ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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人権侵害救済法案が閣議決定

2012-09-20 10:48:37 | 人権
 政府は19日、人権侵害救済機関「人権委員会」を法務省の外局として新設する人権救済機関設置法案を閣議決定した。今秋の臨時国会への提出を目指すという。
 この閣議決定は、国会の閉会中に行われた。また法案に慎重な松原仁国家公安委員長は外遊中であり、こうした時期を狙ったものと見られる。
 民主党はマニフェストに人権侵害救済法案の成立を掲げている。この3年間、成立を図る動きが続けられてきた。民主党は、次の衆議院選挙で政権から転落する可能性が高い。今回の閣議決定は、国会閉会中のものゆえ、今秋の臨時国会に提出する時は再度、閣議決定をする必要がある。わざわざ解散総選挙を前に閣議決定をしたのは、この法案の原案を作った解放同盟を始め、民主党の支持団体にアピールするためだろう。
 法務省は昨年12月15日、「人権救済機関設置法案」(仮称)の概要を発表した。今回閣議決定された法案は、法務官官僚の作った概要を踏まえたものだろう。法務省による法案概要は、従来の法案が若干手直しされていた。だが「少しハードルを低くしてでも法案を成立させ、後で段階的に内容を強化していこうという算段だろう。本質的な危険性は、全く変わっていない。とんでもない悪法である」と、私は本年1月7日の日記に書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/e5d973d8f353eeddc19321c1fbd00a5a
 だが、マスメディアや有識者・言論人は、法務官僚の巧妙なソフト戦術に籠絡され、法案の危険性に鈍感になっている。現在、国民は自民党総裁選と民主党代表選、また尖閣諸島を巡る中国との緊張関係に関心を向けている。マスメディアは、それらの報道に力を入れ、人権侵害救済法案については、ほとんど国民に知らせていない。
 法案の最大の問題点は、人権侵害の定義が相変わらず曖昧なことである。「不当な差別、虐待その他の人権を違法に侵害する行為」というが、これではどうとでも拡大解釈ができてしまう。人権侵害が乱用される危険性がある。現在でも、法務局は人権侵害の訴えがあると任意の呼び出しを行っている。あえて新法を作り、権限を拡大する必要はない。人権侵害救済機関は、政府から独立した権限を持つ「三条委員会」として設置される。任意調査しか行わない組織を「三条委員会」にするのは、将来、強制調査権を付与するためだろう。人権委員会が強大な権限を振るようになると、言論統制や密告等によって国民の権利侵害が深刻化する。さらに、市町村に置く人権擁護委員には日本国籍の有無について規定がない。地方参政権が付与されれば外国人でも就任できる。人権救済法案を推進する勢力と、外国人参政権付与実現をめざす勢力は重なり合う。もし地方参政権を得た在日韓国人や在日中国人が人権擁護委員に就任すれば、本国政府の指示のもと、人権侵害を政治的に利用することは目に見えている。
 法案は、与野党の多数派が衆参両院で異なる「ねじれ国会」のため成立する可能性は低い。だが、油断はできない。民主党執行部は閣議決定をもとに、党員に法案賛成を求めるだろうし、公明党は法整備に積極的である。自民党にも法案に賛同する議員がいる。私は、自民党の総裁選挙の候補者は、野田内閣が人権侵害救済法案を閣議決定したことを総裁選で取り上げ、国民に問題点を明らかにし、次の衆院選挙における争点の一つにしてもらいたいと思う。
 人権侵害救済法案という日本破壊の悪法を絶対成立させてはならない。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成24年9月20日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120920/plc12092000320000-n1.htm
人権救済法案閣議決定、選挙に向け「どさくさ紛れ」で実績作り 保守系から強い懸念
2012.9.20 00:31

 政府が19日、「言論統制につながる」との批判が絶えない人権救済機関設置法案(人権救済法案)の閣議決定に踏み切ったのは、衆院解散・総選挙をにらみ、人権団体など民主党の支持基盤にアピールするための「実績作り」が狙いだ。民主党代表選や中国による沖縄県・尖閣諸島での挑発行為のさなかに「どさくさ紛れ」で既成事実を作ったと指摘されても仕方がない。(千葉倫之)

 法案の最大の問題点は、救済対象となる人権侵害の定義が「不当な差別、虐待その他の人権を違法に侵害する行為」とあいまいで、拡大解釈の恐れがあることだ。これまで全国の弁護士会が行った人権救済勧告では、学校の生徒指導や国旗・国歌に関する指導、警察官の職務質問が「人権侵害」とされた事例もある。
 新設される人権委員会が偏った思想・信条に基づく申し立てに公正な判断を下す保証もない。法案は人種や信条などを理由に「不当な差別的取り扱いを助長・誘発」する目的での文書配布なども禁じているが、これでは北朝鮮による拉致問題への抗議活動も「不当な差別」とされかねない。
 ましてや、公正取引委員会などと同じ「三条委員会」として政府からの独立性と強い権限が与えられるため、「人権の擁護に関する施策」を推進する人権委員会が人権侵害の片棒を担ぐ可能性もゼロではない。
「人権委を一度設置すれば、将来、法改正することもできる。『小さく産んで大きく育てる』のが推進派の狙いだ。人権侵害の定義もあいまいで、権力による言論弾圧につながる」
 人権救済機関設置問題に詳しい日本大学の百地章教授(憲法学)はこう述べ、閣議決定を強く批判した。
 国会閉会中を狙った唐突な閣議決定も、与野党に波紋を広げた。
 自民党総裁選候補者は19日、「言論の自由の弾圧につながる」(安倍晋三元首相)、「なぜこのタイミングなのか」(林芳正政調会長代理)などと一斉に批判を始めた。民主党からも「慎重派の松原仁国家公安委員長が外遊中の閣議決定は理解に苦しむ」(長尾敬衆院議員)との反発の声が上がったが、野田佳彦首相の周辺は「慎重な閣僚がいないから閣議決定してもいいではないか」と話した。
 法案には選挙で影響力を持つ人権団体のほか、公明党も法整備に前向きだ。「解散風」が強まる中、今秋の臨時国会で成立する可能性は否定できない。
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関連掲示
・拙稿「人権ーーその起源と目標」
 ただいまMIXIとブログに連載中
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/df06780f00ced3812d367cb5562b2fb6