4月6日文部科学省は、来春から中学校で使われる教科書の検定結果を公表した。
社会科の全教科書で、竹島と尖閣諸島が「日本の領土」と明記された。近現代史の事項で通説的見解のないものはそのことを明記したり、政府見解を記述するようになった。天皇・自衛隊に関する記述が増え、神話・伝統文化に関する内容も多く盛られたと伝えられる。安倍政権のもと教科書の正常化が、一歩前進したと言えよう。
各種報道記事を編集して、今回の教科書検定に関する情報を整理しておきたい。
●竹島・尖閣諸島は「日本の領土」と明記
新しい教科書では、社会科の全教科書で竹島と尖閣諸島が記述された。現行では7点中1点しか記述がなかった歴史でも8点全てが扱い、地理、歴史、公民と中学3年間を通して生徒たちが自国の領土を学ぶ態勢が整った。教科書作成の指針となる学習指導要領の解説書が昨年1月に改定され、地理、歴史、公民の全てで指導するよう明記されたためとみられる。
竹島については、地理と公民の10点中9点が日本の政府見解を踏まえ、韓国が不法占拠していると明記した。尖閣諸島についても「日本固有の領土」と強調するなど、控えめだった領土記述が一変した。
東京書籍は地理、歴史、公民の全てで見開き2ページの領土に関する特集を掲載。竹島や尖閣諸島などについて、日本の領土である根拠と他国の主張の不当性を詳述した。公民では17世紀初めから鳥取藩の漁民が竹島で行った漁業の記録の存在や、韓国の不法占拠を受け、日本が国際司法裁判所に委ね、平和的に解決するという提案を韓国が拒否していることを紹介した。
帝国書院は、公民の教科書において見開き2ページで大きく取り上げた。尖閣諸島については日本の領海に頻繁に侵入する中国船の写真も掲載した。
育鵬社は、現行の公民教科書でも竹島や尖閣諸島について詳しく記述しているが、今回さらに見開き2ページで「領土を取り戻す、守るということ」と題した特集を掲載した。尖閣諸島は日本人実業家が開拓し、最盛期には242人が居住していたことなどを紹介している
自由社の歴史も「日本は『尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」との立場をとっている」と明記した。
今年度から使用される小学校教科書でも社会の全社が竹島と尖閣諸島について記述しており、義務教育段階で全ての児童・生徒が学ぶことになった。
●通説的見解のない歴史的事象にはその旨を明記、政府見解を記述
今回の検定では、社会科の近現代史で通説的見解がない事項の記述にその旨を明示することや、政府見解を尊重する記述を求めた新検定基準が初めて適用された。
慰安婦については16年度検定以降、記述がなかったが、今回「慰安婦」を取り上げた教科書があった。これに対しては、「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような資料は発見されていない」との政府見解を記述した。
関東大震災の朝鮮人虐殺数を「数千人」とした教科書に対しては、初めて検定意見が付けられ、「通説はない」などと書き加えて合格した。
自由社の歴史は、南京事件について書かなかった。その一方、「日中戦争」と言う単元で通州事件について、次のように書いた。「北京東方の通州には親日政権がつくられていたが、7月29日、日本の駐屯軍不在の間に、その政権の中国人部隊は、日本人居住区を襲い、日本人居留民385人のうち子供や女性を含む223人が惨殺された(通州事件)」
戦後補償問題では、日本への補償要求が続いていることを取り上げた箇所に対し、検定では戦後処理は解決済みであるとの日本の立場を踏まえるよう求めた。
昭和57年の高校教科書検定で、中国華北への日本の「侵略」を「進出」に書き換えさせたとのマスコミ各社の誤報を機に中韓が反発し、近現代史の記述で近隣アジア諸国への配慮を求めた近隣諸国条項が検定基準に導入された。これ以降、自虐史観記述が30年にわたり横行してきたが、今回の検定で自虐史観の傾向がやや改善された。
●天皇の被災地慰問等を記述
天皇について、これまでは憲法が定める国事行為を行う点ばかりを強調したり、敬称を付けずに記述したりするなど皇室軽視の教科書が少なくなかった。今回は東日本大震災の被災地や外国訪問などの公的活動を紹介するなど記述を増やす教科書が目立った。
