ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

食と健康と日本の再建2

2007-02-21 09:38:41 | 教育
<日本人の健康と食とのかかわり>

 現代日本の食の問題は、広範囲にわたって生じている。そのうち、数点にしぼって具体的に述べたい。以下は問題の例示であって、事の深刻さを確認するためのものである。

●食の乱れを表す「こ食」

 かつて日本の家庭では、毎日の食生活を通じて、親から子へ、祖父母から孫へ、食の基本を伝えることが自然にできていた。しかし、現代では、家庭で、食の知識・技術が伝承されなくなってきている。核家族化、女性の社会進出、共稼ぎ、家族それぞれの生活行動の多様化等により、食を介した家族のかかわりが減り、家族が食事をともにして、団欒の時を過ごす機会が少なくなっている。家族のあり方の変化、家族関係の変質が、食事の習慣や行動の乱れの大きな原因となっている。

 今日の日本人の食の乱れを表わす言葉に、「こ食」がある。「こ」のところに、いろいろな漢字を入れると、食の乱れ方がよくわかる。

【孤食】 朝食を一人で食べる子どもが増加している。子どもが一人ぼっちで夕食を食べることもある。しかもコンビニの弁当だったりする。
【小食】 食べる量が少ない。痩身願望の強い若い女性が、細くなりたいと願って、食べる量を極端に抑えて、健康を害している。
【個食】 家族がそれぞれ自分の好きなものを食べる。同じ献立をともに食べるのでなく、思い思いのものを食べる。同じ料理を一緒に味わう機会が減っている。
【粉食】 粉を使った主食を好んで食べる。御飯に味噌汁という、日本人の伝統的な食事ではなく、パンやスパゲッティ、パスタ等を食べることが増えている。
【固食】 自分の好きな決まった食べ物、固定したものしか食べない。家族で食事をともにすることが少ないので、子供は注意されないから、偏食になる。

●生活習慣病の増加

 今日の日本では、大病院が建ち、テレビに薬のCMがあふれ、製薬業界は潤っている。それなのに、いっこうに病気は減らない。世界的な長寿国である反面、病人が多く、「1億総病人時代」ともいわれる。
 病気の原因には、病原菌や有害物質、遺伝的な要素などが挙げられる。それとともに、食事、運動、休養、嗜好などの生活習慣も、病気の原因となる。かつて成人病と呼ばれていた病気は、今日、生活習慣病と呼ばれている。それは、生活習慣が原因となっている病気が多く、大人に限らず、子供にまで広がっているからである。糖尿病、高血圧、ガン等の低年齢化が進んでいる。

 生活習慣病には、糖尿病、高血圧、高脂血症、歯周病などが上げられる。我が国では現在、690万人が糖尿病と推計されている。予備軍を含めると1,400万人ともいわれる。10人に1人以上だ。また、高血圧、高脂血症の人々の数は3,000~4,000万人と推定される。こちらは、3~4人に1人だ。日本人の3大死因であるガン、脳卒中、心臓病の発症や進行にも深く関わっているのが、生活習慣病である。生活習慣病で死亡する割合は、全死亡率の約60%を占める。病気になるような生活をしているから、病気になるのである。
 病気を防ぐには、早期発見や早期治療だけでは、足りない。むしろ、生活習慣の改善を中心にした健康増進・発病予防が重要である。病気にならないような生活を心がけることである。
生活習慣病の原因には、栄養、運動、休養、たばこ、アルコールの5つがあげられる。本稿は、食育を主題としているので、食生活の問題点について触れたい。

 食生活のあり方によっては、健康で長生きができる。逆に、食生活のあり方が病気を生み出しもする。食が病気の原因になっている病気を 「食源病」ともいう。
 今日の日本人は、食の豊かさが、食の乱れを生み出し、食の乱れによる生活習慣病が深刻になっている。その一例として、大腸ガンの増加がある。日本人は欧米人より腸管が2メートルほど長い。古代から、繊維質が多い穀類や野菜といった植物性食品を主に食べてきたから、それに適した体のしくみになっている。そういう消化管の構造を持ちながら、肉食をすると、腸内菌の働きで発ガン性のものができ、それが長く腸に接触する。その結果、便秘やガンになりやすくなり、特に大腸ガンの主要原因になっていると見られている。

●生活習慣病の低年齢化

 生活習慣病の問題で重要なのは、生活習慣の乱れが子供に広がり、子供の心身の健康が損なわれていることである。近年子供に多い病気・症状を年齢別に挙げてみると以下のようになる。

【授乳期】 食物アレルギーや便秘、下痢
【幼児期】 偏食、食欲不振、肥満、瘠せ、貧血
【学童期】 肥満、瘠せ、虫歯
【思春期】 肥満・生活習慣病、貧血、摂食障害、骨粗しょう症、深刻な食物アレルギー

 こうした症状の多くが、生活習慣に原因を持つ。生活習慣の乱れによる症状を持った子供は、そのまま成長を続けると、心身の健全な発達ができなくなる。成人しても、健康な心身を持ち得ない。
 生活習慣病の低年齢化の原因には、生活のリズムの乱れ、不自然な生活環境、環境の汚染、親共々の夜更かし、野外での遊びをしないことによる運動不足、ゲームのやりすぎ等、いろいろな原因があるだろうが、食という点も重要である。日本の子供たちは、食べ物に恵まれすぎて、逆に病気になっているとも言える。

 私が懸念していることの一つは、母乳で子どもを育てられる女性が減っていることである。母乳で育児のできる人が、約30%になった。10人のうち3人しか、自然な仕方で子どもを育てられない。これは粉ミルクのない時代だったら、10人のうち7人の子どもは、お乳を与えられずに死んでいくことを意味する。
 ここには、食の乱れが、生命力の弱さを生じている点があるだろう。母親が不健康だったり、生命力が低下したりすると、心身ともに弱い子供が生まれる可能性が高くなる。その子供の世代が親になって同じ傾向が続くと、次の世代はさらに心身が劣化する。そういう悪循環が見えてきている。これは、それぞれの家の子ども、子孫が劣化するだけではない。国民・民族の全体が劣化してゆくことを意味する。
 国民の健康を重視し、健康を基盤においた国づくりをしないと、経済的にはいかに発展・繁栄しようとも、わが国は国民の心身から衰退していくことになる。
 
 次回に続く。

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