ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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ユダヤ70~ロシア皇帝と巨大国際金融資本家の戦い

2017-07-02 08:49:59 | ユダヤ的価値観
ロシア皇帝と巨大国際金融資本家の戦い

 ロシアに話を戻すと、巨大国際金融資本家がロシアに関心を向けたのは、日露戦争が初めてだったのではない。そのことを知っておかないと、ロシア革命に巨大国際金融資本家が深く関与したことの意味がわからなくなる。
 話は、ナポレオン戦争の時代にさかのぼる。ロシア遠征に失敗したナポレオンに、対仏連合軍が挑み、パリが陥落し、ナポレオンは退位し、エルバ島に流された。戦勝各国は戦後秩序作りのため、1814年にウィーン会議を開催した。この時、ロシア皇帝アレクサンドル1世は、キリスト教国の団結による「神聖同盟」を提唱した。これは、ユダヤ教徒を敵視するものだったので、ロスチャイルド家らのユダヤ人国際金融資本家は嫌悪感を抱いた。
 西欧諸国に次々に中央銀行を設立したロスチャイルド家は、ロシアにも中央銀行を設立することをアレクサンドル1世に提案をした。だが、皇帝はこの提案を受け入れなかった。その後、皇帝は1825年に不審死した。
 アレクサンドル1世の後はニコライ1世、その後はニコライの子のアレクサンドル2世が継いだ。アレクサンドル2世の治世の時に、アメリカで南北戦争が起こった。南北戦争で、ロスチャイルド家はリンカーンに資金提供を申し出たが、リンカーンに断られた。リンカーンは法定通貨を発行し、北軍を勝利に導いた。この過程で、アレクサンドル2世は、イギリスとフランスが南軍を支援するならば、北軍側について参戦すると警告を発した。これは、英仏へのけん制、北軍への強力な援護となった。ロスチャイルド家らの巨大金融資本家側としては、アレクサンドル2世にアメリカの分断支配を邪魔された格好である。リンカーンは民間の中央銀行設立には応じなかった。アレクサンドル2世もリンカーンと同様、民間の中央銀行の設立を拒否し、自ら国立の中央銀行を設立した。これによって、ロシアはユダヤ人金融資本家の金融支配に組み込まれない独自の道を進んだ。ロスチャイルド家らは、こうしたロシアの政治体制をひっくり返し、ロシアに進出することを図っていたのである。

●『シオン賢者の議定書』とイルミナティ伝説
 
 19世紀末のロシアでは、激しくユダヤ人への迫害が行われていた。そのユダヤ人迫害に大きな影響を与えた文書に、『シオン賢者の議定書』がある。1890年代の終わりから1900年代の初めにかけて発行されたもので、皇帝ニコライ2世の秘密警察が作成した偽書である。1897年にスイスのバーゼルで開かれた第1回シオニスト会議の席上で発表された「シオン二十四人の長老」による決議文であるという体裁をとり、ユダヤ人が世界を支配しようとする陰謀が書かれているとした。種本とされたのは、「ナポレオン3世が世界制覇の野望を抱いている」と記された1864年のモーリス・ジョリによるパンフレットだった。民主主義を利用することで世界支配の目的は近いうちに達成されると語るナポレオン3世が、シオンの議定書では「ユダヤ人指導者たちの秘密会議」に置き換えられた。秘密警察は、この文書をさまざまな部署に送り込んで、ユダヤ人への迫害を行った。
 ロシア革命後、ドイツへ亡命したロシアの貴族たちは、報復のため、議定書を使って反ボルシェヴィキ・反ユダヤ主義の宣伝活動を行った。共産主義の指導者に多数のユダヤ人がいた事実が、ユダヤ人と共産主義を同一視することに使われた。議定書は「秘密権力の世界征服計画書」という触れ込みで広まり、ナチスにも影響を与えた。
 『シオン賢者の議定書』を、イルミナティと結び付ける説がある。イルミナティとは、1776年、ドイツのインゴルシュタット大学の教会法の教授アダム・ヴァイスハウプトによって設立された秘密結社である。啓明社・光明会等と訳される。
 1784年、バイエルン政府は、過激な思想を掲げるイルミナティを禁止した。海外に逃れたヴァイスハウプトは、その後、会員をフリーメイソンの支部に潜入させ、メイソンの内部に秘密組織を作ったともいわれるが、その消息は定かでない。イルミナティがアメリカ独立戦争、フランス革命、ロシア革命等に暗躍したという説もあるが、これらをイルミナティの陰謀として描くのは、幻想文学の類だと私は思う。
 ところが、20世紀に入ってイルミナティは、あらゆる陰謀団体の源流と説かれるようになった。『シオン賢者の議定書』とイルミナティが結び付けられ、ユダヤ民族の陰謀という観点から、イルミナティとフリーメイソンとユダヤを一体のものとする陰謀論が流行している。陰謀論は諸説紛々であり、そのため、富と力を実態とした世界の権力構造がカムフラージュされてしまっていると思う。
 私が思うに、キリスト教思想には、キリスト教と異なるものを悪魔的なものとみなす傾向がある。イルミナティ伝説も、イルミナティは神に敵対する悪魔、堕天使ルシファーを信奉する団体とされ、邪悪なイメージが投影されている。そこに見られるのは、神と悪魔の二元論、対立・闘争の論理である。その原型は、ユダヤ教の世界観である。日本人でイルミナティ陰謀論を説く人については、私はユダヤ=キリスト教の磁場によって、思考回路が歪められていると感じる。

 次回に続く。

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