東京書籍の公民は、天皇の国事行為について説明した後、「天皇は、国事行為以外にも、国際親善のための外国訪問や、式典への参加、被災地の訪問など、法的、政治的な権限の行使に当たらない範囲で、公的な活動を行っています」と付け加え、東日本大震災の被災地を訪問される天皇、皇后両陛下の写真を掲載した。
日本文教出版の公民は、「儀式への臨席や外国への親善訪問などの社交も行います」と記述し、東日本大震災の被災者をいたわられる両陛下の写真を掲載した。
教育出版は本文に加え、コラムでも「皇室と人々との交流」と題し、天皇、皇后両陛下が「こどもの日」の児童施設ご訪問と敬老の日の高齢者施設ご訪問を平成4年以降、毎年続けられてきたことを紹介した。
●自衛隊を評価する記述が目立つ
自衛隊については、これまで憲法違反とする意見を強調するなど否定的に伝える教科書が多かった。今回の教科書は、東日本大震災などの災害出動や国際貢献で高い評価を受けている事実を紹介する記述が目立った。
教育出版の公民は、現行版は「自衛隊と文民統制」とした項目を「自衛隊の役割と存在をめぐって」に変え、「国内外の災害時の支援活動においても、大きな活躍をしています」と記述した。さらに「今後自衛隊が力を入れていくと良い面」として、1位「災害派遣」、2位「国の安全の確保」などとの結果が出た平成23年の内閣府の世論調査を掲載した。別の項目では、自衛隊の海外活動を地図付きで紹介した。「国内外の災害派遣や平和維持活動において、その活動の成果が評価されています」とし、「自国の領土をしっかりと守りながら、世界の平和の構築や国際貢献をさらに進めていくためには、今後の日本の平和主義や自衛隊のあり方を、どのように考えていったらよいのでしょうか」と問いかけた。
帝国書院の公民も、自衛隊について、「東日本大震災の復旧・復興支援などでも大きな役割を果たしました」と記述した。
●神話・伝統文化の紹介も増加
新しい中学校教科書には、神話や伝統文化に関する内容も数多く盛り込まれた。
神話を通じた学習は中学社会科の学習指導要領に明記されているため、歴史教科書の8点全てに記述され、「古事記」や「日本書紀」などについて解説が加えられた。このほか、三省堂と東京書籍の国語が古事記を取り上げ、「因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)」の伝承や倭建命(やまとたけるのみこと)の「望郷の歌」を掲載した。
平成25年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「和食」については、国語や社会、技術・家庭など5教科14点に掲載された。
開隆堂出版の家庭科では正月のおせち料理を皮切りに年間の行事食を紹介し、京都の和食料理人が「『和食』というものを中心に家族や地域のつながりが成り立っている」と解説した。
教育出版の公民は、世界に広がる「クールジャパン」の一つとして和食を取り上げ、「外国の人たちには『かっこいい』ものとして受け入れられ、流行しています」と説明を加えた。
●適正な採択を
夏に向けて各地の教育委員会で教科書の採択が行われる。各地の教育委員会で、日教組等の組織的な圧力に屈することなく、適正な判断がされることを望む。
なお、今年度と来年度に検定が行われる高校教科書は、慰安婦の強制連行を強くにじませる記述など、中学教科書より自虐史観傾向がより強い。竹島と尖閣諸島についても、日本固有の領土とはっきり書かない教科書がある。義務教育の教科書の改善が進みつつあるなか、今後の課題は、本丸ともいえる高校教科書の是正にある。
関連掲示
・拙稿「教科書を改善し、誇りある歴史を伝えようーー戦後教科書の歴史と教科書改善運動の歩み」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion06c.htm
・拙稿「日本人の誇りを育てる教育」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion02d.htm
