の常駐は、実効支配を大きく強化させる方策である。
 まずこの方策を打ち、次に、日本の漁民が安全に操業できるようにするための避難港や灯台の整備、気象観測所の建設、携帯電話のアンテナ塔設置、外国漁船の違法操業への警備強化、領海侵犯罪の制定等の施策を積極的に実施すべきと思う。