社会科の全教科書で、竹島と尖閣諸島が「日本の領土」と明記された。近現代史の事項で通説的見解のないものはそのことを明記したり、政府見解を記述するようになった。天皇・自衛隊に関する記述が増え、神話・伝統文化に関する内容も多く盛られたと伝えられる。安倍政権のもと教科書の正常化が、一歩前進したと言えよう。
各種報道記事を編集して、今回の教科書検定に関する情報を整理しておきたい。
●竹島・尖閣諸島は「日本の領土」と明記
新しい教科書では、社会科の全教科書で竹島と尖閣諸島が記述された。現行では7点中1点しか記述がなかった歴史でも8点全てが扱い、地理、歴史、公民と中学3年間を通して生徒たちが自国の領土を学ぶ態勢が整った。教科書作成の指針となる学習指導要領の解説書が昨年1月に改定され、地理、歴史、公民の全てで指導するよう明記されたためとみられる。
竹島については、地理と公民の10点中9点が日本の政府見解を踏まえ、韓国が不法占拠していると明記した。尖閣諸島についても「日本固有の領土」と強調するなど、控えめだった領土記述が一変した。
東京書籍は地理、歴史、公民の全てで見開き2ページの領土に関する特集を掲載。竹島や尖閣諸島などについて、日本の領土である根拠と他国の主張の不当性を詳述した。公民では17世紀初めから鳥取藩の漁民が竹島で行った漁業の記録の存在や、韓国の不法占拠を受け、日本が国際司法裁判所に委ね、平和的に解決するという提案を韓国が拒否していることを紹介した。
帝国書院は、公民の教科書において見開き2ページで大きく取り上げた。尖閣諸島については日本の領海に頻繁に侵入する中国船の写真も掲載した。
育鵬社は、現行の公民教科書でも竹島や尖閣諸島について詳しく記述しているが、今回さらに見開き2ページで「領土を取り戻す、守るということ」と題した特集を掲載した。尖閣諸島は日本人実業家が開拓し、最盛期には242人が居住していたことなどを紹介している
自由社の歴史も「日本は『尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」との立場をとっている」と明記した。
今年度から使用される小学校教科書でも社会の全社が竹島と尖閣諸島について記述しており、義務教育段階で全ての児童・生徒が学ぶことになった。
●通説的見解のない歴史的事象にはその旨を明記、政府見解を記述
今回の検定では、社会科の近現代史で通説的見解がない事項の記述にその旨を明示することや、政府見解を尊重する記述を求めた新検定基準が初めて適用された。
慰安婦については16年度検定以降、記述がなかったが、今回「慰安婦」を取り上げた教科書があった。これに対しては、「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような資料は発見されていない」との政府見解を記述した。
関東大震災の朝鮮人虐殺数を「数千人」とした教科書に対しては、初めて検定意見が付けられ、「通説はない」などと書き加えて合格した。
自由社の歴史は、南京事件について書かなかった。その一方、「日中戦争」と言う単元で通州事件について、次のように書いた。「北京東方の通州には親日政権がつくられていたが、7月29日、日本の駐屯軍不在の間に、その政権の中国人部隊は、日本人居住区を襲い、日本人居留民385人のうち子供や女性を含む223人が惨殺された(通州事件)」
戦後補償問題では、日本への補償要求が続いていることを取り上げた箇所に対し、検定では戦後処理は解決済みであるとの日本の立場を踏まえるよう求めた。
昭和57年の高校教科書検定で、中国華北への日本の「侵略」を「進出」に書き換えさせたとのマスコミ各社の誤報を機に中韓が反発し、近現代史の記述で近隣アジア諸国への配慮を求めた近隣諸国条項が検定基準に導入された。これ以降、自虐史観記述が30年にわたり横行してきたが、今回の検定で自虐史観の傾向がやや改善された。
●天皇の被災地慰問等を記述
天皇について、これまでは憲法が定める国事行為を行う点ばかりを強調したり、敬称を付けずに記述したりするなど皇室軽視の教科書が少なくなかった。今回は東日本大震災の被災地や外国訪問などの公的活動を紹介するなど記述を増やす教科書が目立った。
東京書籍の公民は、天皇の国事行為について説明した後、「天皇は、国事行為以外にも、国際親善のための外国訪問や、式典への参加、被災地の訪問など、法的、政治的な権限の行使に当たらない範囲で、公的な活動を行っています」と付け加え、東日本大震災の被災地を訪問される天皇、皇后両陛下の写真を掲載した。
日本文教出版の公民は、「儀式への臨席や外国への親善訪問などの社交も行います」と記述し、東日本大震災の被災者をいたわられる両陛下の写真を掲載した。
教育出版は本文に加え、コラムでも「皇室と人々との交流」と題し、天皇、皇后両陛下が「こどもの日」の児童施設ご訪問と敬老の日の高齢者施設ご訪問を平成4年以降、毎年続けられてきたことを紹介した。
●自衛隊を評価する記述が目立つ
自衛隊については、これまで憲法違反とする意見を強調するなど否定的に伝える教科書が多かった。今回の教科書は、東日本大震災などの災害出動や国際貢献で高い評価を受けている事実を紹介する記述が目立った。
教育出版の公民は、現行版は「自衛隊と文民統制」とした項目を「自衛隊の役割と存在をめぐって」に変え、「国内外の災害時の支援活動においても、大きな活躍をしています」と記述した。さらに「今後自衛隊が力を入れていくと良い面」として、1位「災害派遣」、2位「国の安全の確保」などとの結果が出た平成23年の内閣府の世論調査を掲載した。別の項目では、自衛隊の海外活動を地図付きで紹介した。「国内外の災害派遣や平和維持活動において、その活動の成果が評価されています」とし、「自国の領土をしっかりと守りながら、世界の平和の構築や国際貢献をさらに進めていくためには、今後の日本の平和主義や自衛隊のあり方を、どのように考えていったらよいのでしょうか」と問いかけた。
帝国書院の公民も、自衛隊について、「東日本大震災の復旧・復興支援などでも大きな役割を果たしました」と記述した。
●神話・伝統文化の紹介も増加
新しい中学校教科書には、神話や伝統文化に関する内容も数多く盛り込まれた。
神話を通じた学習は中学社会科の学習指導要領に明記されているため、歴史教科書の8点全てに記述され、「古事記」や「日本書紀」などについて解説が加えられた。このほか、三省堂と東京書籍の国語が古事記を取り上げ、「因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)」の伝承や倭建命(やまとたけるのみこと)の「望郷の歌」を掲載した。
平成25年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「和食」については、国語や社会、技術・家庭など5教科14点に掲載された。
開隆堂出版の家庭科では正月のおせち料理を皮切りに年間の行事食を紹介し、京都の和食料理人が「『和食』というものを中心に家族や地域のつながりが成り立っている」と解説した。
教育出版の公民は、世界に広がる「クールジャパン」の一つとして和食を取り上げ、「外国の人たちには『かっこいい』ものとして受け入れられ、流行しています」と説明を加えた。
●適正な採択を
夏に向けて各地の教育委員会で教科書の採択が行われる。各地の教育委員会で、日教組等の組織的な圧力に屈することなく、適正な判断がされることを望む。
なお、今年度と来年度に検定が行われる高校教科書は、慰安婦の強制連行を強くにじませる記述など、中学教科書より自虐史観傾向がより強い。竹島と尖閣諸島についても、日本固有の領土とはっきり書かない教科書がある。義務教育の教科書の改善が進みつつあるなか、今後の課題は、本丸ともいえる高校教科書の是正にある。
関連掲示
・拙稿「教科書を改善し、誇りある歴史を伝えようーー戦後教科書の歴史と教科書改善運動の歩み」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion06c.htm
・拙稿「日本人の誇りを育てる教育」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion02d.htm
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